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2015年09月25日
『微生物・乳酸菌関連の事業化に向けて』-9 ~既存事業1-7 水産~
今回は、水産場面での微生物活用についてお伝えします。
水産業での微生物活用は、大づかみには、
1】魚貝類の健康増進、旨味向上
2】塩辛や魚醤など、水産発酵食品の製造
3】養殖場をはじめとした、水の浄化
に活用されているようです。
それぞれの事例を見ていきましょう。
1】魚貝類の健康増進、旨味向上
★魚類の腸内乳酸菌に注目し、効率的かつ安全な養殖漁業への実用を目指す
「水産用にも乳酸菌入りの飼料が販売されているが、実際には他の生物や用途のために開発されたものばかり」。星野教授は「人には人の、魚には魚のプロバイオティクス(人体に良い影響を与える微生物(善玉菌)」をコンセプトに研究を進めている。
日本の水産業の中で、養殖業が占める生産量の割合は21.9%。世界の養殖魚介類の約90%が生産されるアジアでは、養殖産業による環境破壊や水質汚染、抗生物質の多投による食品の安全性が課題となっている。そこで、星野教授は効率的かつ安全な養殖漁業の実現のために、魚のプロバイオティクス研究開発の必要性を唱え、日本でも先駆けて研究開発を進めている。(霞ヶ浦におけるコイ養殖で成果)
★三陸里海乳酸菌・酵母を利用した地域素材の高付加価値化(東京海洋大学)
本事業では、三陸里海環境の試料 ( 魚介類腸管、水産発酵食品、海藻など ) からの有用乳酸菌・酵母の分離と応用を試みている。
これまで標準株よりも耐酸性、耐胆汁性、耐塩性の高い Lactobacillus plantarum, Lactococcus lactis, Pediococcus pentosaceus を分離し、さらに抗酸化性、抗炎症性を有する株が得られた。その一部の株はフノリやメカブなど三陸特産海藻の発酵も可能である。今後、これらの里海乳酸菌および発酵海藻による三陸の新たなブランド食品を提唱したい。
★肉質や食味の向上(株式会社 松本微生物研究所)
養殖場に堆積する腐敗性有機物から発生する有害なガス(硫化水素)やアミン類、低級脂肪酸などをPTBがエサとして利用、栽培環境を改善します。またPTBに含まれる色素成分、ビタミン類が発色、肉質や食味の向上に役立つ。液体。
★整腸と発症・感染予防(日本農産工業株式会社)
整腸作用:植物性蛋白源の利用促進が期待され、魚粉削減、発症抑制、感染の予防:クルマエビのビブリオ症の病原菌である「ビブリオ」に特異的に寄生する非病原性細菌「デロビブリオ」を含み、養殖池に散布することでビブリオ菌を減少。
★感染症予防(環境科学研究所)
水産養殖産物の感染症予防対策に活用。
2】微生物の作用を調整して作る水産発酵食品の製造
水産発酵食品は、日本各地で、その風土に合わせて人々の食生活を支えてきた。塩蔵品や干物、佃煮、酢漬けなどは魚の塩分や水分、pH などを微生物の増殖に不適当な条件にすることによって微生物の増殖を抑制したもの。塩辛、くさや、ふなずしのように、微生物や自己消化酵素の働きをむしろ積極的に利用して作られているものなど、現在のように科学的メカニズムが解明される以前の、人間の知恵と経験が生み出した貴重な発明品と云える。
微生物の働きを活用した塩蔵品にしろ、魚肉ソーセージや缶詰のような加工品にしろ、水産加工品はほとんどが腐敗防止のために生まれたもので、その製造原理は、大きく2つ。
1)腐りやすい原料魚を塩蔵している間に特有の風味をもつようになったもので、塩辛、くさや、魚醤油など。
2)魚自体は糖質が少ないため、発酵基質として米飯や糠を用い、これに塩蔵しておいた魚を漬け込んだもので、馴れずし、糠漬けなど。発酵を促進させるために多量の麹に漬け込んだものは麹漬けといわれる。
※詳しくはこちらを参照して下さい →「水産発酵食品と微生物」
今回はここまでとしておきます。
次回は 『3】養殖場をはじめとした、水の浄化』等について、お伝えします。
by 佐藤有志
投稿者 noublog : 2015年09月25日 TweetList
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