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2018年01月01日

過疎地発、教育イノベーション

みなさま、新年あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

無題

 

地方創生と叫ばれながら、現実には人口流出、過疎化に悩む地域は後を絶たない。

しかし、そんな逆境を逆手にとり、豊かな自然や地域のつながりを強みに、”過疎地発の教育イノベーション”を起こそうとしている人たちがいます。

本来、教育に求められているのは、「お勉強」ではなく、「いきいきと生き抜く力」を育むこと。
常識にとらわれない、豊かな発想に基づく彼らのチャレンジを紹介します。

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『島根県の離島・中山間地域の高校に、全国から年間約200人が入学する理由。「教育魅力化」に取り組むコーディネーターたちが実践する、地域へ、世界へ向けた学校の開きかた』より引用

高校生が、学校の授業の一環で地域に繰り出す。地元の人と交わる。さらには海外にまで飛び出す―。
そうしたリアルな体験を通じて、生徒のさまざまな力を伸ばしていく「教育魅力化」の取り組みが島根県で始まり、全国から続々と生徒が集まってきています。

「なんのために勉強するの?」

学生時代に誰もが一度は抱いた疑問を、「今、子どもたちはどんな力を身につけるべきか?」という問いに変換して、志ある大人たちが真剣に取り組むと、教育のかたちは大きく変わります。

島根県海士町の大野佳祐さんと津和野町の中村純二さんは、子どもたちへの教育は未来をつくることだと信じて、島根県に移住し、先進的な教育環境づくりを行う魅力化コーディネーター。

これからの時代に必要とされる教育とは?
そして、魅力化コーディネーターの仕事とは?

「革命は辺境から起こる」という言葉を地で行くような、過疎のまちから始まった教育魅力化の取組みについて、ふたりの熱い言葉を浴びてきました。

 

■社会は変化する。ならば教育も変わらなければいけない。

大野さん ぼくらの時代は、言われたことがきちんとできるということや、受験を突破するために高い学力をつけるということに公教育の価値が置かれていたように思います。

でも今は、いい大学に入っていい会社に入ればいい人生を送れる、という時代じゃなくなっていますよね。なにより、これからの社会では、人口が減少していき、抱える課題もより複雑になっていく。そこでは、より多様な人と協働する力や、より主体的に課題に対して取り組む力が大事になってくると思う。

中村さん 仕事自体も機械化されたりAIに代替されたりしていくはずですし、人間にしかできない仕事が求められていくのは間違いない。答えが無い問題を自分なりに考えることが必要な場面も多くなるでしょう。ならば、それに合った教育が必要ですよね。

 

■プロジェクトのはじまりは、地域にひとつだけの高校の存続危機だった
大野さんのフィールドである島前地域(西ノ島町、海士町、知夫村)は、四方に海を臨む隠岐諸島にある離島のまち。島根県立隠岐島前高校のある海士町は東京の杉並区と同程度の面積に約2,300人が住み、島へは本州側の港からフェリーで日本海を約3時間かけて渡ります。

一方、中村さんの住む津和野町は、眼前に山々が迫る小さな盆地にあり、冬は雪に埋もれる美しい山村。人口は7,600人程度とやはり多くはありません。

海士町と津和野町は、それぞれ‟海のまち”‟山のまち”という違いはありますが、どちらも絶対的な自然環境に囲まれた過疎地域であるのが共通点。「教育魅力化」に取り組んでいる島根県内の他地域もおおむね人口減少の著しい離島・中山間地域で、自治体にひとつしか高校がないケースが多く、生徒数は軒並み減少傾向にあります。

今でこそ、島根県のこれらの地域の高校に全国から年間200人近くもの生徒が入学しているといいますが、その物語の始まりは2008年の海士町でした。

当時、隠岐島前高校は、島の人口が減少していくなかで新入学者数が28人にまで減り、廃校の危機が現実として迫ってきていました。全校生徒も100人を下回る状況だったそうです。

大野さん 隠岐島前高校は地域にひとつだけの高校。もしも無くなると中学を卒業した子はほぼ全員が島を出ていくのは明らかでした。子どもだけではありません。子どもの進学に伴う仕送りの負担を考えて、家族ごと島を離れる世帯がいれば、人口はますます減ってしまいます。

だから島前高校の存続問題は、島そのものの存続危機でもありました。そこで島前三町村が立ち上げたのが「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」でした。

「島前高校魅力化プロジェクト」では、島外から進学する生徒を受け入れる「島留学」制度の導入、教育寮の設置、地域と連携した探究学習の導入、学校地域連携型公立塾の開設などが次々と行われ、離島・中山間地域では異例の学級増を果たします。

8年後には入学者数が65人程度にまで回復。島出身の子どもたちにとっては地域にいながらにして全国からやってくる仲間に出会えるなど、魅力的な教育環境が整えられていき、教育による地域活性化の成功モデルとして各メディアで紹介されることも増えてきました。

やがて、この実績を踏まえて、「高校魅力化」の取り組みは島根県全体に広がります。2011年には県としての事業となり、導入自治体が拡大。津和野高校のある津和野町もこの時から加わり、取組み自体も高校だけでなく、小中学校などを含めた地域の教育全体のコーディネートをやっていこうということになりました。

魅力化コーディネーターの役割は、地域や学校現場に入って市町村などの自治体や県の教育委員会、そして地域に住む人たちを学校につないでいくことです。

 

■生の体験こそがなによりの学び。学校を地域に開き、まち全体を学校にする。
「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」が始まってから、もうすぐ10年。取り組みを始めた島根県内の各地域では、高校への入学者数の増加などで人口の流出ペースが鈍化している市町村も出てきています。

また、必ずしも学力を上げることを目的とした取り組みでないにも関わらず、隠岐島前高校などでは、大学への進学率も向上してきているといいます。それはつまり、生徒自身の学ぶ意欲の高まりや、意識が地域だけでなくさらに外にも広がっているということ。実際、ふたりには、生徒の主体性が年を追うごとに増していくという実感があるそうです。

中村さん 学校外に出ていく活動も最初はイベント的にして、「やりんさいやりんさい」って煽ってたんですけど、今では自分たちで「あれもやりたい、これもやりたい」って言うようになってきました。

大野さん 島前でも、生徒自ら西ノ島町長にアポを取ってインタビューに行ったりしていて、あとからそのことを聞いてひやひやしたこともありました(笑) 本やインターネットからも学べるけど、そういう生の体験こそがなによりの学びなんですよね。

では改めて、そんなふたりは公教育についてどう考えているのでしょうか。

大野さん 教育には未来を変えていく力がある。でも今は、教育そのものが「提供する側」と「受ける側」に分かれてしまっているように思います。本来、教育って学校だけじゃなくて、家でも地域でもできるもので、一緒につくっていくものですよね。

だからぼくらのようなコーディネーターが間に入って、学校とのかかわりしろをつくっていければ、もっとみんなで学校を後押しできるんじゃないかと思うし、そうなっていけば日本の公教育は今よりも面白くなっていくでしょうね。

中村さん 今後そうなるであろう多様な社会から見ても、学校だけで教えられることはごく一部分。学校で学んだことをアウトプットする場としてどんどん地域に出ると、「まち全体が学校」になるような多様な教育環境づくり公教育でもできると思う。

大野さん そう、なにより、子どもたちに「協働しなさい」と言うんだったら、まずはぼくらが多様な人たちと協働して教育を魅力的にしていかないといけないですしね。

 

学校を社会に開いていくのは、忙しい先生たちの力だけではなかなか難しいもの。だからこそ、「教育魅力化」の取り組みのように社会との接続点をつくるコーディネーターが学校に入っていくというやり方は効果的なのでしょう。(以上、引用終わり)

 

 

投稿者 noublog : 2018年01月01日 List   

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