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2020年08月06日

農業は脳業である5~合鴨農法、その発想と技術体系

合鴨農法の追求。(リンク)

目先的な生産・経済効率に傾倒しがちな近代農法とは一線を画した、発想と技術体系。

日本の稲作の歴史は約3000年といわれるが、自然・土地・生物循環の構造や秘められたエネルギーに同化すれば、なおも新たな可能性が生まれる余地は大いにありそうだ。

 

以下、転載(「農業は脳業である」2014著:古野隆雄)

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■総合技術としての合鴨水稲同時作
稲と合鴨は、田んぼの中でともに育っていく同級生だ。田んぼで稲作をしているというより、稲作と畜産を同時にしていると考えたほうが事実に即している。稲作の手段として合鴨を田んぼに放しているのではなく、稲作も合鴨も等価の目的と考えた方がよい。これは、稲作と畜産の創造的統一なのである。
ただし、既成概念でこの多様性の技術を表現するのは難しい。田んぼで稲をつくるのは、「表作」という。収穫の終わった田んぼで、次の田植えまでのあいだに玉ネギやジャガイモや小麦をつくるのは、「裏作」という。約3000年近くに及ぶ日本の稲作の歴史で、常に表作の稲作が「主」であり、裏作や畑作は「従」として扱われてきた。
それでは、稲と合鴨がともに育つこの技術をどう表現したらいいのだろうか。私は「同時作」という概念を構想した。表作でも裏作でもなく、同時作である。そして、この技術を「合鴨水稲同時作」と命名した。

作物の連作による地力の低下や病害虫の発生を回避するため、同じ耕地で違う種類の作物を一定の順序で組み合わせて「通時的」に栽培する方法を「輪作」と呼ぶ。これは伝統農業の基本原理である。一方、同時作は、限定された空間で、均衡と内的関連を保ちつつ、複数の作物を同時共栄的に育てていく「共時的」生産方法だ。
同時作の意義は、輪作と同時作の統一的な把握によって明確になる。時間軸で見ると、輪作は時間の縦の流れにおける作物間の作付順序システムであり、同時作は時間を横にとった同一時間・同一空間における作物と作物あるいは作物と家畜の内的関係システムである。
伝統農業の混作(二種類以上の作物を同じ畑に、同時あるいは一定期間重複して栽培する)や間作(主作物の畝や株の間に副作物を栽培する)は、植物と植物の関係としての同時作、合鴨水稲同時作は植物と動物の関係としての同時作と考えられる。

稲作は毎年、同じ時期に、同じ作物を、同じ土地に連続して栽培する。連作の農業である稲作において、電気柵や網を使った合鴨の「囲い込み」によって同時作が生起した。つまり、連作を出発点にして、伝統畑作農業では輪作を発見し、混作や間作という伝統的同時作を踏まえて、水田稲作農業では囲い込みによって同時作を再発見したのである。
合鴨水稲同時作は、日本の稲作の長い歴史で画期的な技術かもしれない。なにしろ、田んぼの中で、ご飯(稲)とおかず(鴨)が同時にできてしまうのだから。

■現在の我が家の経営
近年、私の地域でも、高齢化と後継者不足で離農する農家が増えてきた。その結果、我が家の経営規模は徐々に増加している。
2014年の経営規模は、水田7.3ヘクタール(すべて合鴨水稲同時作。うち直播0.53ヘクタール)、野菜2ヘクタール(完全無農薬有機農業)、小麦2ヘクタール、自然卵養鶏約300羽、合鴨肉約1000羽、合鴨ヒナ約4000羽。そのほか農産加工で、小麦粉、モチ、味噌、漬物を生産している。
稲の品種はヒノヒカリ、ユメツクシ、元気つくし、にこまる。我が家には畑がないので、水田を畑として利用する水田輪作で野菜を作っている。野菜は約60種類。レンコン以外は、何でも作っている。自給を旨とする百姓百作の有機農業だ。

主な販売ルートは、➀米、野菜、卵などを近隣の消費者へ直接届ける提携が約100世帯、➁インターネットなどで募集して年間契約を結び、米、野菜、卵などを宅配便で送る消費者が約140世帯である。このほか、長男夫婦は、田川市でマルシェ、飯塚市では毎週土曜日に商店街の一角にファーマーズマーケットを開いている。これを近畿大学の学生さんが経営学の実習として手伝う。

労働力は、私、妻、長男夫婦、2012年に就農した次男、それに研修生が数名だ。長男は2010年7月に就農し、9月に大分県のネギ農家の長女まゆみさんと結婚した。長男は九州大学農学部大学院で農業経営学を学んだ後、東京のリクルート社に入社。営業の仕事をしていた。二人の結婚で我が家は賑やかになった。次男は京都大学農学部で農業経営学を学んだ後、就農した。

また、私は1992年以降、毎年研修生を1年に1人ずつ受け入れてきたが、近年は3~4名に増えた。現在まで合計約40名だ。中国、韓国、オーストラリアなど海外の研修生も多い。研修期間は原則として1年。研修条件は、将来有機農業をすることだ。研修目的は2つ。有機農業の技術の修得、小さな家族農業の生活の体験である。研修が終了するまでに、有機農業の全体を把握し、自分で意思決定できるようになることを、私たちは願っている。

投稿者 noublog : 2020年08月06日 List   

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