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2016年02月02日

コミュニティビジネスがひらく、新たな「農」の可能性~様々な広がりを見せる、「企業ファーム」

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前回記事はこちら→コミュニティビジネスがひらく、新たな「農」の可能性~「空と土プロジェクト」がもたらした、都市と農村の新たなつながり

 

都市と農村に新たなつながりをもたらしはじめた「企業ファーム」事業。

引き続き、事例とともにこの事業の魅力をお伝えしていきます。

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■「はくほうファーム」

 2011年冬、大手広告会社の博報堂・博報堂DYメディアパートナーズの社員のみなさんが、ある目的で、増富を訪れた。耕作があきらめられ、放置されたままの土地を開墾するためだ。一人ひとりの手には、草刈り鎌とスコップ。まずは鎌でススキを刈っていく。一通り刈り終えたら、次はスコップでススキの根っこを掘り起こしていく。作業すること数時間。最初は、人が入ることも難しかった土地の視界が広がり、農地の状態に近づいていく。開墾なんて不可能と思われていた荒れた農地が、よみがえってきたのだ。そして、この開墾活動の後、「はくほうファーム」と呼ばれる農場の活動が始まったのである。

 

この開墾体験を終え、博報堂と「えがおつなげて」との間で連携協定が結ばれた。この「はくほうファーム」の目的は日頃、多忙な業務環境のなかで、頭でっかちな状態になった社員のために、①リラックス、②クリエイティビティ、③たて・よこ・ななめのコミュニケーションによるつながりを体験させる、社内のコミュニケーション・ツール&人材育成施策として生まれたもの。2011年の耕作放棄地の開墾体験は、その第一歩だったというわけだ。それ以後、開墾されたこの農場では、博報堂・博報堂DYメディアパートナーズの社員の参加により、田植え、草取り、稲刈りなどが人材育成研修の一環として行われている。

『農業再生に挑むコミュニティビジネス』(ミネルヴァ書房)より引用

 

 

■さらに広がる、企業ファーム

 2013年4月からは、日清オイリオグループの100%出資会社であるマーケティングフォースジャパンと「えがおつなげて」の連携プロジェクトが始まった。社員で耕作放棄地の現状を通じて日本の農業について学びながら、耕作放棄地の開墾~ダイズの栽培~収穫を行うというものだ。この活動は、マーケティングフォースジャパンの社員にとどまらず日清オイリオグループの社員、そしてその関連取引企業のみなさんをも巻き込みながら展開されている。社員研修の一環として実施されるこのプロジェクトは食品を扱う企業として、食の原点に触れるという体験が社員に大きな意識の変化を与えるきっかけになっているとのことだ。さらに、収穫されたダイズを活用した商品開発の検討も行われている。

 

この他にも、東京に拠点を構えネット通販の運営サポートを行うIT企業ソキュアスと連携し、福利厚生の一環として農業体験を行うソキュアスファームプロジェクトや、早稲田大学ビジネススクールの教授やゼミ生が開墾体験からコメ作りまで行う体験プロジェクトなど、さまざまな都会の企業・団体と連携し農村とつなぐプロジェクトを行っている。

 

様々な企業・団体との連携が深まるにつれ、改めて気づかされる「農」の多面的な価値。

その背景には、都市での生活そのものがもたらす不全感があるようです。

 

■都会人にとって農業体験は魔法の薬

 都会で働く方々の傾向として、パソコンに依存するワークスタイルというものがある。身体を動かしたり、職場の同僚同士でコミュニケーションを取ったりすることも少なく、労働環境に強いストレスを感じている人も多いようだ。著書『バカの壁』で知られる解剖学者の養老孟司さんは「今の都会人は、頭と身体のバランスが非常に悪い」と言っている。その解決策として、農村に行き畑の草取りや森林の間伐などをしながら身体を使うことを勧めている。かくいう私も、もともとは東京で金融機関の経営コンサルタントをしていたのだが、バランスの悪い働き方で体調を崩してしまったことがある。しかし東京から山梨にやってきて畑を開墾し、農作業をしていたら自然に体調がよくなってきたという経験がある。農村での農業体験は都会人にとって、魔法の薬なのかもしれない。

 

「企業ファーム」の運営ノウハウを生かし、旅行会社のJTBとも連携して、新しい農村体験ツアーも始まった。私たちの地域と同様に、日本の農村には隠れた豊かな資源がある。農産物、特産品、景観、文化、森林、古民家などの資源である。全国のこれらの資源を活用して、究極の田舎旅を企画した。旅行者に古民家などの施設に宿泊してもらいながら、地域ならではの農村体験を行ってもらう。またその旅行から帰ると、その宿泊した地域から地域ならではのお土産が自宅に届く、そんなツアー企画である。現在、宮崎・滋賀・三重・福島・山梨の五つの地域でこのツアー企画が始まっている。今後は、全国規模のツアー企画に発展させていく予定である。

 

企業ファームの取組みは、新しい形も起きつつあるなかで大きな広がりを見せている。

 

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投稿者 noublog : 2016年02月02日 List   

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