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2021年05月06日
農のあるまちづくり12~都市農家とつながろうⅠ
近くにいながら、あまり知られていない。
「都市農家」の生態について。
以下、転載(「東京農業クリエイターズ」2018著:小野淳)
■都市農家とつながろう
いま都市農業への関心は、確実に高まっています。法的な規制緩和も急速に進んできました。それを追い風に、都市での農業参入を検討する企業や団体、それだけでなく個人が立ち上がる農関連の事業も、これからもっと増えていくと思います。
農業参入にはいろいろな形があります。自分で農作物を栽培して販売することだけが農業ではないですし、先に私の経験を述べたように、素人が一から栽培に取り組むことはハードルが高く、事業を成り立たせるのは並大抵のことではありません。
むしろ都市農業の場合は別の方法を採ったほうが、ハードルが下がり、おもしろさも広がるのです。
第1章でみたように、今後は農家以外の個人や組織も農地を借りやすくなります。でも、都市農家と協力して一緒に事業をおこなえば、自身が農地を借りる必要はなく、素人栽培のリスクもなくなります。さらに、もともとある「都市農家」という資産を活用することで、価値を創造しやすいのです。
でも、都市農家とどこでつながれるのでしょう?どこに相談し、どのようにスタートすればいいのでしょう?都市の農業、農地を活かした事業は、まだ前例があまりないだけに、あちこちで壁にぶつかることも現実です。私の会社(㈱農天気)でも最近、都市農家とのコラボレーションで農関連の事業をおこないたい企業などから、コンサルティングの依頼を複数件、受けるようになってきました。
そこで、私がこれまで積み重ねてきたノウハウを紹介することで、多少なりともヒントを伝えられればと思います。まずは、都市農家が具体的にどんな人たちなのかを知ってもらうため、何人かの知り合いを紹介しましょう。いずれも、農業の垣根を越えて他業種や市民たちと連携することで、都市農業を盛り上げていこうという意欲にあふれた若手の後継者たちです。
■都市農業版の集落営農を目指して
「今後は、われわれも農地を借りて、うまく運用していく時代になります」
強い目でそう語るのは、30代半ばの若手都市農家、馬場裕真さん。馬場さんはJA東京青壮年組織協議会の委員長を務めています。
JA東京青壮年組織協議会とは、東京各地のJA(農業協同組合)の若手組織13団体からなる協議会です。会員は約2000人。馬場さんはその委員長として、全国組織や上部組織であるJA東京中央会との関係を築きながら、都市農業のこれからについて若手後継者が考える機会をつくってきました。
全国の農業者と語る機会も多い馬場さんは、
「先日、北海道の農家から『東京では、住宅地と隣接した5反(5000㎡)くらいの面積で農業をやっていると聞くけど、いったいどういう農業経営なの?』と興味津々に訊ねられました。特殊な状況にある都市農業への関心が、地方でも高まっていると感じます」と言います。
これまで市街化区域の農地は宅地化されることが前提でした。地価の上昇とともに相続税も高くなり、相続時に地目を宅地に転換して売却したり、あるいは計画道路の新設、区画整理などによって農地がどんどん減少していきました。
私が馬場さんのトマトハウスを訪ねたときも、畑の真ん中を通る道路が建設されているところでした。さらに畑の前の道路も拡張予定で、近い将来、農地が大幅に削られることが明らかな状況でした。
「計画自体は私が生まれる前からあって、仕方ないとも思うのですが、問題は、代わりに別の農地を借りて面積を確保しようとしても難しかったことです。組織委員長になったのも、都市農地の貸借ができる法整備を進めるために、自分ができることをやろうと思ったのが大きいです」
そう語る馬場さんの言葉の端々からは、営農に対する高い意欲を感じます。
■田畑も事業もシェアして低コスト化
馬場家が東京都日野市で農業を始めたのは江戸時代。おそらく200年以上は続く農家です。馬場さんは子どもの頃からよく農作業を手伝い、当然のように、いずれは跡を継ぐものと考えていたそうです。
大学の農学部を卒業して、20代で就職。おもな栽培品目はビニールハウスでつくる大玉トマトで、ビニールハウス前での直売と学校給食への納入で完売するほど人気です。需要に応えきれない現状を打開しようと、農地の拡大を考えているのですが、課題は本当に農地を借りられるかどうか。都市農地の賃借ができる法律は整いましたが、農家には「一度、土地を貸したら返ってこない」という意識が根底にある人も多いため、実際に借りられるかどうかは未知数です。
「そこで考えているのは、地域の農家が連携して共同営農できる仕組みです。地方には『集落営農』という組織がありますが、その都市農業版をやりたい」と馬場さん。
グループになると信頼感が高まり、農地が確保しやすくなります。また、共同で運営することは個々の農業経営にもメリット。労働力や機械をシェアすることでコストダウンが可能になり、地域住民や地域企業と連携した取り組みも実施しやすくなります。
都市農家のなかには、このように制度改正を活用して新しいアイデアを実現させようという意欲の高い人が少なくありません。ひと足先に、グループの力を活用して市民や他団体と連携している三鷹市の冨澤剛さんの取り組みもユニークです。
投稿者 noublog : 2021年05月06日 TweetList
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