企業から始まる自給自足の道シリーズ~「大規模経営から地域密着型経営へ」~ |
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2012年02月28日
シリーズ8 農が育む新しい教育シリーズ~エピローグ~「教育の再生」と「地域の再生」は一体の課題
これまで7回にわたって 「農が育む新しい教育シリーズ」を事例を中心に紹介してきました。
各々の現場ではどのような教育を実践し、どのような成果につながっているのでしょうか?今までの内容を振り返ってみましょう
分析・追及する視点として
シリーズ1 ~プロローグ~では
①仲間との充足度
②親の囲い込みからの脱却度
③生産圧力と社会的役割意識の形成度
④経営的には成り立つのか
⑤生徒募集の方法
⑥地域密着度と評価
とまとめました。これらのことを念頭に各記事の内容をまとめました。
これからも当ブログ「新しい農のかたち」をよろしくお願いします ポチッ
シリーズ2 ~農を通した人間教育 愛農学園高校~
愛農学園は、40年以上の実績を持つ 日本で唯一の私立の全寮制農業高校です。ここでは、農を通した人格形成に主眼を置いています。自給自足を実践することで、食の大切さ、有難さを学びます。また、 先生も生徒も、寝食、仕事、勉強を共にすることで、深い親和充足関係をベースとした人間関係を築き、日々の課題や活動の目標を共有する上で約に立っているようです。 |
シリーズ3 ~農村留学 大地の学校~
大地の学校は、農村生活を体験するために開いた全寮制の私塾です。親も了承済みで、長期間親元に帰らず、学校へもここから通います。最初は、思い通りにならないことへの反発もありますが、様々な年代の仲間達と、農業の仕事や課題、さらに、遊びにも取り組む事で、徐々に周りのことを捉えられるようになります。つまり、自然や仲間を通じた場と圧力が、子供たちは自然と社会性を育み、主体的に物事を考えられる子供に育て上げていくのです。 |
シリーズ4 ~子供の人格形成は、遊びや行事を通じた仲間関係から始まる~きのくに子どもの村~
きのくには、戦後初めて、農業を教育の基本に自由な学校をつくることで、学校法人として認可された学校です。授業のほとんどは、遊びやクラブ・学校行事を通じた仲間関係づくりにあてられます。また、子供たち同士で、自分達の生活にとって必要な事は議論を重ね、全員合意のもとで決定していく自主管理運営を実践しています。子供たちにとって、遊びは現実の課題であり、仲間から期待され、それに応える力を身に付けることが現実の課題を突破していく力になるのです。 |
シリーズ5 ~廃校活用は、人と地域の充足=活力再生~フリースクール土川学園~
少子化、過疎化によって増加した廃校を活用し教育の再生に取り組んでいます。一家庭の価値観で子育てするのではなく、自然豊かな土地で、職員も経営者も地域の人も多くの人が子供にかかわり、みんなが充足することで、こどもも健全に育てようという取り組みです。また、ここは㈱育児サポートカスタネットという企業が運営しています。しっかりした経営母体を持つ企業が学校運営に関わることで、地域からの信頼も厚く、地域の再生にもつながると考えられます。 |
シリーズ6(番外編)~学校づくりに必要なことってなんだろう?~
学校づくりには、文部科学省大臣や都道府県知事の許可の他、様々な書類提出や、各種審議会の合意が必要です。しかし、最も大きな壁は、地域住民の合意です。社会の統合原理が共認原理へと転換した今、住民からの声は行政にとって絶対であり、地域の信頼を得ることが運営主体側の最大の課題です。農や基盤とした教育の実践とは、その地域の自然や作物を生かすだけでなく、長年人々に育まれた人的資源を活用することでもあり、地域再生と共に、将来、地域の担い手となる人材を育成することにもつながります。
シリーズ7 ~畑が人を育てる タキイ研究農場付属園芸学校~
最後に企業が本格的に次代の農業を担う人材を育てようと取り組んでいる事例です。ここでは、農を通して自然や植物に向き合うことと、寮生活を通して24時間生産(研修)活動や生活(仲間)に向き合うことが同時に行われ、常に対象=相手を主体として物事を考える力を養います。社会の厳しい外圧に適応してきた企業だからこそ、どのような人材が必要かを理解し、それが教育現場での課題となります。機械に頼らない農業を通して自然や植物のことを知ること、或いは、寮生活を通して仲間と向き合うことなど、徹底して相手発で物事を考える力を育てています。 |
■まとめ
シリーズを通して明らかになったことは、自然(植物)に向き合うこと、さらに寮生活のように仲間に向き合う場があることが、従来の学校教育に比べ、遥かに子供を成長させる効果があるということです。
中でも注目すべき点は、 「遊びの効用」です。以下、「こどもの遊びは、充足発の実現思考」より引用
豊かさが実現され、生存圧力が弛緩すると、闘争の実現可能性よりも充足の実現可能性の方が大きいので、人々がそちらに向う結果、闘争よりも充足の方が価値が高くなる。
こども達は、放って置いても皆で勝手に新しい遊びやルールを発明してしまう。その発想はとても柔軟で創造性に富んでいます。
別にこども達は、今のルールや遊びに対する不平不満があるという訳ではなく、純粋に「こっちの方が面白い」「こっちの方がみんなが楽しめそう」という充足可能性でもってどんどん発想の枠を広げて行くのだそうです。
子どもから遊びを奪ったのは、戦後の工業化・都市化です。さらに、人々は機械や便利なサービスなどを利用するようになり、他者に依存した生活をすることを余儀なくされてしまいました。
自分では作らない、自分では考えなくても済むような生活が当たり前になり、自給・自活することのない生活は、人の自立を決定的に妨げているのではないかと思います。
今回、遊びの復活や自立を促す場として注目したのが「農」です。 「農」は教育だけでなく、「人々の健康を支える機能」、さらに「雇用創出」など、様々な可能性を秘めています。現在、「節電」や「もったいない」の言葉に象徴されるように、人々は利便性や快適性よりも安心や安全に意識が向いています。さらに、お金や身分よりも、「やりがい」や「役に立つ仕事(役割)」を求める若者が増えていることからも 「農」への期待は高まるばかりです。
しかし現在、 地方の「農」の現場は活力が衰弱し、自力での再生は困難です。つまり、教育の再生と地域の再生は一体の課題だと捉えられます。そこで考えられるのが企業の「農」と「学校運営」への参入です。 企業にとってみても、次の世代の人材育成、或いは、産業を育てていくことは、生き残っていく為の基盤づくりでもあり、今後、やりがいのある仕事になるに違いありません。
今回は、農が育む「教育の再生」を中心に扱いました。次回以降は「地域の再生」 について、農はどのような役割を果たすのか?について更なる追求をしていきたいと考えています
投稿者 staff : 2012年02月28日 TweetList
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