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2020年05月12日

キューバ:食料・エネルギー危機から生まれた、都市型有機農業と省エネな暮らし

今回は世界に、目を向けて、国を挙げて、農業とエネルギーの自給に取り組む 太陽と情熱の国キューバのお話です。

過去の歴史を紐解くと、キューバは、大国 米国とソ連の間に挟まれ、翻弄されてきた歴史があります。1991年、冷戦が終結し、ソ連が崩壊してから東欧諸国からの援助もなくなり、更に、米国の経済制裁が加わって、最悪の経済危機に突入することとなりました。

絶体絶命の状況下にあって、彼らはどう生き抜いていったのか?食べるもの(農業生産)をどうやって、獲得していったのか?

キューバは知恵と工夫でその危機を乗り越える独自路線を歩み続け、現在も社会主義体制を堅持しています。  では、転載開始します。【リンク

 

■食糧・エネルギー危機で苦境に陥ったキューバ

カリブ海に浮かぶ最大の島・キューバでは、11万平方km(日本の本州の約半分)の国土に、約1,100万人の国民が暮らしています。美しい海と緑に恵まれ、気候も温暖なキューバは、年間約200万人の観光客が訪れる人気の渡航先です。 1950年代の「キューバ革命」*1以降、ソビエト連邦(ソ連)や東欧に接近し、社会主義路線へ転換したキューバ。当時は、エネルギー資源や生活物資、そして食糧のほとんどをソ連や東ヨーロッパなど社会主義国からの輸入に頼っていました。しかし、1991年のソ連崩壊によって東側諸国の国力が軒並み衰退し、さまざまな資源や物資の輸入が困難になり、さらに米国の経済制裁が加わって、最悪の経済危機に突入することとなりました。2001年には、ローマ法王の提言により、食料や医薬品などの人道的物資に限り米国からキューバへの輸出が認められるようになりましたが、経済封鎖は続きました。そして、2015年には米国との国交正常化交渉が始まりましたが、この四半世紀の間、わずか140km先にある米国との間で、石油や車・食糧など、ありとあらゆる経済的な交流が断たれていました。そのような逆境の中、キューバは突然の食糧危機やエネルギー危機をどのように乗り越えていったのでしょうか。

*1 1959年にキューバで起こった、カストロやチェ・ゲバラなどによる当時のバティスタ独裁政権の打倒と、その後の社会主義革命。ラテンアメリカで最初に成功した社会主義革命であり、米国に大きな脅威を与えた。

 

■エネルギーを使わない都市型有機農業を推進

1991年のソ連崩壊後の経済危機により、キューバには、従来の石油輸入量の50%以上と輸入食糧のほとんどが届かなくなりました。特に、食糧はこれまでは約6割を輸入に頼っていたため、国民の平均カロリー摂取量は3分の1にまで落ち込んでしまいました。そこで、食糧を国内で生産するために政府が推奨したのは、有機農業による野菜の増産でした。 それまでのキューバの農業は、トラクターなどの農業機械を使う大規模農業が中心でした。しかし、石油不足の影響でこれらの機械を利用できなくなったため、農場ではトラクターを牛に替え、牛に農器具をつけて土を耕す畑作りが始まりました。また、従来使っていた化学肥料・農薬も石油由来のものが多く、ほぼ使用できなくなりました。そのため、キューバでは、より少ないエネルギーで賄うことができる持続的な農業スタイル「パーマカルチャー」*2にシフト。たとえば、化学肥料の代替品として、生ゴミや牛の糞などから作ったたい肥を活用したり、植物の抽出液などを使った害虫防除などに取り組みました。さらに、食糧消費の多い都市でも野菜栽培の普及に力を入れました。食糧不足だけでなく、作物を農場から都市へ輸送するための燃料も不足していたため、首都ハバナを中心に中庭や屋上、駐車場などを耕し、都市農園へと転換させていきました。その結果、首都ハバナだけでも3万ヘクタールを超える農地が生まれ、ハバナで消費される野菜の約半分を自分たちで生産することができるようになったのです。

*2 自然や生物の仕組みに沿ったサステイナブルな環境デザイン。オーストラリアのビル・モリソンらが構築し、パーマネント(永久な)とアグリカルチャ-(農業)あるいはカルチャー(文化)を組み合わせた造語。

 

■バイオマス・風力・水力などの再生可能エネルギーへのシフト

ソ連崩壊後のキューバでは、食糧危機だけでなく、石油不足によるエネルギー危機も大変深刻でした。石油不足の影響で火力発電所が稼働できないため停電が日常茶飯事となり、1日最大16時間の停電が続くこともあったほどです。 そこで、キューバの人々は、再生可能エネルギーの活用に舵を切りました。石油の輸入停止を契機に、石油だけに頼るエネルギー政策から、バイオマス・風力・水力・太陽光・太陽熱など、地域がもつ自然資源を使ったエネルギーへの移行が進んでいったのです。中でもキューバらしいのが、同国の主要産業のひとつである砂糖の製造の際に大量に生じる「サトウキビの搾りかす(バガス)」を使ったバイオマス発電です。現在では、ほとんどの製糖工場がバガスを使った発電を行っており、国内全体の電力エネルギーの30%を賄っています。また、風力発電に適した場所が多いため、国内のほぼ全州に8,000以上の風力発電が導入されました。中には、いくつかの風車が集まるウインドパークを構成しているところもあります。その他、小河川が多い山間部では小規模水力発電システムが設置され、学校・診療所・コミュニティセンターなどの一部には、太陽光発電システムが備わり、コンパクトな太陽熱温水器・太陽熱乾燥機が導入されていきました。

 

■1人あたりの年間消費電力は米国等の1/10 持続可能な暮らしのヒント

キューバでは、再生可能エネルギーの導入とあわせて、エネルギー使用量の抑制にも力を入れています。たとえば、エネルギー効率の良い電球や家電の普及、送電ロスを減らすための送電線や変電所の屋外変圧器や旧式ブレーカーの取り換え整備などが挙げられます。 そして、市民への省エネに対する啓蒙・教育にも、国を挙げて取り組んでいます。特に、若い世代への教育を重視する同国では、省エネ教育にも力を入れ、小学校では多くの授業でエネルギー問題を扱うようになり、大学でも省エネに関する修士課程があるほどです。また、国道や高速道のロードサイドでは、市民の省エネ啓蒙のための立て看板も目に入ってきます。このような国を挙げての取り組みの結果、キューバでは、国民への省エネ意識の定着に成功。現在では、米国など先進国に比べて、1人あたりの年間消費電力は約10分の1*3と極めて小さく抑えられています。同国では、突然の経済危機をうけ、必要に迫られて都市型有機農業を導入することになりましたが、現在ではラテンアメリカなどを中心とした農業研究者が視察に訪れるほどの発展を遂げることができました。また、再生可能エネルギーの活用や省エネ推進のための各種施策も含めて、持続可能な新しい取り組みとして認められるほどになったのです。日本も、食糧自給率は4割程度*4と低く、エネルギー自給率はわずか6%。危機を乗り越え、自然と共生した農業やエネルギーへと移行したキューバの取り組みは、日本が抱える課題解決のためのヒントになるかもしれません。

*3 国際エネルギー機関(IEA)2011年度 *4 カロリーベース

以上転載終了

 

■まとめ

こうしてみますと、キューバは、既に自主自立、自給自足の道を進み、世界の先端の持続可能な都市型有機農法や、植物や自然を活用したエネルギーの自給など、知恵と工夫で経済危機を乗り越えてきた力強さがあります。

生産したものは、最後まで利用し、太陽や風や水をエネルギーに変え、全ては、地球からいただく恵みを循環のサイクル中で、人も自然も持続し共生していくといったダイナミックな適応のかたちで生きぬいている実現態とは言えないでしょうか?

これからの農業の新しい取り組み事例としてキューバの事例は、非常に可能性があると思います。では、次回もお楽しみに

投稿者 noublog : 2020年05月12日 List   

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