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2021年04月08日
農のあるまちづくり8~テレビマンが農業に転職したわけⅡ.農業の創造力
【農のあるまちづくり7~テレビマンが農業に転職したわけⅠ】
に続いて。
テレビマンとしての経験が、農業に「本当の”クリエイティブ”とは何か」を見出させる。
以下、転載(「東京農業クリエイターズ」2018著:小野淳)
■メディアと農業、真逆のクリエイティブに賭ける
テレビ番組の視聴率1%は視聴者100万人といわれます。日本の人口から単純計算した数字ですが、インターネットで動画を観ることが、まだ一般的ではなかった頃、かなり大きなスピーカーであることはたしかでした。ドキュメンタリー番組制作の醍醐味は”知られざる宝の発掘”という面が大きく、視聴率10%の番組を作れば、小さな出来事が一気に日本中の知るところとなります。その意味では、フィリピンの現状や田鎖さんの取り組みを番組にしたことは意義のあることでした。
しかし、その一方で制作者である私は、形あるものを生み出す存在ではありません。それどころか六本木の会社で夜も昼もなく、会議が終われば即ゴミとなる大量の紙資料を作成し、放送が終わればビデオテープなど大量の不燃ゴミを捨て、食事といえば外食ばかりの典型的な消費一辺倒の日々を送っていました。
自分が世の中に向けて巨大なスピーカーで流すメッセージを、はたして自分自身は真摯に受け止めているのか。この疑問を無視できなくなっていったのです。
もうひとつ、田鎖さんから感じたことがあります。大きな課題にエネルギッシュに立ち向かい続ける原動力のひとつが、「農業のおもしろさ」ということ。「土の力、太陽の力、そして水さえあれば資源がぐんぐん育つ!」という農業の創造力、そして身近にあるものを使った創意工夫で農場を切り盛りしているさまは、純粋に楽しそうでもありました。
地上波テレビ番組の制作予算は、30分番組(コマーシャルを抜けば23分程度)でも、1本につき数百万円から1000万円以上になります。なのに放送後の番組は、ほとんど再放送されることなく倉庫に眠ります。一方、田鎖さんの農場では、鶏糞などで堆肥を作り、ニームなどの農産物の煮汁を使ったり栽培法を工夫することで、病害虫に対処する方法を編み出し、それを普及させていました。肥料代や農薬代にお金を使うことなく、人々の日々の糧を生産しており、そこには自分の環境とは真逆のクリエイティビティがあるように見えたのです。
このとき、ちょうど30歳。結婚したてのタイミングでしたが、このモヤモヤを抱えたままテレビの仕事を続けるより、ひとまず飛び込んで、その世界の人間になってしまおうと思い立ちました。
投稿者 noublog : 2021年04月08日 TweetList
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