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2020年12月24日

農と金融7~予測できない真っ白な明日を生きる

【農と金融6~「面」で生きる生産者、「点」で生きる都会人】
に続いて。

もはや形骸化した未来のために、いまを生きそびれている都会の大人と子どもたち。

予測できない真っ白な未来を思いっきり生きるために、
いまだ科学で解明できない世界が広がる自然の中に自分を放り込んでみる。
そうやって、生き物としての感覚を取り戻す。

 

以下、転載(「共感資本社会を生きる」2019著:高橋博之×新井和宏)

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■予測できない真っ白な明日を生きていく
高橋)生きる意味っていうのは、生きる意味を問うぐらい、言わば余裕があるともいえるじゃないですか。だって、余裕がなかった戦後は生きる意味なんて問える人はいなかったはずだし。

新井)日々、食べるのも大変だったからね。

高橋)そうそう。もちろん貧困、食べられないっていうのがどれだけ苦しかったかっていうのは想像を絶することです。一方で、衣食住は足りましたけど、いまは生きることの意味に悩みもだえるような若い人たちも増えている。いまの時代はいまの時代で、昔にはない苦しさとかつらさっていうのが広がっているような感じがしませんか?

新井)そうですよね。生きる意味自体を問わざるを得なくなってきている。豊かになった反動として、じゃあ、自分たちは何のための存在なのかっていうことを考えさせられ、でも都会に出ていてもそれを解くキーみたいなものはない。「こっちかな」と考えて動いてみるんだけど見つからなくて、さまよってしまう。
そういう人は地域に来ると違う角度からのヒントがあると思う。今回、秋田県に来て、すごく思いましたよね。菊池さんのご家庭を見ていて、子どもたちが幸せに育っている、いまを生きているなって感じました。子どもが、生きている。

高橋)キャリアアップも否定しませんけど、子どもたちの一番の宝って、真っ白な未来、何も決まっていない未来じゃないですか。だけど都会の子どもとかは塾だ、習い事だでスケジュール帳がどんどん埋まっていって、「お友だちが虫捕りに行くから僕も行きたい!」って言ったときに、「いや、今日は塾の予定があるから」と言われてしまう。それがかわいそうだなって思っていて。時間を子どもたちが自由に使えない。そのときやりたいって思ったことができない。つまり、いまを生きることができない。未来のためにいまを手段にさせられている。生きそびれている。
菊池くんのところは、いましたいことを子どもたちが集中して楽しんで、意味もなくやりつづけているっていうのがいいなと思って。だって、その時間が豊かな人間性や創造力を育むわけで。

新井)この先何があるかって計算をして生きていく、つまり、自分のいま立っている場所、いまの社会環境、いまのルール、そういったものを前提にフォーキャスト(予測)して、じゃあ明日これをやらなきゃいけない、明後日はこれをやらなきゃいけないっていう話に、都会だとなってしまう。

でも、地域に来るとそうじゃない。何もないなか、自分たちが真っ白なキャンパスの中で夢を思い描いて、それをバックキャスティングすることができる環境っていうのは、やっぱり都会にはない魅力。何はともあれ、やっぱりいきいきしている。生きてるんだなあっていうのがわかる。

高橋)生き物ですよね。

新井)生き物だからね。だから生命力を感じましたし、人間がもっと自然に生きられる何かを取り戻すっていうところを感じさせてくれました。

 

■都市の「不自然」が奪うもの、コミュニケーションの効率化で失うもの
高橋)僕らのこの体も、自然のものじゃないですか。一方、都市というのは人工物であふれています。人間がつくれないものを自然、人間がつくれるものを人工物だとすると、人工物だらけの都市は不自然だということになる。そして、僕らはいまその中で生きているわけです。だから自然の体を、自然の中に持ってきてあげると気持ちいいって思うのは、僕は当たり前だと思っていて、もちろん普段は僕も都市にいますけど、1年中ずっとあの人工物の中にいて、生き物である僕らの体を、四角四面の中に置いて予定調和の生活を続けていると、やっぱり生き物としての感覚も鈍る。

よく生産性を上げられていないから、国際競争力が下がっているという人がいますが、パソコンの前に座る時間を増やしてまなじりを決してやれば国際競争力が上がるっていうのは実にバカげています。むしろ、いまだ科学で解明できない世界が広がる自然の中に自分を放り込んで、自分の感覚とか野生みたいなものを解き放ったほうがいいんじゃないか。だって、創造力や発想力、直感みたいなものっていうのは、心身ともに健康な身体から生まれてくるものだと思うんです。決して頭からではない
だから、僕はむしろ都会の人たちがときどき地方に足を運んで、感性や感覚を自由に解き放って、それで都会に戻っていったほうが、国際競争力は上がるんじゃないかって思うんです。

投稿者 noublog : 2020年12月24日 List   

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