『農業革命;未知なる乳酸菌』シリーズ-2 ~食に関する乳酸菌~ |
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2014年07月31日
農を身近に★あぐり通信vol.26:地域の有機栽培を再生する追求農家集団「へんこ」
3人に1人が癌にかかる時代。
現代病が蔓延する健康の有り様、国内の衰退する農業の問題などに対して、誰よりも高い志を持って解決していこうとする方々が立ち上がりました。そして2010年、地元9名の発起人によって、「へんこ(伊賀有機農業推進協議会)」が設立され、発起人の1人である村上氏が2012年に伊賀ベジタブルファーム株式会社を設立されています。
有機農業が盛んな伊賀のまちですが、「安全安心」を超えた高い志、そして、それを実現するための深い追求姿勢に、農と食・健康に関わるすべての人にとってたくさんの気づきがあると感銘を受け、ご紹介させていただきます。
■有機農業を守り、広める「へんこ(伊賀有機農業推進協議会)」
「へんこ」は有機農業が盛んな伊賀の農業推進協議会です。「へんこ」とは、「こだわりを持った人たち」ということから名づけたようで、単なる有機農業ではなく、自然の摂理について本気で考え実現しているその姿を表わしているようです。
忍者で有名な「伊賀」ですが、 この地域は隠れた「有機農業」のメッカです。
三重県伊賀市・名張市周辺での有機農業の取り組みには 40 年以上の歴史があり、生産者の数も 40 軒を超えます。
ところで、「有機農業」というと、みなさん、どんなイメージを持たれるでしょうか?
実際にお米や野菜を買っていただく方は、化成肥料や農薬を使っていない、「安全」で「美味しい」農産物、と理解されているかもしれません。でも、生産者の側から言えば、それはむしろ 「結果」でしかないのです。有機農業に取り組んでいる生産者は、皆、なんらかの「こだわり」をもっています。
農薬を使って生態系を乱さない、とか、自然の循環がスムーズにいくように、とか、化石燃料・エネルギー資源を無駄遣いしない、とか、自分の食べるものはできるだけ自分でつくる、とか、ただ楽すればよいのではなく汗かいてナンボ、とか、「こだわり」には色々なものがあります。
いずれにしても、有機農業に取り組む人を見ていると、 自分だけ良ければいいとか、ただお金を稼げればよい、と考えている人は、ほとんど見当たりません。それはなんとも気持ちのよいくらいです。
こどもたちのため、地域のため、地球のため、未来のため。それを本音で考え、口だけでなく現場でひたすら実践しているのが「有機農業」に取り組むなかまたち。
貧乏だろうと、日々働きづめだろうと、 笑ってガハガハと、そしてコツコツと、晴れの日も雨の日も、田畑に出てはたらきつづける。
最近のことばでいうと「エシカル<倫理的>」。それがぴったりくる気がします。現代社会のなかで「正しさ」を貫くのはそんなに簡単じゃない。
それを敢えてやる変わり者たち、関西の言い方でいう「へんこ」な人たち、伊賀の有機農家はそんな人たちばっかりなのです。
「へんこ(伊賀有機農業推進協議会)」について
■原理論を追求し、公開する
農産物の生産だけでなく、有機農業を普及・支援するための公開講座も積極的に実施されています。下記のように、理科の授業を深くしたような、原理論から追求されており、ノウハウではなく、自然の摂理を科学的に肉体化され普及している姿勢からも、多く学ぶところがありますね。また、料理教室では、生産者の方が作った野菜を一緒に料理するという「生産者と消費者をつなげる活動」も実施されています。
HPでは、資料はムービーもありますので、深い内容をぜひご一読ください。
2013年 有機農業のための理科勉強会 <春> 資料
第1回 植物生理編① 光合成と有機物
第2回 植物生理編② 植物体内の物質循環
第3回 様々な元素の働き、PH の意味、欠乏過剰症の診断
第4回 窒素の形態変化、有機態窒素の肥効、 施肥計算
第5回 CEC と塩基飽和度、ミネラルバランスの計算方法
第6回 有機農業のための施肥設計・実践演習H25.5.25 生産者技術交流会の記録(圃場見学編)
第Ⅰ部 福広農園(名張市)圃場見学会(このページ)
第Ⅱ部 新しい土壌分析技術の紹介H25.5.25 生産者技術交流会の記録(新しい土壌分析紹介編)
①地力測定プロジェクト(可給態窒素の簡易測定)
堆肥の肥効に関する過去の講義資料(2011年5月)
②立命館大学SOFIX●料理教室
生産者が自分で作っている野菜を持ってきて、その野菜を使って、生産者とお客さんが一緒に作ると言う料理教室です。
料理方法も知れるし、野菜の作り方やどんな人が作っているのか知れると言うダブルに嬉しい企画になっています。
料理を教えてくれるのは、『生命いきいき料理教室』主催の猪飼久子さんです。いつも、「こんな使い方あるんだ!!」と言うようなその野菜の個性を活かすレシピを教えてくれます。
■「伊賀ベジタブルファーム」:有機農業をもっと科学的に
「農業って自分のボロを絶対隠し通せないんですよ。天気にやられてしまったり、ちょっとのミスが関係して生産がまったくできないことがあるし、自分が頑張ってもどうしようもできない部分がある。これまでみたいに自分の上に仮面をかぶっては働けないんです。」と語る村上さんですが、上記のような、理論だけでなく、エンジニア出身という技術を活かして、農業に科学を取り入れ、自然を読み力を活かした生産性の高い農業を目指されています。
村山さんの有機農業に対するスタンスは、いかにも元エンジニアらしい計画的で科学的なものだ。野菜の品質保持と安定した生産のため、土壌や作物体に関する数値計測・分析を行ってデータを蓄積し、そこから合理的な栽培方法を産み出していく。また、原価計算に基づいた価格設定の考え方を取り入れたりと、他産業の経営手法を農業の世界に積極的に導入している。
現場では、植物生理・土壌肥料学などの科学的知見をもとに、自家製ボカシ(堆肥)を使い、ミネラルバランスなどを調整する施肥設計を行っている。有機肥料は即効性のある化成肥料と違って、いつどのくらい効くのか見定めが難しいという。農家がこれまで職人的な経験と勘に頼ってきた部分を科学的根拠により裏付けることで、少ないキャリアでも有機栽培による安定した生産が可能になる。
また、化学合成農薬を用いないため、虫や病気、雑草対策は大きな課題になる。有機栽培では被害を受けてからではなく、未然に防ぐことが大切。そこで、何よりも植物の健康を保つために、「適正な」施肥を心がけている。そして、畑には防虫ネットを張り、こまめに除草し、ダニなどのエサとなる収穫残渣を残さないようにするなどいくつもの手間をかける。虫が嫌がる朝の光の色を再現する黄色蛍光灯を畑に設置したりと、新技術の導入にも力を入れている。
「伊賀ベジタブルファーム」より
有機野菜の「安全」「おいしい」は結果で、その想いの背景には、地域や社会を見据えている「へんこ(伊賀有機農業推進協議会)」と「伊賀ベジタブルファーム株式会社」。
現在の社会の不整合さを皮切りに、地域社会や農業を解決するという高い志を持ち、理論追求と普遍的な農業普及によって貢献されている理由が非常に良く分かります。私たちも農業に関わる、関わらないに限らず、社会の成員として、目的意識の必要性と追求力が必須の時代になったことをひしひしと感じます。
投稿者 noublog : 2014年07月31日 TweetList
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