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2021年08月14日

【細胞農業連載】③日本におけるさまざまな取り組み

この間、細胞農業について紹介してきました。今回は、現在国内で細胞農業に取り組んでいる団体を見ていきたいと思います。

さて、このような新しい研究開発をしている組織を思い浮かべますと、大学組織があがりますが、実際はどうなのでしょうか?先に、この寄稿文を読みますと、非常に様々な組織や団体がかかわっているようです。では・・・・リンク

転載開始

さて、前回は細胞農業がなぜ注目されるのか、代替タンパク質市場という観点から説明しました。今回は、世界で新しい代替タンパク質源が注目されつつある中、細胞農業の分野では日本でどのような取り組みがなされているのかを見ていきましょう。

◆しょーじんみーとぷろじぇくと?

前回、前々回と細胞農業について紹介してきました。記事内の画像がいくつかあったと思いますが、それらの写真の引用元は”Shojinmeat Project”となっています。このShojinmeat Projectとは何のことでしょう?実は、これは有志団体、同人サークルの名前なのです。こちらにwebsiteがあり、そちらの説明によると、

Shojinmeat Projectは、純肉やバイオの技術が特定利益ではなく民意によって使われるように、

1.一般の方も使えるバイオ技術の開発

2.誰もが各分野から参画できる開かれた対話を軸とした活動をしている、

有志団体・同人サークルです。

とのことです。

ずばり、培養肉やDIYバイオなどに興味のある人たちが集まり実験や情報交換をする緩めのサークルです。

日本で初めて培養肉に取り組んだ団体で、現在までに様々な活動をしています。このShojinmeat Projectの創始者は羽生雄穀さんで、後ほど紹介する、細胞農業に取り組む日本唯一の会社、Integriculture, Inc(以下、インテグリカルチャー)のfounder & CEOでもあります。日本で培養肉と言えばこの人と言っても過言ではないでしょう。

Shojinmeat Projectは誰でも参加することができます。毎週火曜日の20時頃に渋谷のFabCafe 2Fでみんなで集まってわいわい楽しんでいるので、ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか。また東京近辺にいなくてミーティングには参加できないけど活動の様子を知りたい!という方も一度Shojinmeat ProjectのTwitterやemailに連絡してみると良いかと思います。筆者もShojinmeat Projectのメンバーの1人であり、私に連絡していただいても構いません。

◆企業の取り組み 

先ほども触れたように、日本で細胞農業に取り組んでいる企業は、記事執筆現在、インテグリカルチャーの1社のみで、中心的な存在であると言えるでしょう。

それ以外には、インテグリカルチャーや大学の研究室との共同研究という形で、事業の一部として細胞農業、培養肉に取り組む大企業が複数社あるといった具合です。食品グループが多く、具体的には、日本ハム株式会社(インテグリカルチャーと共同研究)、日清食品グループ株式会社(東京大学生産技術研究所竹内研究室と共同研究)などが挙げられます。

インテグリカルチャーは複数の大学(東京女子医科大学清水研究室、鹿児島大学、信州大学)と共同研究している他、その取り組みの一部は、JAXA宇宙探査イノベーションハブのプログラムに採択されています。

個人の見立てですが、インテグリカルチャーは非常に良い取り組みをしており、今後の細胞農業界での活躍が期待される一方、日本全体で1社しかない現状はいささか寂しいものだと考えています。もちろん投資環境の違いなどはありますが、アメリカでは数十社もの企業が取り組んでおり、次回述べるように日本の細胞農業市場の将来性も鑑みると、どんどんプレーヤーが増えていってほしいと考えています。

◆大学での研究も増加 

嬉しいことに、有志団体や企業だけでなく大学でも細胞農業に取り組む研究室が増えてきました。特に注目すべきは、JST国立研究開発法人科学技術振興機構未来創造事業のプロジェクトの探索加速型「持続可能な社会の実現」領域 の1つとして「将来の環境変化に対応する革新的な食料生産技術の創出」が現在進行中であることです。

このテーマには複数の大学の研究室による培養肉研究が採択されています。

藻類と動物細胞を用いた革新的培養食肉生産システムの創出  リンク 

  – 清水達也教授(東京女子医科大学大学院)

3次元組織工学による次世代食肉生産技術の創出  リンク

  – 竹内昌治教授(情報理工学系研究科・生産技術研究所)

筋サテライト細胞とオルガノイド培養法の融合による革新的食肉培養法の開発  リンク

  – 赤澤智宏教授(東京医科歯科大学大学院)

組織工学技術を応用した世界一安全な食肉の自動生産技術の研究開発  リンク

 

JST主催で11/15~17に開催されたサイエンスアゴラ2019ではこれらに関連したセッションがありました。前回の記事で告知しましたが、サイエンスアゴラ2019は、科学とヒトの未来について考えるJST主催のイベントであり、数あるプログラムの中、培養肉セッションや、Shojinmeat Projectによる培養液づくりの実演など、培養肉に関わるイベントも開催されました。今後、国からの研究費がどの程度、細胞農業や培養肉関連の研究に投じられていくのか注目していきたいですね。

◆NPO法人での取り組みもある! 

2019年10月に設立された細胞農業協会というNPO法人があります。こちらはShojinmeat Projectのメンバーを中心としてつくられた組織です。細胞農業が人々の理解と信頼のもとに社会普及することを目指すために、営利目的ではなく中立の立場で多くの人々が参画できる組織として設立された、とのことです。今後、学会の開催、教育事業、細胞農業の普及啓発事業等などをおこなっていくようです。

実はアメリカではNPO法人が細胞農業業界で重要な役割を果たしています。次回詳しく紹介しますが、New Harvestという2004年に設立された組織です。細胞農業(Cellular Agriculture)という言葉を使い始めたのもNew Harvestです。

細胞農業協会もNPO法人として細胞農業にどのように関わっていくかも注目したいところです。

以下の画像は、海外での細胞農業のエコシステムの例です。

さて、ここまで有志団体、企業、大学、NPO法人という視点から日本での細胞農業の取り組みを紹介してきました。より細胞農業業界や、培養肉の作り方について知りたいという方は、

Shojinmeat ProjectのSlideshare

Shojinmeat Projectのwebsiteの活動一覧

がおすすめです。非常によくまとまっており、幅広い内容をカバーしています。

日本規模で考えても、将来の食品安全保障等の観点から日本国内での細胞農業分野の発達は非常に重要であると考えています。少しでも興味関心を持ってくれる人が増えるだけでなく、自分も何らかの形で関わりたいと考えている人が増えてくれたらとても嬉しいです。興味を持った方には、同じように熱意のある人が集まる、Shojinmeat Projectに一度参加してみてはいかがでしょうか。

以上転載終了

◆まとめ

現在、日本国内の細胞農業は、インテグリカルチャーの主宰である羽生氏が、国内第一人者として活動しているのが実態のようです。彼は、細胞農業のサークルやNPOを立ち上げたり、企業との共同開発を行なったりと非常に幅広い活動から、国内における細胞農業の啓蒙活動も行っているようです。

細胞農業の取り組みは、外国と比較すると、国内では、かなり新しい分野であることは間違いなさそうですが、最近、特に注目すべきは、国立研究開発法人科学技術振興機構未来創造事業のプロジェクトの探索加速型「持続可能な社会の実現」領域 リンク の1つとして「将来の環境変化に対応する革新的な食料生産技術の創出」が進行中であり、医学系の大学を含む四つの大学が培養肉の研究を開始したという事でしょうか?

では、現在、世界の細胞農業はどのような状況になっているか?将来本当に人類そして地球環境にとって可能性があるのか?について紹介します。次回が最終回になります。それでは、お楽しみに・・・・

投稿者 noublog : 2021年08月14日 List   

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