今の時代 -心がかわく理由- そして食から農へ |
メイン
2020年07月30日
農業は脳業である4~一つの鳥に万の宝あり
あまり過重労働にならず、だれにでもできて、循環的・永続的で、環境によく、魚が戻ってくるような有機農業の技術。(リンク)
合鴨農法の追求に、その可能性をみる。
一つの鳥に万の宝あり。一鳥万宝、その中身。
以下、転載(「農業は脳業である」2014著:古野隆雄)
■減農薬と無農薬は技術の次元が違う
そのころ福岡県では減農薬稲作運動が盛んで、福岡県有機農業研究会の仲間はほとんど減農薬稲作をしており、除草剤を多少は使っていた。私は、研究会主催の現地見学会がイヤだった。その日は、会員の田んぼを次々と見てまわる。他の会員の田んぼは減農薬。除草剤は使っているので、立派だった。私の田んぼだけが草だらけ。とくに、秋の長雨や台風の後は稲が倒れ、丈夫なヒエだけが直立し、近づくと稲の株元にコナギが茫々と群生している。その光景は惰農の証明のようで、恥ずかしかった。
それでも私が10年間、完全無農薬の稲作を続けたのは、なぜだろうか。それは、環境倫理の問題というより、技術のとらえ方による。減農薬と無農薬では技術のシステムが違っており、減農薬をいくら延長しても無農薬には決して到達できないと考えていたからである。
減農薬はどちらかというと、近代化技術の枠内ではないだろうか。だから、多くの人たちに受け入れられやすい。減農薬の場合は、農薬を多少は使用する。しかし、1回でも使ったら耕地の生態系は壊され、害虫も益虫も有用微生物もいっしょに死ぬ。だから、減農薬からは病気や害虫や雑草を防ぐ「自然の仕組み」は生まれないと、私は考えていた(いまもそう考えている)。
農薬を1/2、1/3、1/4、さらには1/100と減らしていっても、決してゼロにはならない。なぜなら、ゼロは無限大(1/∞)だからである。「無」と「減」は天と地ほどの隔たりがある。「減」は量的問題であり、「無」とは質が違う。
一度でも農薬や除草剤を使用すれば、仕事は極めて楽になるだろう。使用しないためには、まったく違った発想の技術の確立が必要である。それは、「減」という発想の延長線からは出てこない。技術の次元が異なるのだ。
たしかに、減農薬から無農薬に変わっていった農業者もいる。だが、その技術は「減」から生まれた技術ではない。
そして、私は苦節10年の末に、合鴨君に出会った。驚いたことに、合鴨君はそれまでのどんな技術とも違っていた。
>
■一鳥万宝~合鴨君が稲に及ぼす六つの効果
稲作の長い歴史の中で、雑草や害虫は邪魔者と位置づけられている。だから、防除しようと必死になって対策を考えてきた。
ところが、水田に合鴨を放すや、この雑草や害虫が餌になり、血となり、肉となる。そして、糞となって微生物に分解され、稲の養分になる。つまり、邪魔者が資源に転換する。まさに合鴨パワーであり、逆転の発想である。未利用資源と空間の有効利用なのだ。
加えて、合鴨効果はいろいろある。一日中、田んぼの土をかきまわして水を濁らせる。稲の苗を食害するシャンボタニシを喜んで食べる。稲に刺激を与えて茎を太くする。
合鴨君が稲へ及ぼす効果を、私は大きく六つに分けた。
➀雑草防除効果
合鴨は、水田に発生するヒエ、コナギ、ウリカワなどの雑草を食べる、かきまわす、踏む、濁らせるという四つの働きで、完璧に近く防除する。まず、雑草や雑草の種を食べる。そして、かきまわしたり踏んで、発芽していない種を沈め、発芽しかかった種は浮かせ、泥の中に雑草を沈め、水を濁らせる。その結果、雑草の光合成と種の発芽が抑制される。
ただし、水が浅いと雑草が発生しやすい。また、合鴨は餌と水をいっしょに取り込むので、浅いと食べにくい。そこで、合鴨を放すまでの田植後1週間はできるだけ深水にする。私の田んぼでは、13センチ以上の深水にすると、ヒエはほとんど発生しなかった。
➁害虫防除効果
合鴨は、イネミズゾウムシ、トビイロウンカ、セジロウンカなどの稲の害虫をチームプレーで上手に食べる。稲の茎や葉や株の中に棲息する虫も首を伸ばして捕らえる。とくに、小さなヒナは虫が好きだ。合鴨を放した後の我が家の田んぼには、ウンカもイネミズゾウムシもほとんどいない。
➂養分供給効果
合鴨が食べた雑草や害虫、そして餌のクズ米は、合鴨の血となり肉となり、最後は糞となって微生物で分解され、田んぼの稲の養分となる。雑草や害虫がみごとに資源に変わるのだ。私は、地力のない田んぼのみ堆肥も施しているが、収量は10アールあたり平均7~8俵である。
➃フルタイム代かき中耕・濁り水効果
中耕とは、作物の生育の途中で条間を浅く耕すことをいう。空気の通りをよくし、地温を高め、根の呼吸や養分の吸収を促すために行うのである。
合鴨がこの役割を担う。合鴨は田んぼの泥水を嘴や水かきで常時(フルタイム)かきまわす。そのため、水は泥色に濁る。昔から「田んぼの水を濁らせておけば、米がよく穫れる」と言われてきた。水が濁ると日光が遮断され、雑草が育ちにくくなるからである。また、水温が上昇し、微生物の働きが活発になる。これらが稲の根を活性化させるのだろう。
そして、田んぼの土はプリンのようにトロトロになる。秋に水を落とすと、土は三層構造になっている。すなわち、表面はトロトロで、その下がやや粒が大きく、さらにその下は粒が粗い。こうした土は水もちがよく、しかも水の縦への浸透がよくなるので、落水後は乾きやすい。
➄ジャンボタニシ防除効果
アルゼンチンのラプラタ川流域が原産のジャンボタニシが最近、水のコントロールがむずかしいアジア各地の田んぼで大発生し、稲の葉や芽を食べて被害を与えている。とくに、水深が浅く、天敵となる魚などの大きな水中生物のいない田んぼでは、異常繁殖状態である。
合鴨はこのジャンボタニシが大好物で、パクリと食べる。それは貴重なタンパク源であり、美味しい鴨肉に変換される。
➅稲に刺激を与える効果
水田に放された合鴨は、いつも嘴や水かきや体全体で稲に接触し、根や株元や茎を突ついて刺激を与えている。これによって稲の茎数が増え、茎が太くなり、天に向かって扇子を広げたように開張し、ガッチリした秋まさり型の稲になる。
投稿者 noublog : 2020年07月30日 TweetList
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2020/07/4527.html/trackback