2020年11月19日
2020年11月19日
農と金融2~「お金第一」が生きる意欲を失わせる
【農と金融1~金を払い、関わり合う価値を捨ててきた】
に続いて。
「お金第一」崩壊の足音がそこまで来ている。
終わりを迎える前に、お金とは何なのか、社会に何をもたらしたのか、改めて問う。
以下、転載(「共感資本社会を生きる」2019著:高橋博之×新井和宏)
投稿者 noublog : 2020年11月19日 Tweet
2020年11月19日
伝統農法「冬水田んぼ」。雑草を減らすのに役立ち、豊かな土壌にする農法について
今日は、伝統農法の冬水田んぼについての紹介になります。田んぼは収穫が終わると水を抜いてしまうことが普通。冬に水が張っている田んぼは、私は、見たことがありません。
ところが、先人たちは、冬に水を張ることで、生態系を豊かにし、自然に雑草を減らし、良質な土づくりが可能な農法をあみ出しました。
転載開始【リンク】
適切な農業生産を行っていれば、農業は二次的な自然環境の形成や環境保全といった機能を果たしますが、農業資材等を不適切に利用するとかえって環境に負荷を与え、自然環境の劣化を招いたり、土壌劣化など、環境へ負荷を与えてしまいます。
そこで、環境に配慮した循環型農業に関心が高まっているわけですが、昨今、伝統農法「冬水田んぼ」が注目を集めています。
◆冬水田んぼとは
通常、稲を刈り終わった後の田んぼには水が張られていませんが、「冬水田んぼ」は、稲を刈り終えた田をあえて湛水状態(田に水を張り続けた状態)にしておくことを指します。
◆冬水田んぼのメリット・デメリット
〇メリット
水を張り続けることで、多種多様な生物を育むことができます。
それにより得られるメリットには
・土づくりに役立つ
・雑草対策に役立つ
ことが挙げられます。
寒い季節に水を張り続けることで、低い温度でも活動する酵母や乳酸菌などの微生物、イトミミズやユスリカなどの生物が増殖し、田の表層数cmのところに「トロトロ層」と呼ばれる、土壌の粒子が細かくなった層ができます。
そして「トロトロ層」に棲む小動物を食べに、さまざまな鳥がやってきて、冬水田んぼは鳥たちの憩いの場になります。鳥たちは田に糞をしますが、その糞には植物の生長に欠かせない窒素やリン酸などの栄養素が含まれています。この栄養を糧に、春に植えられた稲は育っていきます。
この「トロトロ層」は雑草対策にも役立ちます。雑草の種子がトロトロ層に埋没すると、種子が発芽するのに十分な太陽光が届かなくなるため、雑草は発芽できなくなります。
なお冬水田んぼの湛水時、米ぬかを散布すると雑草対策により効果的です。米ぬかが微生物のエサになり「トロトロ層」ができる手助けになるだけでなく、米ぬか散布による抑草効果も期待できるからです。
米ぬか散布の効果に関する記事:米ぬか散布で得られる効果とは。病害虫の発生を抑え、作物の味を良くする!?
〇デメリット
とはいえ、デメリットもあります。安曇野市農業再生協議会が実施した「ふゆ水田んぼ研究プロジェクトチーム」の活動内容からは、冬水田んぼの難しい一面が見えてきます。
冬水田んぼの取り組みを検証する3年もの調査結果には、
○:3年目にして、米の食味値(蛋白・アミロース等)が市内の平均値に比べて多少評価が上がった。
×:3年目にして、10a当たりの収量が市内の平均値を大きく下回った。水管理に手間がかかり、農家の負担が増えた。
とありました。調査結果の文中には“本市においては、冬期湛水を行うことによる農家へ対するメリットははるかに小さいことが分かりました”とあります。収量に影響を与え、労力がかかるこの農法は、効率的な生産活動を軸にするとあまり好ましくありません。
他には
・その地域の気象や圃場条件によっては実施が難しい(冬に水が不足する地域ではできない)
・冬水田んぼの効果は、無農薬栽培圃場が前提であり、慣行農法をしていた圃場で実施してもすぐに効果は出ない
などが挙げられます。
注目を集める理由 それでも、冬水田んぼに取り組む地域によっては、
・冬水田んぼで収穫したコメをブランド化して販売
・田んぼの生き物調査や自然観察会を企画
・農作業の体験ツアーを企画
するなど、冬水田んぼを所得向上や新たな事業に活用しています。
冬水田んぼには、先で紹介した微生物やイトミミズ、ユスリカなどの他、トンボの幼虫のヤゴやメダカ、食べ物を求めてやってくるカモやガン、サギなどの生息が確認されています。水田周辺の整備による生育域の減少や環境変化により、生息数が減少しているニホンアカガエルの産卵場所にも。
効率的な生産には向いていないかもしれませんが、この農法がきっかけで、持続可能性のある農業への注目がより高まるかもしれませんね。
◆まとめ
「冬水田んぼ」では、良好な自然環境が持続し、結果的に、質の高い美味しいコメの栽培に繋がっていくという、生態系の中に稲作がきっちり組み込まれているという農法です。
なので、自然が織りなす「あり様」から様々なものが生まれてくるわけで、自然の容量を超えた効率的なものとは相いれないのは当然と言えば当然。そういう意味では、自然の理にかなった農法と言えるのかもしれません。
肥料がない 時代に、このように自然の力に頼りながら、生産を営む先人たちの豊かな発想。
そもそも、農業の原点は、「冬水田んぼ」のように、まさに自然と一体になりながら、自らが生きていくための必要最低限の作物をつくり食するという事であったはず。「冬水田んぼ」は、現代の農が忘れてしまった農の原点を呼び起こす農法とは言えないでしょうか?では、次回もお楽しみに
投稿者 noublog : 2020年11月19日 Tweet