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2021年03月04日

農のあるまちづくり3~世界のトレンドⅠ.韓国

農のあるまちづくり。

世界のトレンドはどこに向かっているのか?

まずは日本のお隣、韓国から。

 

以下、転載(「東京農業クリエイターズ」2018著:小野淳)

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■世界のトレンドは「都市の課題を解決する農」
東京の都心部では、農と食の分野で新しい動きが始まっています。おそらく、日本の他の都市でも同様の現象が見られるでしょう。
では、世界的にはどうなのでしょう?いま東京で起こっている農的なアクションや、日本における都市農業の現状について紹介する前に、一度、日本の都市農業を引いた眼で眺めてみたいと思います。

世界の先進都市では、農的空間はどのように作られ、人々に利用されているのか?
そんなことが気になり始めたのは、2016年9月の体験がきっかけでした。韓国南部の都市、光州で開催された「大韓民国都市農業博覧会」に招待いただいたのです。
日本の都市農業について、事例を紹介してほしいという依頼でした。韓国では米韓FTA(自由貿易協定)が発効した2021年に、「都市農業の育成及び支援に関する法律」が施行されています。招待されたのも国が主催する都市農業の博覧会です。日本でも2015年、都市農業の法律(都市農業振興基本法)が施行されていますが、韓国で先行して法律がつくられ、こうした博覧会で国を挙げて都市農業の認知を高めている背景には、何があるのでしょうか?

 

■韓国と日本の都市農業はこんなに違う
招待された博覧会は、2016年の第5回でした。開催地・光州の大きな公園を会場に、緑化や家庭菜園などに関するさまざまな展示販売、音楽ライブや勉強会、事例発表会などが開催されました。3日間で6億ウォン(約5,000万円)の予算をかけ、累計来場者数は10~20万人を見込んでいるとのことでした。

会場に入って、あることに気づきました。もし日本で都市農業がテーマのイベントを開催した場合、ほぼあるはずの生鮮野菜などを直販する光景が、まったく見られないのです。
実は、これが日本と韓国の「都市農業」で、大きく異なる点でした。

日本では都市農業とそれ以外の農業の境はあいまいです。どちらも農家が農地を耕作して農産物を生産・販売することに変わりはなく、そのなかで、田畑が住宅地に隣接していたりして、消費者との距離が近い農業を「都市農業」と呼んでいます。
けれど韓国では、都市農業を次のように法律で明確に定義づけています。

『”都市農業”とは、都市部の土地、建築物や様々な生活空間を活用して作物を耕作又は栽培する行為である。』
『”都市農業者”とは、都市農業を直接行う者、または都市農業に関わる仕事をする者をいう。』

つまり韓国の都市農業は、「市民による都市の空地を活用した緑化活動」といったほうが実態に即しているのです。
私が参加したのは各種団体の事業プレゼン大会。参加者の発表内容の多くは、福祉、教育、コミュニティ創出、食の安全安心と健康といった社会的課題にフォーカスし、そのひとつの解決手段として、ビル屋上や公共施設の一部に農的空間をつくっているというものでした。

主催者によると韓国では、特に2000年代から都市の人口過密による暮らしのストレスが問題視されはじめ、それを緩和する手立てとして、市民による農的な活動が盛んになりはじめたそうです。韓国の総人口は約5,100万人ですが、その5分の1にあたる約1,000万人が首都ソウルに居住していて、かなりの一極集中が進んでいるのです。自由貿易協定で外国産の農産物が増えることが予想されて、そうなると都市生活者にとって農業はますます縁遠いものになってしまう。そんな危機感が国をあげての都市農業振興策につながっているように感じました。

とはいえ、わが日本も同様です。東京都23区の人口は948万人、面積は627㎢(ソウル特別市は605㎢)で、ソウルと東京23区は人口密度がとても似た状態なのです。そして、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)をめぐる農業論争がさかんになってきたところに、都市農業の振興に関する法律ができたというタイミングまでそっくりです。韓国の都市で市民がどのように農空間を創出し、食と農にかかわる課題と向き合っているかを知ることは、東京のこれからを考えるうえでも参考になりそうです。

そうなると、他の先進国の都市はどうなのかも気になります。欧米の都市は東京23区やソウルと同じようにストレスフルで、そこに農的なアクションが起きたりしているのでしょうか?

投稿者 noublog : 2021年03月04日 List   

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