『微生物・乳酸菌関連の事業化に向けて』-3 ~既存事業の例・1 土~ |
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2015年03月10日
日本農業、破壊の歴史と再生への道筋6~”脱農業”で肥大化したJA農協
前回記事:日本農業、破壊の歴史と再生への道筋5~農協が作り出した「高コスト農業」
補助金漬けで産業基盤をみるみる衰退させていった農業界。対してJA自身は、”脱農業”でますます肥大化していく。
■脱農業化の温床となった「准組合員制度」
「日本の農業を破壊したのは誰か」(著:山下一仁)より引用(P110)
農協は農業者を正組合員とする職能組合である。しかし、農家ではなく地域の住民であれば誰でも組合員となれ、意思決定には参加できないが組合の事業を利用できる「准組合員」がいる。他の協同組合にはない農協独自の制度だ。
>准組合員制度を認めたことは、JAが農業以外の事業を活発にかつ大々的に行う温床となった。准組合員の関心は農業ではなく、都市銀行が貸し出しをためらった住宅ローンや自動車ローンなどの小口ローンだったので、農協ローンはその間隙をついて発展した。准組合員制度はJAが脱農業化によって発展することを後押しした。しかも、2001年には、准組合員資格はさらに拡大され、地域の住民でなくても農協から継続的に物品を購入したりサービスの提供を受けたりしている個人も、准組合員となれることになった。
「組合員」の”拡大解釈”を経て、広大な「耕作地」を手にしたJA農協は、もはや「農業協同組合」とは全く異質の組織体へと変容していった。
■脱農業化が向かった先は、金融・保険業
ヨーロッパの農協は、酪農、青果等の作物ごと、生産資材購入、農産物販売等の事業・機能ごとに自発的組織として設立された専門農協である。これに対し、戦前の統制団体である農業会を引き継いだJAは、作物を問わず全農家が参加し、かつ農業から信用(金融)・共済(保険)まで多様な事業を行う「総合農協」となった。
>米価の引き上げで兼業農家が滞留したため、兼業収入も農地の転売収入もJAの口座に預金された。その預金は農業と関係のない准組合員の住宅ローン等に融資される。他の協同組合に認められていない准組合員と信用事業の二つの特権は、相乗的に作用し、脱農業化によるJA発展の基礎となった。
JAの貯金残高はどんどん拡大し、2012年度は88兆円にまで達した。我が国第二を争うメガバンクである。ここからJAが貸し出している金の比率は3割程度に過ぎない。それ以外の金額は海外での有価証券投資などで運用されている。世間を騒がせた住専問題は、この金が住専に流れたものである。しかも、JAが貸し出している金のうち農業に融資されているのは、全貯金額の1~2%程度で、ほとんどは准組合員向けの住宅ローンや自動車ローン、農家が農地から転用した土地に建設するアパート建設資金などである。
>信用事業とならんでJA農協のドル箱となっている共済事業は、保険業界の強い反対もあり、戦前の産業組合には存在しなかったものだ。戦後、農業協同組合法を制定する際に、農作物被害を受けた農家に見舞金を与えるなど、農家が救済しあう趣旨の規定を設けたものが、生命保険と損害保険の双方を行う事業に肥大化したものである。現在ではその総資産は51兆円で、生命保険最大手の日本生命の55兆円と肩を並べる。
JA農協は、銀行業、生命保険、損害保険と、日本のどの法人組織にも与えられていないオールマイティの権限を利用し、着々と「脱農業化」の事業を拡大させてきた。
>資本主義の矛盾を解決するために作られたはずの協同組合が、不動産バブルに資金を融通したり、我が国を代表する機関投資家となって、ウォール街の有価証券取引で利益をあげたりするなど、グローバリズムを利用した、最も資本主義的な組織体に変化するという皮肉な現象が起きている。
そして現在、この膨れ上がったJAマネーが、改めて外資に狙われているのである。
投稿者 noublog : 2015年03月10日 TweetList
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