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2016年02月18日

コミュニティビジネスがひらく、新たな「農」の可能性~”開墾作業”がもたらす達成感と連帯感

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前回の記事はこちら→コミュニティビジネスがひらく、新たな「農」の可能性~”地産地消”が気付かせる、「食の価値」

 

都市と農村の新たな関係作りを進める「えがおつなげて」。

今回は、その活動の核となっている「企業ファーム」の考え方や特徴について、さらに踏み込んでいきます。

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■農村のリソース×企業のテーマで事業化

これまで紹介してきたように私は限界集落地域を拠点として、開墾ボランティアの活動の後、さまざまな企業と連携し「企業ファーム」活動に取り組んできた。ここでは「えがおつなげて」の企業ファームの考え方や特徴について紹介する。

 

企業ファームは、農村のリソースと企業のテーマや課題をかけあわせ、六つの価値に分類して活動を行っている。たとえば、三菱地所グループの「空と土プロジェクト」は、「CSR」(企業の社会的責任)と「事業開発」がテーマ。限界集落の活性化への貢献とともに、社員や顧客のコミュニティ醸成に活用してきた。同グループの契約農地は約一ヘクタール。その農地をフィールドとした年20回程度の各種ツアーが組まれている。これらは事業開発の側面と言えるだろう。また最近では、CSR活動をベースとしたこのような本業につながる事業開発の取組みは「CSV」(共有価値の創造)と呼ばれているようだ。

 

2011年から始まったはくほうファームは、ともに汗をかくという農作業のプロセスを部署・世代を越えて体験しながら、社員の人材活性化という人材育成プログラムに活用してもらっている。その他、食品関連企業では、社員に農作業の体験を共有してもらいながら農産物を生産し、収穫された農産物を活用して新しい商品を開発するといった「新規事業開発」といったことも行われている。

『農業再生に挑むコミュニティビジネス』(ミネルヴァ書房)より引用

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着実に実績を重ねてきた「企業ファーム」ですが、その基盤にあるのが、「仲間とともに自ら開墾することで得られる達成感・連帯感」です。

 

また、「えがおつなげて」の企業ファームなどの農業体験プログラムの特徴の一つは、まず耕作放棄地の開墾を行うことにある。準備された畑を耕し作物を栽培しても、結果的に土地に対する愛着がわかず、訪問することがおっくうになったり飽きてしまったりという事例を見聞きすることが多い。その原因は、土地に対する「愛着」が自分の中に生まれないことにある。自らの手でクワやスコップを握り、額に汗し、何人かで力を合わせて放棄された畑を使える状態にすること。それはたんなる作業のようだが、人と人、人と土地のきずなを作ることにもなる。皆で一つのことを成し遂げる達成感の大きさ、同じ作業を行う仲間への連帯感。現代の都市ではそういう体験をする機会はそれほどない。

 

開墾作業を通じて生まれる土地への愛情と執着心は、まさに農民が古来より荒れ地を開墾し、自らの手で作った畑を手放せなくなる理由でもある。それが都市生活者の中にも生まれるのは新鮮な驚きであった。「えがおつなげて」の体験プログラムにリピーターが多いのは、この開墾体験も理由の一つだと考えている。

 

せっかく開墾した畑だが、遠方から毎週末通うのは難しいことが多い。そこで常駐スタッフが通常の管理作業を行い、都市からの訪問は年に決まった回数を受け入れるというプログラムを用意した。稲作の場合は田植え・草取り・稲刈り。ダイズの場合は種まき・草取り・収穫。ある意味「いいとこどり」のこのプログラムが継続的な契約につながっている。常駐スタッフは地域に密着し地域の信頼を得ているため、地域からみると「知らない人」に土地を貸しているわけではない。また管理費として土地所有者が一定程度の収入を得ることができるのも、メリットとしては大きい。都市と農村、お互いがある意味「いいとこどり」をし、双方がWIN-WINの関係でいられる仕掛けが継続の秘訣だと思う。

 

 

 

投稿者 noublog : 2016年02月18日 List   

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