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2021年06月10日
農のあるまちづくり17~都市のすき間が「新しい里山」となるⅡ
都市に住む人たちが自分たちでつくりだす、「新しい里山」の形。
都市農園は、「農業体験」から、「コミュニティづくり」へ。
以下、転載(「東京農業クリエイターズ」2018著:小野淳)
■屋上農園も区画貸しからコミュニティ型へ
屋上菜園というアイデア自体は特段、新しいものではありません。JR恵比寿駅の駅ビル屋上にある「ソラドファーム恵比寿」は2009年の開業。2012年には、お台場の複合商業施設「ダイバーシティ東京」の屋上に約80区画の貸農園がつくられ、バーベキュー施設もある大型の「都会の農園」が開園しました。関西でも、JR大阪駅の「大阪ステーションシティ」、「あべのハルカス」の近鉄百貨店、門真市の「ベアーズ」など、大型商業施設の屋上に菜園がある光景は、かなり定着しています。
これは大型商業ビルの建設に際して、自治体の定める「緑の基本計画」で一定面積以上の緑化が義務付けられていることが大きく影響しています。たとえば渋谷区では、敷地面積300~5000㎡を開発する場合、地上部と屋上部の各20%以上に緑化を施すことが義務付けられています。5000㎡以上になると比率は25%に上がり、実に4分の1以上が緑の空間ということになります。
つまり大型ビルの新築を構想するなら、計画段階で屋上緑化を盛り込む必要があるのです。そしてどうせなら、植栽や芝を敷いた単純で省コストな緑化ではなく、集客やブランディングにつながる可能性のある農園として整備しようという動きも広がりました。
ただ、そのほとんどが個人への区画貸しにとどまっています。たしかに個人貸しの事業モデルのほうが、利用者の権利やルールの設定がしやすく、また売り上げ見込みが立てやすくなるので、事業計画も明確です。しかし、限られた面積をより多くの人が活用し、賑わいを生むという面は弱くなります。
「渋谷の農家」小倉さんが仲間と始めたアーバンファーマーズクラブ(以下UFC)は、個人区画をつくる事業モデルとは、まったく違う農園事業という点が特徴です。
では、何をするのか。プロジェクトの主要メンバーは、仲間を集めて目標を設定し、盛り上げていくのが好きな面々です。
「ビルの屋上やベランダ、学校などの教育機関のスペースを、畑や田んぼとして活用する。都市型農的ライフスタイル=アーバンファーミングの輪を拡げる」
そういうUFCの企画に、個人だけでなく企業も興味を示しました。これが、この章の大きなポイントです。
折しも渋谷の街は、いま駅を中心とした大規模な再開発の真っただ中にあります。2017年から2023年にかけて、東急グループは駅周辺に7つの大型ビルの竣工を予定。もちろん、これらのビル屋上にも20%以上の緑化が義務付けられています。
2018年、UFCはNPO法人となり、まずは東急不動産などが所有する4ヵ所のビルに菜園をつくる計画を立てました。その4ヵ所の菜園は、それぞれ伊藤園やキユーピーなどの大手食品企業とコラボレーションすることが、すでに決まっているそうです。つまり、いま東京の農地に期待されているのは、個人の趣味としての野菜づくりではなく、菜園を核としたコミュニティづくり、といえるのではないでしょうか。
小倉さんは、「まずは2020年の東京オリンピックを目標にしながら、お祭りとして終わらせず、それ以降も続いていくようなプロジェクトを考えたい」と言います。具体的には「2020ヵ所の農園と、2020人のアーバンファーマーの登録を目指す」そうです。
この2020ヵ所の農園には、小さなベランダ菜園も含めています。規模の大小に関係なく、それぞれの菜園がネットワークでつながり、交流していくことで、都市に田畑が点ではなく面として広がっていくイメージを、広く共有することがムーブメントにつながるからです。そして実際にイメージや情報を共有するには、AI搭載プランター「プランティオ」の持つ位置情報とクラウドデータの交通整理といった技術面、ソフト面でのサポートが、大きな役割を果たすはずです。
4月。UFCの活動本格始動への協力を呼び掛けるイベントには、SNSで情報発信しただけで100人以上が集まりました。当日は「何か楽しいことがはじまりそう」という期待と熱気が会場を包み、都市住人の「農的活動」への関心がここまで高まっていることに私自身も驚いています。
投稿者 noublog : 2021年06月10日 TweetList
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