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2022年04月08日

シリーズ『種』4:品種改良技術の歴史②~最先端の遺伝子組み換え・ゲノム編集技術~

前回の投稿では、農作物の品種改良技術の歴史を遡り、「異なる作物を交配させて、より良い作物を作るF1種の技術」について詳しく見てきました。

今回の投稿では、さらに技術進化させ、現代農業の最先端の遺伝子組み換え・ゲノム編集技術について見ていきます。

トウモロコシの起源となる植物(左)と、トウモロコシ。

品種改良を繰り返して、現在のカタチになった。

画像は、こちらからお借りしました。

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■作物の特性を決めているのはDNA(遺伝子)

最先端技術の一番根底的な考え方としては、「作物の性格を司っているのはDNA(遺伝子)」であるという認識があります。

例えば、作物の大きさや、実の甘さや、病原菌に対する抵抗力など。これら力を発揮させている設計図こそが、「DNA(遺伝子)」です。

 

前回の投稿で紹介した、異なる作物を交配させF1種の技術も、根本的な考え方は同じです。互いの良いDNAを混ぜ込むことによって、より良いDNAを発現させているのです。しかし、この技術の課題は、新しい品種として定着させるには数十年かかり、多くの手間・期間がかかります。

最先端の遺伝子組み換え技術・ゲノム編集技術では、「人為的にDNAを変える」という発想のもと、人為的にDNAを発現させたり、組み替えたり、切除したりすることで、作物の特性そのものを変えてしまう。人為的に変えてしまうわけですから、手間も期間も大幅な削減を実現しています。

 

■遺伝子組み換え・ゲノム編集技術の仕組み

具体的な仕組みについて、少し見ていきたいと思います。

遺伝子組み換え技術は、作物を構成するDNAに、有効なDNAを「組み込む」技術です。

例えば、「病気に強い作物を作りたい」と考えた場合。

最初に、病気に強い作物を探し出し、その作用を働かせている有用なDNAを特定し、切り出します。

次に、強くしたい作物から細胞の核からプラスミドと呼ばれるDNAを取りだし、切り出した有用なDNAをくっつけるのです。

そして、元に戻して培養し、組み替えられたDNAを増やし、子孫を作るという方法を取っています。

画像は、こちらからお借りしました。

この技術を用いて、1994年に世界で初めて日持ちのよいトマトが販売されました。以降、次々遺伝子組み換え作物は広まり、現在、世界の大豆の8割、トウモロコシの3割、ワタの8割は遺伝子組み換え作物となっています。

 

もう一つのゲノム編集技術というものは、分かりやすく言うと、DNAの一部を切り取ってしまい、「DNAの作用を働かせなくする」技術です。

例えば、毒を排出するDNAを抑制し、毒素を出させなくする。

大きさを調整するDNAを抑制し、太らせた作物をつくる。

タネを作る遺伝子を抑制し、タネ無し作物をつくる、などを容易に実現することができるのです。

人間の神経抑制させる物質を増やしたゲノム編集トマト。

画像は、こちらからお借りしました。

 

■今や農業は、DNA組み換え作物の争奪戦
このように見ていくと、農作物の性質は、遺伝子組み換えでいかようにもなる時代になっています。おいしいもの、大きいもの、形のよいもの、病気に強いもの、成長が早いもの・・・これら全て遺伝子を組み替えることで実現できるのです。

そして、最先端の技術は、これまでの農業とは全く異なる生物・バイオ技術を持つ企業が台頭し、全く新しい農の流れが作られつつあります。

そして、市場ニーズの期待に応える、DNA組み換え作物をいち早く作り出した企業が勝つ。市場を制し、農業を制する時代が来たとも言えます。

非常に高度な技術へと進化している現代。遺伝子が組み変わった場合、原点となる「タネ」は問題ないのでしょうか?

次回以降は、改めて「タネの仕組み」≒生命原理について見ていきたいと思います。

 

■参考投稿
変異創生技術の歩み
【知識/技術】担当者が知っておきたい遺伝子組換え作物の知識②(遺伝子組換え技術)
ゲノム編集技術の社会実装と農林水産業の未来像

投稿者 hasi-hir : 2022年04月08日 List   

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