農的社会11~コミュニティ農業Ⅰ.概観 |
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2020年06月25日
農的社会12~コミュニティ農業Ⅱ.地域農業の主体
地域農業の持続的な発展への期待。その中心に、営農法人は存在している。
以下、転載(「未来を耕す農的社会」2018著:蔦谷栄一)
■地域農業の範囲
地域農業の広さ・範囲は自治体レベルが基準となろうが、担い手や農地管理、作付けと販売・流通等によってその広さ・範囲は異なり、これらを弾力的に組み合わせながら広さ・範囲を可動させていくべきと考える。
担い手については、数十戸程度の集落レベルが基礎単位になる。ここで共同しての農作業や水の管理、畦草刈り等が行われる。しかしながら農作業部分については担い手が不足して耕作放棄地を発生させる集落も多く、これを大字単位、小学校単位(学区、集落)の中にあり、ある程度土地勘もある近隣の集落にあって相対的に余力を持つ担い手によって補完していくことが望ましい。
農地管理は農作業と連動する。担い手が不在となった農地については集落の中で担い手と農地とをマッチングさせていくことがベストであるが、適当な担い手が集落内にいない時は近隣の集落の担い手に農地の管理をお願いすることになる。
担い手と農地のマッチングは、お互いに面識なり情報を持っていて、また集落の他の人たちと共同しての農作業も厭わない人であることが必要であり、だからこそ安心して貸し借り、あるいは売却ができるということになる。県を単位に遠隔地からでも担い手を引っ張ってくる農地中間管理機構は最後の駆け込み寺として機能すべきであって、集落内、もしくは近隣の集落の中で調整していくことが望ましい。
これに対して作付け、すなわちどのような農作物を生産していくのかについては、適地適作が基本で、同じ自治体内であっても平場もあれば山間地もあり、置かれた条件、地勢によって変わってくる。
総じて農地が狭小で傾斜地が多いことから多品種少量生産をベースに、稲作・野菜・果樹・畜産を複合させた地域複合経営を展開していくことが基本となる。そのうえで地域ブランドを冠して特産品をつくっていくことにもなるが、地域ブランドを作り出していくということからすれば自治体単位でこれに取り組んでいくことが妥当であろう。これに流通・販売が重なってくる。地域ブランドについては、場合によっては近隣の自治体が連合したり、盆地や流域単位等の地理的条件が近似した自治体が連合したり、あるいは都道府県単位で取り組んでいくこともありうる。
こうした直接の農業だけでなく、地域資源の循環等も考慮すれば、自治体単位を基準にして地域農業をとらえていくことになるが、あくまでその基礎単位となるのは集落である。地域農業は集落単位をネットワークでつなぎ、大字単位、自治体単位等と重層的に組み合わせて取り組まれる農業であるということができる。集落単位で調整困難な問題も少なくなく、大字単位で他の集落で対応できない部分を補完していくことが重要になる。
■地域農業の主体
集落を基礎単位として展開される地域農業の担い手は、専業農家と兼業農家のプロ農家と、自給的農家や定年帰農者等のアマチュア農家の多様な担い手によって構成される。農業生産の中心はプロ農家の中の専業農家となるが、畦草や農道の管理等の農業に付随する作業については兼業農家や自給的農家等がいっしょになって行われる。大規模農業機械等を使っての直接的な農作業のかなりの部分は専業農家によって行われるが、これに付随する畦草刈りや水路の管理等のいわゆる広い意味での百姓仕事はそれ以外の農家もいっしょになって行われ、逆に言えば兼業農家や自給的農家がいっしょになって農業に付随する管理を行うが故に専業農家も農作業が可能になるということができる。
この専業、兼業の関係も、もっぱら専業として農業に取り組む者もあるが、農外で勤務しながらの兼業も、定年後に専業として取り組む者もいるなど、専業、兼業としての地位や関係は決して固定的なものではない。例えば、会社等に勤務している間は手間を掛けられないということで畑を専業農家に貸していたものを、定年後はこれを返してもらって結果的に規模拡大をして専業農家として活動するようになる者も多い。すなわち兼業農家の一定部分は専業農家の予備軍であり、専業農家へと変わる可能性を持つ。
専業農家が中心とはいいながらも、地域農業にとっては兼業農家やアマチュア農家の存在は大きく、これらがいっしょになっての地域コミュニティが非常に重要だということでもある。かつての村落共同体としてのコミュニティはずいぶんと希薄化してしまっており、集落内での相互扶助の関係を回復・再構築していくことが不可欠であり、改めてアマチュア農家も巻き込んでの地域コミュニティの再生・活性化が大きな課題となる。
昨今では農家でも農業の跡取りがいないのが普通になりつつある。1戸単位での農業、営農の継続が難しくなってきている現状を踏まえると、集落営農、さらには集落法人化することによって農業、農地を運営・管理していくことが欠かせなくなってきている。担い手確保のためには外部から人材を獲得し新規参入させていくことが不可避となっており、雇用関係の中で新規参入を従業員として受け入れ、これを教育しながら地域の担い手として育成していくためにも集落営農の法人化が必要とされる。もちろん、集落営農にとどまらず個別経営体も法人化して経営管理等を強化していくことが必要とされる情勢にある。
このように地域農業は多様な担い手によって維持・振興していくことになるが、個別経営体である専業農家や兼業農家に加えて集落営農や集落法人は持続性を確保していくために大きな役割を発揮するとともに、法人化は経営能力を高めていくとともに、新規参入を外部から確保していく受け皿として機能していくことが期待される。
投稿者 noublog : 2020年06月25日 TweetList
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