【世界の食と農】まとめ~世界の農を巡る覇権争いは、これからどうなる?~ |
メイン
2022年03月15日
シリーズ『種』1プロローグ~持続可能な農業の要は「種」!
今回から新しいシーリーズ「種」をはじめます!!
近年、肥料・農薬などの農業資材の高騰がニュースでも取り沙汰されており、実際に私が仕事で関わっている生産者さんからも、資材費が高騰し経営を圧迫しているという話を聞くようになりました。農業資材は、ほとんどを海外からの輸入に頼っているのが現状で、したがって、農家の経営は世界情勢の影響を直接に受けることになり、結果的に非常に不安定になっているのです。
画像は、農水省資料(リンク)よりお借りしました
この状況もあって、昨今では自足的な農業、資源循環型農業も注目されています。
そんな中で、無農薬・無肥料栽培を実践している農家さんがいます。
もし本当に可能であれば、海外の資材に頼らず、安定的な生産が可能になりますよね。
肥料や農薬に頼らず、農産物を育てる秘訣は何なのでしょうか?
書籍「固定種野菜の種と育て方」から、無肥料・無農薬で実際に農業を営んでいる生産者さんの事例を紹介します。
■自然に生えている植物は無肥料で育つのに、何故野菜には肥料が必要なのか?
この本で紹介されている関野さんは、両親から畑を引継ぎ農業を始めた当初、何故、肥料をやる必要があるのか、疑問に思ったそうです。
なぜなら、森に生えている草木や、庭に成る柿の木は、特に肥料を与えなくても毎年元気に育ち、実をつけるからです。「本来の植物は肥料が無くてもきちんと育つはず」という発想で、無肥料・無農薬栽培に挑戦したのです。
■「無肥料」・「無化学肥料」と、「固定種の種の自家採取」はセット!
そんな関野さんが、何年か試行錯誤を繰り返しながら確立した、無農薬・無肥料栽培のポイントを引用します。
ポイントは、作物の生命力を取り戻すこと。そのために、「固定種の種」であることが必須条件とのことです。
*「固定種の種」とは、昔から人々が繰り返し種取りを続け、品種改良してきた種のことです。現在、日本で売られているほとんどの野菜は、「F1種」という種を使っており、F1種は、種取をしても親の形質が引き継がれない仕組みになっています。F1種と固定種についても、本シリーズで詳しく掘り下げていきたいと思います。
≪以下引用≫
作物は毎年、病害虫や猛暑などの好ましくない環境と闘い、なんとか対抗する術をみにつけようとして種に残すのです。その中でも、とくによく頑張ったものを母本として選び、次の年にはより作物が育っていくことになるわけです。
無肥料栽培は固定種でなければなりません。固定種の種は母本の性質を安定して引き継ぎますが、F1種のタネはせっかくの母本の記憶がしっかりと受け継がれていかないのです。
≪以下引用≫
私が無肥料自然栽培を始めた最初の1年は、固定種がもともと肥料の依存度が低い上に、畑に残肥があるので、収量はF1種の慣行栽培の2割減程度に収まり、すごくきれいな作物が収穫できました。施肥をやめることで肥料の危機がいくらか和らいでいるので、病虫害も結構抑えられました。
日本の畑はひっそ肥料をたくさん与えているので、土壌中に窒素を消費する微生物がたくさん棲んでいます。ですから窒素肥料を施さなくなると、土中の窒素分は2年目の途中くらいでほとんど抜けてしまいます。実際に私の畑で土壌診断をしたデータによると、二年目を過ぎたことには、土壌の小三体窒素量は一般の畑の10分の1程度しかありませんでした。ある調査結果によると、一度、底をうった土壌窒素が長い年月をかけ、ゆっくりと上がってくることがわかっています。それは土壌中の空中窒素をこていする微生物の働きです。
種取をしていれば作物がその変化に適応してくれるのですが、種取をしていないと、いくら肥料の依存度が低い固定種といえども、そのレベルの窒素量では全く育ってくれないのです。
そうして無肥料栽培になじんだ作物は、自らの生命力で育つようになり、ある意味で手間がかからなくなってくれるようになるのです
また、肥料と農薬の関係については、
≪以下引用≫
肥料を与えれば与えるほど植物は軟弱に成長してしまい、細胞同士の結びつきがユルユルになってしまいます。そうなると、どうしても病虫害に対する抵抗力が弱くなるので、農薬を使わざるを得なくなるのです。
とも言っています。
■逆に言うと、「F1種」「肥料」「農薬」はセット!
以上を見ていくと、こういうことも言えます。
F1種は、窒素肥料施用を前提として設計されていますが、土中環境がいちど窒素過剰状態になると、微生物の働きによって、更に窒素使用が必要になるというサイクルに陥り、結果的に農薬施用もさらに必要になっていくことになるのです。
■種とはなんなのか!?どんな仕組みになっているのか?
ここまで見てきたように、これから、資源を循環させて、持続可能な農業を考えた時、「種」が非常に重要なファクターになっていることがわかります。
では、この「種」とは一体何なのでしょうか?
本シリーズでは、種を理解することで、本当に求められる農業のあり方を探りたいと思います。
・F1種とは何なのか?どうやって作られているのか?
・固定種はどんな仕組みで、母本情報を伝達しているのか?
・なぜF1種が流布し、固定種が市場から姿を消したのか?
など、追求ポイントはたくさん出てきますが、ひとつひとつひも解いてみたいと思います!
投稿者 o-yasu : 2022年03月15日 TweetList
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2022/03/5615.html/trackback