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2020年08月27日

農業は脳業である8~解放の畜産

近代農法との対比からみえる、合鴨水稲同時作の魅力。

伝統農法の再生、プラス、発想の転換。

 

以下、転載(「農業は脳業である」2014著:古野隆雄)

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雑草や害虫も稲のためにある~発想が勝負
自然界に無意味なものは一つもない。地球生態系のなかで、あらゆるものがそれぞれに与えられた役割を生き生きと生き、死んでいく。田んぼの雑草や害虫もまったく同じだ。ところが、近代化稲作は人間と水稲との関係性に力点をおきすぎ、人間の都合のみで「雑草」や「害虫」と名付け、勝手に悪者、邪魔者と決めつけている。そして、除草剤や農薬で皆殺し(防除)を続けてきた。

これに対して、合鴨君を田んぼに放飼すると事態は一変。一瞬にしてこの固定観念は打ち壊される。悪者であったはずの害虫や雑草が大切な合鴨の餌となり、血となり、肉となり、そして稲の養分となり、最後には米になる。「ご飯」と「おかず」になってしまうのだ。短所が長所に、弱点が強みに変わるのだから、これほど素晴らしいことはない。

実は、合鴨水稲同時作にはちょっとだけ矛盾がある。合鴨君を放して四週間もすると、合鴨効果で田んぼの雑草や害虫が目に見えて少なくなる。つまり、天然に供給される餌が減るのだ。この矛盾をみごとに解決したのがアゾラである。
水性の「雑草」アゾラを「飼料作物」として稲の間で栽培し、合鴨君の餌とした。雑草を田んぼに積極的に導入したのである。しかも、田面にアゾラの”大陸”ができるためにアリやガなど一般の田んぼにはいない虫が飛んできて、合鴨君のタンパク源ともなる。

 

■温故知新~伝統農法の再生
アジアの水田地帯を訪ねると、田んぼにアヒルが遊ぶ光景を目にすることがある。アジアでは昔から、地域の田んぼを「共同放飼地」としてアヒルを放してきた。伝統的アヒル水田放飼農法であり、アジアでは一般的な飼い方である。また、ヤギ、水牛、豚、鶏などの家畜を日常的に耕地や草地や川や池に放していた。ベトナムの山岳地帯(たとえば北西部のホアビン省)に行くと、いまでも畑や苗代の周囲を竹柵で囲っている。放し飼いした家畜の作物に対する食害を避けるためである。
一説によれば、中国人が野生の真鴨を改良してアヒルとして飼い始めたのは約3000年前と言われている。以来、アジア各国で伝統的アヒル水田放飼農法が行われてきたのであろう。

>では、合鴨水稲同時作とアジアの伝統的アヒル水田放飼農法は、どこが違うのだろうか。両者の技術の根本的相違点は、「囲い込み」の有無にある。合鴨水稲同時作は限定された空間を「囲い込み」、合鴨と稲を同時に育てる。それによって、合鴨が稲に及ぼす効果は格段にレベルアップし、適期性、均一性、継続性においても格段に優れた質になったのである。
言い換えれば、どちらかというと伝統的畜産技術のアヒル水田放飼農法は、「囲い込み」によって、本格的な稲作、畜産技術に統合・発展したのである。1960年代以降に中断していた伝統的アヒル水田放飼農法が合鴨水稲同時作に進化、発展し、現代に再生した。
これは、まさに温故知新。アジアの伝統農業の再生である。

合鴨水稲同時作は、まったく新しい技術ではない。伝統的技術の再発見であり、再構築だ。それは、近代化技術と対比してみると明確になる。
近代化稲作は、雑草には除草剤、害虫や病気には農薬、養分供給には化学肥料というように、一つの問題に対して一つの方法で対処する。バラバラの対処療法の組み合わせ(分断技術)が、近代化技術だ。そして、除草剤も農薬も化学肥料も、石油を原料とした工業製品である。
一方、合鴨は、一人(いや一鳥)でこれらすべてに対応している。まさに「一鳥万宝」の統合技術である。

 

■楽しく行動する合鴨は楽役畜
通常の農業では、どんなに便利な農薬や除草剤や化学肥料であっても、外部から投入して、人間が自分で散布しなければならない。仮に機械で散布したとしても、運転は人間がしなければならない。
一方、合鴨水稲同時作では、除草、除虫、養分供給などすべての作業を、田んぼの合鴨君が均一に、適期に、継続的にしてくれる。人間の周到なコントロールや栽培管理や過剰な労働力の投入は一切、不要だ。そして、稲も合鴨君も自由に育つ。私はこれをスーパーシステムと呼んだ。それは、囲い込みの最大の効果である。

合鴨は「働く家畜」「役畜」と呼ばれる。しかし、重い荷車を引く馬や炎天下の田んぼを耕起する牛などの、ふつうの「役畜」とはまったく違う。牛や馬は苦労して働いている。それに比べて合鴨は、”自主的”に食事し、遊び、糞をし、寝る。その結果、自然に育ち、稲も育つ。合鴨は決して働いているわけではない。自由に、楽しく行動しているのだ。強いて言えば、合鴨は”楽役畜”である。

広い田んぼの中で自由に餌を食べて遊ぶ合鴨と、ウィンドレス鶏舎のブロイラーとを比べてみてほしい。私は合鴨水稲同時作を「解放の畜産」と呼んでいる。合鴨は、役畜であり、肉や卵を生産する用畜であり、糞畜である。合鴨水稲同時作は、家畜のもつ全能力を全面的に引き出し、展開させる技術であり、面白くて楽しいアジアの畜産なのだ。

投稿者 noublog : 2020年08月27日 List   

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