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2021年03月25日

農のあるまちづくり6~都市に農地はあるべき、と言い切った

新たに創られた法的基盤を、私たちはどう活かしていくか。

 

以下、転載(「東京農業クリエイターズ」2018著:小野淳)

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■都市に農地はあるべき、と言い切った
都市計画法で定められた市街化区域では、前述のとおり、農地はいずれ宅地化されるものというのが基本方針です。生産緑地法によって若干の緩和措置は取られたものの、そもそも制度自体が「都市に農地はいらない」という方針のため、農地は減少の一途をたどりました。

この方針を180度、逆転させたのが、「都市に農地はあるべきもの」と明記された2015年の「都市農業振興基本法」です。そして、この法律に基づいて翌2016年に閣議決定された「都市農業振興基本計画」では、都市農地をどのように価値づけて活用していくことが望ましいかというところまで具体的に踏み込んでいます。
基本計画の冒頭に置かれた「はじめに」では、日本の都市における農的空間の存在意義をあきらかにしています。なかなか読ませる文章になっていますので、少々長いのですが、一部を引用してみましょう。

 

『都市農業は、歴史的に見ると、都市住民の生活との関係の中で発展し、都市的土地利用との競合の中で衰退してきた。江戸の街で発生したし尿を近郊の農地で肥料として活用し、農産物は江戸の住民に消費される等、都市と農業との間には資源循環の関係があり、その中で都市農業は発展してきた。近代以降の急激な都市化や、農業における化学肥料の活用が広がる中で、このような良好な相互関係は失われ、都市農業の継続と住宅等の開発需要との競合が激化していった。

(中略)

近年、都市農業に対する都市住民の世論は大きく変わりつつある。食の安全への意識の高まりとともに、身近な農地で生産された新鮮で安全・安心な野菜が手に入ることが高く評価され、自ら農作物を育てたいというニーズも高まっている。また、都市への人口流入の収束による開発圧力の低下、ゆとりや潤いを求めるライフスタイルや価値観の広がり、東日本大震災を経た防災意識の向上等により、都市農地は良好な生活環境を形成する貴重な緑地や災害時の避難場所としての役割が見直されている。

こうした中、都市農業が果たしてきた農産物の供給機能に加えて、防災、景観形成、環境保全、農業体験・学習の場、農業や農業政策に対する理解の醸成等の多様な機能への評価が高まっている。このことは、日々の営農やボランティアによる学校教育への参加等を通じて、周辺の住民や児童等に都市農業への理解を求める取組みを継続してきたことや、農業体験農園のように都市住民が農業に触れ合う場を提供してきたこと等、都市農業者のこれまでの努力によるものであり、これらの幅広い取組みを通して都市住民と都市農業者との新たな関係が生じつつある。(以下略)』

 

書き出しから江戸時代の循環システムを紹介していることからもわかるように、現代の化学肥料と化学農薬を活用した生産重視の農業とは、まったく異なる視点で都市農業を価値づけようという視点が明確に示されています。
それが具体的にどんな価値なのかは、以下の分に見て取れます。
「農産物の供給機能に加えて、防災、景観形成、環境保全、農業体験・学習の場、農業や農業政策に対する理解の醸成等」
つまり、都市の農地が持つ多面的なメリットの活用を推し進めていこうというのです。
また基本計画の内容では、企業やNPOなど、これまでとは異なるプレーヤーも都市農業の担い手として積極的に考えましょうということにも触れられています。

2015年の都市農業振興基本法、2016年の都市農業振興基本計画は、これまでの国の方針を大きく転換する意志を示したものです。しかし、期限の切れる生産緑地を具体的にどうするのか?都市農地が消える最大の原因になっている相続税の問題はどうするのか?これらを解決しないことには、結局、都市の農地が残りづらいことに変わりありません。解決には法制度の改正が必要です。

基本計画で示された方向を、国は、どのような法制改正に落とし込んでくるのか?これが関係者の間では注目の的でした。
そして蓋を開けてみると…、2017年の生産緑地法改正、2018年の「都市農地の賃借の円滑化に関する法案」の国会通過と、立て続けに決まった一連の改正は、私たちのような都市農地活用を望む事業者にとって、予想以上に満額回答に近い内容だったのです。

投稿者 noublog : 2021年03月25日 List   

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