| メイン |

2020年06月18日

農的社会11~コミュニティ農業Ⅰ.概観

日本農業の持つ特質を生かす「コミュニティ農業」、その概観。

 

以下、転載(「未来を耕す農的社会」2018著:蔦谷栄一)

にほんブログ村 ライフスタイルブログへ

【農的社会7~改めて、日本農業の強みと課題を整理する】を踏まえて。

 

■軸となるコミュニティ農業
このような日本農業の持つ特性を生かし発揮させていくことが日本農業再生の出発点となるが、特にこの特質にある高所得かつ安全・安心・健康に敏感な大量の消費者の存在は大きい。しかも都市と農村とはきわめて近い時間距離にある。消費者ニーズへの対応とともに消費者との交流が大きなカギを握る。これを軸にしての農業を「コミュニティ農業」として強調してきたところである。

コミュニティ農業が基本とするのは人と自然とによって取り結ばれる関係の重視であり、
人と人との関係、すなわち生産者と消費者との顔と顔の見える関係=提携、
人と自然との関係、すなわち環境に優しい農業の展開=環境保全型農業・有機農業等の推進、
自然と自然との関係、すなわち地域循環と生物多様性の尊重、を柱とする。

すなわちコミュニティ農業とは、「自然との関係性を尊重・維持しながら、生産者と消費者(産消提携)、農家と地域住民(地域コミュニティ)、農村と都市(農都共生)などの関係性を生かして展開される農業の統合的概念」である。そしてこれが農業の持つ多面的機能の発揮と一体的な関係にあることは言うまでもない。

こうした生産者と消費者の提携によって、消費者ニーズを反映するとともに、環境に優しく持続的で循環型の農業によって生産された農産物を買い支えていく。そして生産者と消費者とが交流し、消費者も身近なところ、手近なところから農業に参画していく。こうした関係性を確立していくことを日本農業再生のための土台としてしっかりと据えていくことが求められる。国産か輸入物かは問わず、安価を優先する消費者が過半を占めているのが現実であるが、であるからこそ低コスト化により価格で輸入物と勝負していくのには限界がある。一方で、先に見たとおり日本は豊富な特質を有しており、これを提携、地産地消等によって消費者と一緒になって生かした農業を展開していくことを基本戦略とすべきと考える。

このコミュニティ農業に関連して触れておきたいのがFEC自給圏である。コミュニティ農業の根底にある自然循環機能の発揮や、産消提携、地産地消の取り組みを地域レベルで展開していくにあたっての目標、具体的なイメージを提供するものである。F(Food)は食料、E(Energy)はエネルギー、C(Care)は福祉介護を指すが、地域での暮らしに必要とされる基本的なものについて極力、地域で産出していくとともに、やり繰りしながら地域の中に循環をつくりだすことによって、極力自給度を向上させ、地域の経済的・政治的な自立の向上を目指していくものである。
こうした文脈の中で、改めて日本農業のあるべき姿について具体的に検討していくことにしたい。

 

■基本は家族農業による地域農業
農業は広義の農業であってこそ持続可能で、農業の喜びも楽しみも誇りも感じることができるものである。農業は自然に依拠して農作物を育てるものであるから、人間の思うとおりにはいかない、ある意味では不合理ともいうべきものを多分に含んでいる。計算どおりにはなかなかいかない、日中働いて時間が来たからハイ終わりとはなりにくい。また畦の草刈りや景観の保全等によって維持される「農」「農の世界」については何ら収益をもたらすものでもない。

産業としての農業であるところの狭義の農業にとっては、合理化を徹底して追求することとなり、「農」「農の世界」はともすれば厄介者として扱われがちである。生産と暮らしが一体化した家族経営であるからこそある程度、時間を緩やかにとらえ、収益には結びつかない作業も意味あるものとしてとらえられるのであって、農業を本来の農業である広義の農業としてとらえていくにあたって基本となるのが家族経営なのである。
しかしながら家族経営は個別経営であるだけにこれを超えて地域レベルでの対応・取り組みは必要であり、相互の力を組み合わせていく協同の取り組みが必須となる。この協同の取り組みによる地域農業としての展開が求められることになる。

このように日本農業のあるべき姿、めざすべき方向性は、家族経営を柱にした多様な担い手が多様な農業を展開しながら地域としてのまとまりをもって生産・販売等で連携・調和を保ちながら取り組んでいく地域農業にあり、地域農業の振興が基本となる。
ブラジル、オーストラリア、アメリカ等の農業輸出国が大規模かつ低廉な外国人を含めた雇用労働力を使っての個別経営体が担い手となって競争力を確保しているのに対して、日本は家族経営を中心に専業農家に小農経営、兼業農家等の多様な農家・担い手が、個別経営ではありながらも地域を舞台にして相互に、時には濃密に時には緩やかに連携しながら多様な農業を展開することによって、地域資源を有効に活用しながら効率性をも高めていこうとするものである。
たとえ多様な担い手による多様な農業を地域農業として展開するからといって、差別化は可能であっても国際競争力を獲得していくことは容易ではない。しかしながら地域資源や食と農をはじめとする大小さまざまの循環をつくりだしていくとともに、都市の消費者とも交流しながら産消連携を広めていくことができる。こうして消費者、国民の日本農業についての理解を獲得しながら、再生産を可能にする支援をも確保していくことによって地域農業の持続を可能にしていく。

そこで地域農業とはいっても、その地域をどのような広さ・範囲で捉えるのか、地域農業の主体は誰になるのか、地域農業では何を作付け・生産していくのか、また地域農業が成立していくために必要な要件は何か等、地域農業の中身について具体的に触れておきたい。(続)

 

 

投稿者 noublog : 2020年06月18日 List   

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2020/06/4481.html/trackback

コメントしてください

*