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2010年11月02日

「農」再生の実現基盤ってなに?~1章.アジア型農業の可能性

前回の【「農」再生の実現基盤ってなに?~プロローグ~】のつづきです。
名古屋で開催されていたCOP10(国連生物多様性条約第10回締約国会議)が、微生物など遺伝資源の利用と利益配分を定めた「名古屋議定書」と、2010年以降の生態系保全の国際目標「愛知ターゲット」を採択して10月30日未明に閉幕しました。
今回の議定書は、「先進国が、一方的に遺伝資源をパテントで押さえて権利を主張することによって、発展途上国の伝統的な農業生産の可能性を摘んでしまうという問題」を是正することが出来るのでしょうか? 
◆世界の農業~3つの効率性~
盛田清秀氏(日本大学生物資源科学教授)は、世界の農業を俯瞰して3つの型に類型化しています。
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(1)新大陸型

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新大陸型は、ヨーロッパからの殖民により、北米やオセアニアの先住民を駆逐する形で土地を占有し、母国水準をはるかに超える面積規模の農業が形成されました。これが現代における大規模農業成立の原点です。
(2)ヨーロッパ型
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画像は、こちらから
旧大陸型の農業は、古代から生産力の低い、そして農地面積に見合った経営規模の農業生産でした。ヨーロッパ諸国は、その規模的な拡大に行き詰まり新大陸に進出し、大規模で粗放的・土地収奪的な農業を展開します。

(3)アジア型
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という特色があることを述べています。
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画像は、こちらから。

さらに、古沢広祐氏(国学院大学経済学部教授)は、その時代の世界農業の効率性に着目して次のように展開しています。
〔農業の3つの効率性〕
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>新大陸型農業とは、アメリカやブラジル、オーストラリアなどで見られるように、一人が何百ヘクタールという広大な農地を粗放的に経営する農業形態である。他方、アジア型農業とは、狭い土地を丹念に耕しながら(概ね1ヘクタール以下)古くから多数の人口を養い文化的蓄積を重ねてきた農業形態である。その意味では、欧州型は中間に位置している。
> 新大陸型は、植民地的色彩と無限拡大が可能であるかのようなフロンティア的性格をそなえ、モノカルチャー(単一栽培)型で輸出商品生産という特徴をもつ。アジア型は、どちらかといえば自給的な側面を保持しており、多数の品目を複合栽培(土地の多面的利用)する性格をもっている。〔食・農・環境からみるアジアの地域性と統合可能性-日本とアジアの食料・農業・農村政策のあり方-古沢広祐
リンク 〕
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新大陸農業国型の典型であり、農産物輸出大国である米国では、地下水汲み上げによる農業の限界(リンク)が取り沙汰されて久しいです。それは、あたかも、力任せの環境不適応型農業の限界を示すようにも見て取れます。
一方で、粗放的大規模農業の雄たるアメリカですが、農作物の流通場面においては、地元で少量多品種の有機農産物生産を営む小規模生産者を組織化して、小売業を営む食品スーパーや地元の市(いち)が有識者の間で静かなブームでもあります。こちらは、来るべき時代の先駆けのような現象です。
日本では、農業が近代化するまでは、概ねアジア型の農業を営んでいました。農業人口比率が7~8割だった頃までは、そこに生活の基盤を置いていた、ということです。平素の食料は自給し、租税のための生産と同時に行うことに合理性があったのですから、気候・風土や共同体の自立に合致した「多数の品目の複合栽培(土地の多面的利用)」は理に叶っていたわけです。

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◆日本の農業の変遷
日本の戦後は、飢餓で始まりました。それは、恒常的なコメ不足を朝鮮米、台湾米で補っていたのにそれができ無くなったこと、そして戦争で農村の働き手を失っていたために生産基盤が荒廃したことで一気に噴出した問題でした。
それがGHQ主導の下に行われた農地解放により活気を取り戻した農村の活力と、朝鮮戦争景気によって回復した日本の工業力で化学肥料の供給に国が力を入れたこと、国が増産政策をとったこと、さらにはアメリカ軍が農薬を持ち込んだことによって、農業生産力は一気に回復しました。
1961年に成立した農業基本法では、1)経営規模の拡大、2)効率的な食料の供給体制を作るという意味での選択的拡大、3)生産性向上、を掲げました。それらは、機械化・化学化・装置化・大規模化・専門化・単作化(連作化)に代表される【農業近代化政策】でした。しかし、それらの政策の殆どは実現できていないし、持続性の問題をはらんでいます。その評価は、どうなのでしょうか?
日本列島改造論が謳われた頃は、いつか高く売れるという想いが農地の流動化を阻害していました。最近は、「身内に継ぐものはいないが、借り手が本気で農業を継いでくれるかどうかがわからないので、農地を貸すことに戸惑いがある。」という風に、高齢化世代の想いは変化しつつあります。信頼に足ると見極められる相手が現れるまでは、細々とでも農を営んで「農地」という資源を守って行きたい、という想いのようです。
食の安全保障を「自給する力」と捉えるなら、零細農家が多いことは、その潜在的な「力」を持った存在と云えそうです。農協に農作物を供給する農家も、農地の片隅で自家用の農作物を栽培している話はよく聞きます。自家用ですから、当然、少量・多品種栽培ということになります。
このように見てくると、1961年の農業基本法が実現できていないことが、「未達成の問題」というより、一定の大規模化・効率化を実現したものの、日本的な地勢・風土・精神性などが原因して『農』のアジア型の潜在力を温存してきたのではないか? と思えてきます。
これ以降は、最先端の意識潮流を探りながら、「アジア型の農業」が来るべき共認時代の農業に相応しいものか? また、その可能性の実現基盤とはなにか? を探っていきたいと思います。
   by びん

投稿者 staff : 2010年11月02日 List   

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コメント

こんなに安易なら全てが既に解決していますね。

投稿者 ggi : 2013年4月1日 21:49

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