『生命の根源;水を探る』シリーズ-2 ~水の持つ驚異のエネルギー~ |
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2014年11月10日
微生物と植物の協働関係を進化史から探る2~外敵に対する適応反応は【前共生段階】なのでは?~
前回は【微生物と植物の協働関係を進化史から探る】のプロローグをまとめましたが、今回はプロローグでも問題意識として提起した【植物は動けないor 動かない⇒共生は重要な生存戦略では?】について追求していきたいと思います。 まずは、植物の存在戦略に入る前にそもそも植物の成長に対して外圧となっているものは?ついて見ていきたいと思います。
植物にとっての外圧は大きく分けると以下の3つがあります。
(1)病気・・カビや細菌、ウイルスによる病気
(2)虫害・・イモムシやアブラムシなどの虫類による費害
(3)生理障害・・栄養失調、栄養過多、低温・高温障害など
今回は微生物と植物の協働関係を進化史から探るシリーズということで微生物と関係が深い病気について掘り下げていきます。
植物の病気はカビやバクテリア、ウイルスなどの侵入によって引き起こされます。植物の周りには普段からたくさんの雑菌がいますが、ほとんどの雑菌は植物に侵入することができません。生きている植物にはちゃんと防御機構があって、雑菌等の侵入を防いでいるからです。 しかし、上記のような防御機構があるにもかかわらず、植物に侵入して害を与えることができるものもいます。これは「病原性がある」と言います。ただし、これらのものが植物に侵入できるかどうかは、気温や湿度、植物の状態など様々な要因に左右されます。植物と病原菌等は常にせめぎ合っており、植物の防御機構が病原菌等の病原性に負けたときに発病するのです。
○糸状菌(2μm以上)
糸状菌は、分枝した糸状の菌糸体で栄養成長する微生物(菌類、カビ)で、その形状から糸状菌と名づけられています。細菌による感染症が中心の動物とは異なり、植物の病害はその8割前後は糸状菌によるものです。糸状菌は常に植物の周辺に存在していて、 温湿度が高いと繁殖しやすくなり、葉、茎、果実と地上の植物のどの部位でも繁殖します。一般的な例としては、イネのいもち病、ネギのさび病、梨やリンゴの葉につく赤星病が挙げられます。
○細菌(1~2μm)
細菌は、土壌中に生息しており、植物の根から吸収されて感染する場合と、土が葉や茎に付着して感染する場合があります。同じ植物を何年も栽培していると、感染しやすい細菌が増殖しやすくなります。それで、土壌中の細菌は連作障害の要因の一つでもあります。
○ウイルス(20~970nm(0.02~0.97μm))
植物病原ウイルスは、核酸(多くは1本鎖RNA)とそれを包む外皮蛋白質(殻)から構成されます。また、植物病原ウイルスは、植物に自分で侵入する機能をもたないので、昆虫・土壌微生物による媒介や感染した植物の栄養繁殖(球根、挿し木など)、体内にウイルスを持った虫が、植物の汁を吸収する時などにより感染・伝染します。
こうした植物の病害を引き起こす病原性のある悪玉菌に対して、善玉菌も存在しています。その中の一つに生物防除微生物と呼ばれているものがあります。 例えば、トマトの青枯病にはピシウムオリガンドラン菌(PO)菌という微生物が有効で、生物防除微生物として働いています。PO菌を根に定着させると、ジャスモン酸とエチレンという植物ホルモンが情報伝達のスイッチ(触媒)となって眠っていた植物の防御システムを作動させることで抵抗力が高まるのです。
善玉菌にはその他にも、麹菌・納豆菌・乳酸菌・酵母菌が存在します。
<麹菌>
発酵のスターターで、カビ(糸状菌)の仲間です。微酸性の分解酵素を出して、アミラーゼでデンプンを、プロテアーゼでタンパク質を、リパーゼで脂肪を分解します。しかし、麹菌は主として、炭水化物を分解して、ブドウ糖、果糖などの単糖類にする。これらの糖は、次の段階で働く菌類のエサとります。
<納豆菌>
細菌の仲間。集団になると、白いコロニー(塊)のように見える。納豆を作る時に働く菌で、ネバネバの分解酵素を出して、大豆タンパク質をアミノ酸に変える。アルカリ性を好み、自らもアルカリ性の分解酵素を出しながら殖える。タンパク質、脂肪、炭水化物を分解する。硬いセルロースも分解する(枯草菌も)。病原性のない有用菌で、納豆菌液を葉面散布すると、植物の表面(葉や茎)を覆って、病原菌が付着できないようにしてしまいます。
<乳酸菌>
細菌の仲間で麹菌や納豆菌の作った糖をエサとします。分解は得意ではなく、乳酸などの有機酸をたくさん出します。乳酸はpH2.0位の強酸なので、強力な殺菌力があり、雑菌を駆除し、次に働く酵母菌のための下準備をします。 乳酸菌の出した有機酸は、土の中の不溶性のミネラルを溶かしたり、キレート化したりして、植物に吸収されやすくします。有機酸が作物に吸収されると、体内の体液を調整して耐病性を高めたり、長雨でも水ぶくれしたりしない体質にします。
<酵母菌>
他の菌が分解した有機物を、再合成してアミノ酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸などを作ります。必須アミノ酸も合成する合成屋で、酸素がない時には、アルコールを作るので、肥料を作る時には切り返して、酸素を入れることが必要です。
病理学上は病原体が接触侵入する「感染」から病原体が増殖蔓延する「発病」という過程は植物も動物も変わりません。しかし、植物の方が動物に比べて微生物との共生によって進化を促進している可能性が高いです。これは動けないが故に植物がDNAの変異を促す為にウイルス類を積極的に取り入れている(=共生を図ろうとしている)と言えるのではないしょうか。 一般的に我々は植物が病原体に接触した場合、微生物から攻撃を受けてそれを防御しているという視点で見がちですが、上記の視点で捉えると外敵に対する適応反応は【前共生段階】とも言えます。普段病気と捉えている現象も実は、変わりゆく自然環境への適応戦略として植物が変異を求めて微生物と共生関係を結ぼうとしている現象なのだと捉えると、単純に病気を無くす農薬(化学物質)与えることが全てではなく微生物との共生を促す農法を追求していく必要があるのではないでしょうか。
投稿者 noublog : 2014年11月10日 TweetList
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