【農園便り】奈良農園の近況 |
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2011年12月17日
自殺する種子「ターミネーター・テクノロジー」とモンサント社の種苗支配
画像はこちらからお借りしました。
みなさん、こんにちは。
現在、世間で騒がれている「TPP問題」ですが、るいネットの中で
「 国破れてTPP在り 」こんな記事を見つけました。
>・農業(GMO(遺伝子組換え)食品)
現在のGMO食品に対する国内の規制が撤回される。日本固有の農産品種をネダヤシにするために、巨大アグリ企業モンサントやシンジェンタが、特許権を持つGMO種子を国内にばら撒こうとしている。GMO種子はモンサントが製造する最強の除草剤ラウンドアップ(元はベトナム戦争の枯葉剤)とセットで、世界中で販売されている。 F1種と呼ばれる種子は、別名『自殺する種子』の異名を持つ。
この種子は収穫した翌年に蒔いても実をつけない1代種。
しかも除草剤ラウンドアップに耐性を持っているため、このGMO種子とラウンドアップをいっしょに投入した場合、農家は従来種の作付はできなくなり、モンサントから毎年種子を購入しなければならないという、無間地獄に陥ることになる。
インドでは、収穫が倍増すると言われたこのGMO種子を、たくさんの農家が借金をして購入した。
しかし期待した収穫は得られず、12万5千人の農民が自殺に追い込まれた。
また、モンサントはこの種子を、従来種を栽培する耕地に密かに紛れ込ませ、特許を盾に農家を訴えるという犯罪を犯している。(引用終了)
TPP参加を表明すれば、このモンサント社が発明したGMO種子を許認する事になり、私達の食を脅かすすっごく危険な事になりそうです。
そこで、これまで当ブログでも何度かご紹介させてもらっている野口勲さんの著書「 タネが危ない
画像はこちらからお借りしました。
●死を招く「ターミネーター・テクノロジー」
GMO種子は、アメリカ モンサント社の傘下企業 デルタ&パイン・ランド社が開発した「遺伝子組み換え技術」で作られた種子です。
なんと、遺伝子操作によりタネの次世代以降の発芽を抑える技術で、農家の方達が独自に行ってきた自家採種( ※農家の方達が、自分で作った作物の花を交配させ、自らの手で種を採る事。) を不可能に出来る技術です。
この技術が開発・特許を受けた直後に日本でも日本種苗協会の機関誌「種苗界」(1988年8月号) に記事が掲載され、
>「植物の種子が発芽する際に、組み込まれた遺伝子が毒素を発生して植物を死滅させるこの特許は全ての植物種をカバーし、遺伝子組み換えによってできた植物のみならず、通常の育種方法によってできた植物も特許の領域(スコープ)に含まれる」とある。(引用終了)
驚く事に、この遺伝子組み換えで作られた作物の花粉と交配して出来たタネを播いても、新たに芽を出そうとする瞬間に毒素を出して死んでしまうらしい。・・・何やらとんでもなく物騒な遺伝子組み換え技術が開発されました。
この遺伝子組み換え技術を「ターミネーターテクノロジー」と呼んでいます。
さすがにこのタネが認められると多くの農家が影響を受ける事になります。当時欧州勢(同業社)から「モンサント1社による農業支配」だと、強い反発を受け、結果的には使用は禁止され封印されてしまいました。
実際に野口さんの著書(「タネが危ない」>ターミネーター種子が解禁されれば、飛散した花粉と交雑可能なさまざまな栽培植物のタネが、芽を出せず死んでしまう。また、組み換えられた遺伝子の彩毛細胞は、近くの土壌細菌であるアグロバクテリウム(根頭癌種病菌)とプラスミド遺伝子を交換し合い(遺伝子の水平移動)、土壌細菌に移ったターミネーター遺伝子は、ありとあらゆる種子植物にとりつき、自殺花粉を世界中に撒き散らしてしまうのだろう。
そして、植物の死は動物の死と直結する。一時のしのぎの経済戦略が地上を死の世界に変えてしまう危険性を秘めている。(引用終了)
と警告を出されています。
しかし、一方でヨーロッパでも、バイエルンクロップサイエンスやデフラという会社が別の技術特許で同じように自殺する遺伝子を手掛け、試験栽培を続けているそうです。
単にモンサント1社による農業支配ということではなく、数社の遺伝子組み換え産業が様々な特許を取得し、現在でもアメリカ、ヨーロッパ勢がどういう条件ならば解禁していいのか、条件を出してくれと政府に投げかけており、国際交渉の真っ最中だそうです。
では、なぜこのような種子開発に躍起になっているのか?アグリビジネスの状況について見ていくことにしましょう。
●農業界を牛耳るアグリビジネス
現在、地球上で20社にも満たない多国籍企業が世界のすべての植物の種子の特許を所有していますが、野口勲さんの著書(「タネが危ない」)内に記載されている事をまとめると、
・ノバルティス →シンジェンタというスイスの除草剤・農薬会社に吸収
・セミニス →モンサントに買収
・パイオニア →デュポンに買収
・リマグレイングループ→バイエルクロップサイエンスと業務提携
「タネを支配する者は世界を支配する」の言葉通り、遺伝子組換え産業が世界の特許権等を持つ種苗会社を飲み込んでいっています。
こうした「特許権」を求め、企業買収等を繰り返しながら、モンサント社を中心としたアグリビジネス界では、今なお制覇権争いが続いているのです。
そして、モンサント社の種子等で作り出した作物、すなわちアメリカからの輸入品(大豆等)を中心に、味噌も醤油も豆腐も納豆も植物油も、輸入穀物(小麦・トウモロコシ等)で肥育されている国産牛肉も豚肉も鶏肉も牛乳も鶏卵も、ほとんど遺伝子組換え食品になっています。
※詳細は、こちらを参照してください。( 「厚生労働省 遺伝子遺伝子組み換え食品一覧表」 )
遺伝子組換え品種の中には、例えば、日持ちのするトマトなんていうものも実用化されています。このトマトは、室内に1か月おいても腐らないそうです。自然野菜では絶対にありえませんね。
このように、自然界では有り得ない事が利益第一という目的のもとに行われています。
本来、自然の摂理がもたらす恵みを頂く農業が自然の摂理を逸脱していっているのです。
では、なぜ彼らがこれほど企業買収に拘るのかを最後に見て行きたいと思います。
●「新種苗法」の歴史とモンサント社等種苗界の力の基盤とは?
一般的な農家では、昔から伝統的な種(固定種)を使っていて、次の世代の種を自分でとって、また、次の年に播いて育てていました。
しかし、今では気候変動や病気に強く、確実に収穫が上げられる種苗を求め、品種改良(F1種)されたタネを種屋さんから買うようになっています。それでも、買った種を植えて育ててから自分で種をとって、次の年に播くという事をしていました。
※固定種とF1種の違いについてはこちらをご参照下さい。
ところが、種苗法の法改正により、今この自家増殖でさえ厳しい制限が付けられるようになったのです。
詳しくは、下図を参照してください。
「新種苗法」によって、
・新種苗を発明・発見した者への「育成者権」を世界基準で手厚く権利化した。=特許権
・育成者権は、種苗、生産物、加工品にまで及ぶ。
・海外から新品種を円滑に導入する。
・主要農作物(稲・大麦・小麦・はだか麦・大豆等)の種子の生産・流通に民間業者が参入できる。
・農家の自己増殖には制限を設けた。
ということが、法律によって明確化されました。
だから「新種苗」を開発すれば、新種苗法によって25~30年間は育成者は権利が守られる為、莫大なビジネスチャンスが生まれるのです。
すなわち、この育成者権=特許権をどれだけ取得しているかが彼らの力の基盤になっているのです。
特に「UPOV加盟国(58カ国+EU)」内にも、自分達が開発した特許権の効力が及ぶ為、モンサント社を中心としたメジャー種苗企業等が我先にと新種苗の開発競争を激化させました。
しかし、一方でいくら育成者権が守られていても、農家がこれまで行っていた自家採取(増殖)を1件、1件監視する事は出来ません。そこで、モンサント社は、農家や種子販売業者へ調査員を派遣したり、抜き打ち検査等をしていました。
時には、無実の人間を半ば脅し入れ、訴訟沙汰にまで発展する場合もあったそうです。
参照:「農業関連大手モンサント社の恐怖の収穫」(1)
近年、モンサント社は、ますます世界のアグリビジネス界において絶大なる力を持ってきています。
その一例として、昨年アメリカの法律改正でも力を発揮しました。
この内容が、るいネット「タネを支配する者は世界を支配する」遺伝子組換産業によるタネ支配
」に挙げられています。
アメリカでは、昨年「食品安全近代化法」が提起されました。市民が自分で野菜を栽培することや生鮮野菜直売所の禁止、種苗を持つことも禁止し、政府が認めた種苗(モンサントのF1)だけで公認機関だけからしか買えなくなるということが盛り込まれています。
このような力を背景に、マスコミや大衆からの避難をかわすべく、法律改正やより確実に1代で終える種を作ろうと考えたのだと思います。
その結果が、今回冒頭でご紹介した「ターミネーター・テクノロジー」を開発に繋がったのではないかと思います。
●今、改めて何をすべきか。~事実を調べ、広めていくこと~
現在TPP加盟を巡って、単に産業としての農業の枠を越えた議論が起こりつつあります。
つまり、TPP加盟が単に農業という産業を成立させなくなるという問題ではなく、農業に限らず日本の数多の法制度がアメリカ化し、実質的に日本がアメリカ化していくという議論です。
一方で、改めて農業そしてわが国の食に対する期待を考えれば、TPP加盟にするか否かも棚上げにしても、今回取り上げた遺伝子組換え作物の問題やF1種、大量の農業・肥料の問題は厳然として存在します。
今回のTPPの議論をきっかけに、こうした「農」が置かれた現実や事実を知っていくこと。
そして、それを広めていくこと。
これが今一番求められている事ではないかと思います。
なぜなら、こうした事実を知って始めて「何が問題か」が分かり、そうして「では、どうする?」と考えているようになると思うからです。
今後も当ブログはこうした事実をお伝えしていく事を目的として運営しています。
最後迄読んでいただき、有難うございました。
これまでのコラムも面白いので、是非ご覧になって下さい 😀
【コラム☆】~F1種の危険性:ミツバチはなぜ消えたのか?~
【コラム】TPP問題~農産物の輸出入問題ではなく、米国軍産派による日本乗っ取り戦略~
【コラム】破局後の農業の突破口になるか?~肥料、農薬、水、種籾を減らして多収穫を実現するSRI農法の可能性
【コラム☆】~世界初のF1種をつくったのは日本人だった☆~
【コラム☆】固定種の時代がこれから来る☆+゜
投稿者 shiogai : 2011年12月17日 TweetList
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