農から始まる地域の再生~新しい生産集合体をどうつくるか?10.~安全欠乏・自給期待に応えることが地域活性化に繋がる~ |
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2012年11月01日
【シリーズ】これからの農業経営を考える~1.農産物加工特産品の可能性
みなさん、こんにちは。新しく始まったシリーズ『これからの農業経営を考える』ですが、前回の
“【シリーズ】これからの農業経営を考える~0.プロローグ”で
>生産者と消費者をつなぐアイテムとして、あるいは経営を支える基盤として、加工品や
>農産物加工は重要な位置にあります。人々の安心・安全期待、自給期待に応える加工の
>かたちとは?
と、ありました。今回はこのあたりを掘り下げてみます。
全国でやく17000店あると言う農産物直売所の中で流行っている所には多くの加工品が販売
されています。
農作物を販売する時、野菜やお米をそのまま販売すると、付加価値を付けにくいのでどうしても
低価格になってしまいます。
野菜やお米に一手間加えて(付加価値を付けて)販売すれば価格を上げられます。
(例えばお米を炊いて‘ご飯’として売るより一手間加えて‘おにぎり’にすれば高く売れますし、
こだわりの“おにぎり”ならさらに高く売れます。)
また、多く採れた旬の野菜や形の悪いB級品を有効利用した加工品は農家経営を支える
基盤にもなります。
今回は野菜に一手間加えて販売!つまり‘農産物加工品’の可能性を考えて見ます。
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農産物加工特産品について鳥巣研二著『加工特産品のつくり方、売り方』を参考にして
まとめました。
●どのような加工品が売れているのでしょうか?
もちろん“消費者の期待”に合致したものが売れているはずです。
全国の直売所、楽天等のネットショッピング、カタログ通販等で売れている加工品
を調べてみると、、
1.小サイズで個別包装
小さめの一口サイズで個別包装のものがよく売れています。
核家族化が進み1~2人暮らしの家庭が半数以上になっていますし、お年よりは少量しか食べません。
また高級珍味も少量の包装にすれば手頃な価格になって買いやすくなります。
例えば長崎名物「からすみのスライス5切れ」、宮崎空港「鶏のささみの燻製(1本入)」サンプルサイズの珍味、桑名市の特産品:かぶら煎餅等。
2.分かり易い商品名
地名やこだわりの部分を入れた商品名のものがよく売れています。
地名などを商品名にすると分かり易く、覚え易いからだと思われます。
例えば東京土産に「東京ばな奈」、淡路の「玉ねぎチップス」、島根の「岩見の国 銀しゃり和布」
三陸の伝統食「炙りしめ金華さば」等。
3.調理不要でそのまま食べられる。
包丁で切る等の調理が不要で手間隙掛けなくてもそのまますぐに食べられるものがよく売れています。
おいしそうなものを買ったらどこでも簡単に食べたいものです。
例えば宮城県九森町の「へそ大根の煮物」のレトルト食品、特産菓子類(クッキー、ゼリー、
有馬温泉サイダーなどの地ドリンク等)
4.地域資源の活用
地域の農水産物、加工特産品やお土産、伝統工芸品や保存芸能、景観や観光スポット等
その地域の歴史や文化などから発想されているものが多いようです。
また、伝統的な加工技術「塩蔵」「乾燥」「発酵」といった伝統的な保存技術を使用したものもよく売れています。
ローカル食材は作り手が見えて、安心感があるのも売れている理由だと思います。
例えばわさびの産地である静岡だと「わさび漬け商品」、梅の産地である和歌山だと「梅干し商品」。「信州味噌」等。
5.従来作物や伝統作物を復活(又は現代風に進化)させて加工品を作る。
山形県「だだちゃ豆」:だだちゃ豆は100年以上前から鶴岡市地域で作られている枝豆ですが、
10年前に大手ビール会社のCMに登場してから全国的に有名になりました。
又、鶴岡市庄内地域の「藤沢かぶ」は平成2年には絶滅寸前でしたが昔の焼畑農法による栽培に成功し、復活させました。
6.郷土料理から発想又はその料理を進化させて加工品にしている。
保存技術(冷蔵、冷凍、加熱殺菌)の発達で料理そのものが加工食品として作られています。
料理済みで小分けされていれば必要な分だけレンジでチンするだけで簡単に食べられます。
例えば、様々なレトルト食品、様々な冷凍食品、秋田県の「きりたんぽ鍋」宮崎県の「地鶏の炭焼き」、長野県の「おやき」等。
7.健康食品化:誰もが健康に良い、と知っている原材料を使用している。
健康志向が高まる中、平成21年度の健康食品新聞によると健康食品の売り上げは約2兆円でその
半数以上が加工品で占められています。
地域で採れた健康に良いことが知られている原料を加工しその産地や農法のこだわりを強調すればさらに魅力がアップします。
例えばブルーベリージャムやカシスの実ドレッシング、サメ屋が作ったサメ軟骨。しょうが茶等。
●これからの農業経営
最近の「道の駅」や「農産物直売所」の成功例を見てみると加工品が沢山置いてあったりレストランが併設されていたりしています。お客さんの安心・安全期待、自給期待に応える農産物加工品は経営を支える基盤となっているのです。
これらの施設は単に野菜が売られているだけではなく、見たり、食べたりできる、楽しいショッピングの場となっているのです。加工品が豊富にあることで品揃えが増し、ショッピングも楽しくなります。
また、お客さんに喜んでもらえる美味しい野菜を作りたい農家と「安心・安全」を求める消費者が直接接する場を提供しています。
これからの“生産者”は農作物を作るだけでなく、どう売るか?を考え直売所で実践していく“経営者”になる必要があります。
その経営の視点で考えると生鮮の農作物以外に農作物に一手間加えた加工品を持つことは品揃えが多くなるので、より多くのお客さんの期待に応えられます。
今の直売所は『安心・安全』は当たり前になっています。
これからの直売所は“生産者”が“経営者”に成長する場。
お客さんはそれらを評価する場、となる必要があります。
投稿者 mukai : 2012年11月01日 TweetList
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