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2021年09月07日

[農の歴史]第1回 人類はいつ、なぜ農耕を始めたのか

人類が農耕を始めたのは、1万5000年程前(人類史でいう、「後期旧石器時代」)から始まる「ヤンガー・ドリアス寒冷期」がきっかけとされています。
発足地は「肥沃な三日月地帯」のレバント地方。現在で言うと、ペルシア湾からチグリス川・ユーフラテス川を遡り、シリアを経てパレスチナ、エジプトへ至る半円形の地域、その西半分です。The_Levant_3
この地域の代表的な初期農耕遺跡から、多くの栽培種(ムギ類、マメ類、果物、、)が出土されていることが証拠とされています。

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ただ、これが人類史上初の農耕かは実ははっきりしていません。ヤンガー・ドリアス以前にも寒冷期は何度かあり、もっと昔から人類は農耕の術を知っていたという説もあります。
ここでは一旦「“寒冷期”に農耕をはじめた」という事実をもって、原始人類に同化していこうと思います。

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なぜ、人類は農耕をはじめたのか?

人類は長い間、狩猟と採集で食を確保してきました。それは、狩猟採集の方が人類にとっても周辺環境にとっても良かったからです。
「先進国の人間に比べ、狩猟採集民は貧しい」という見方が一部では普通になっていますが、それは大きな誤りです。ある調査によると、農業を行わない狩猟採集民が食物生産に費やす時間は、3~4時間程度だそうです。彼らは残りの時間を余暇とし、遊んだりして暮らしています。そんな恵まれた環境に暮らす人々にとって、1から土を耕し毎日農地を管理しなければならない農業は敢えて選択肢に入らないのでしょう。1日中あくせく働き、心身ともにゆとりがなくなりつつある私たちと、どちらが「豊か」なのかは、一考する必要がありそうです。

 

しかし、寒冷期と人口圧の増加は、周囲の環境を一変させ、深刻な食糧不足に人類を追い込んでいきました。そこでやむを得ず始めたのが「農耕」というわけです。
土地を読み、天候を読み、時間を管理する「農耕」は凄まじい追求力と観念体系を人類にもたらしたでしょう。

しかし人類にとって農耕はいいことばかりではなかったようです。

★実は、上記の「肥沃な三日月地帯」は人類史初の「略奪戦争」が始まった地と重なっています。

農耕は、「備蓄」や「保存」を可能にしました。そして年代が進むと、人類はついに牧畜を行うようになります。そこで初めて生まれた意識が「私有意識」だったのではないでしょうか。「私有意識」はやがて集団同士に亀裂を生んでいきます。もし農耕が戦争を引き起こすと知っていたら…「労働」制度が生まれ、余暇が失われていくと知っていたら…
農耕は人類にとって進んでやりたいことではなかったのかもしれません。
(私たち日本人の祖先である縄文人は長らく農耕を拒んできた、という説もあります)。

 

今日は、「人類は食料不足から農耕を始めた」説が有力ではないかと述べてきましたが、大地で狩猟はできなくても海はどうだったのか?もっと暖かい地域へ移動できなかったのか?など、更なる追求課題も出てきました。次回からは、漁業の始まりや居住様式にも迫りつつ、改めて「農耕」の謎や可能性を探索していこうと思います。お楽しみに!

投稿者 ideta : 2021年09月07日 List   

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