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2012年02月03日
企業から始まる自給自足の道シリーズ~No.3:農業参入の事例と成功のポイント
こんにちは、農園のsugi70です。
自給自足への道シリーズも4回目、今回は企業の農業参入の具体事例を紹介し、その中から成功のポイントを抽出したいと思います。
しかし、一口に農業参入といっても、その企業の規模や業種形態などによっても、参入後の営農のかたちは様々です。
事例紹介にあたっては、社団法人 中小企業診断協会 大分県支部がまとめた、「企業の農業参入に関する調査・研究報告書」、その他サイトからの情報を参考にしています
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1.具体事例
●建設会社からの農業参入
(有)宇佐重機
大分県の宇佐市にある総合建設業(土木)会社、宇佐重機さんの紹介をします。
【会社概要】
会社名 宇佐重機
代表者 菅原 繊範氏
事業 総合建設業(土木)
進出分野 花弁・麦・大豆・飼料米など栽培、作業受託等
その他 創業1973年(昭和48年)1月
関連法人:フラワーうさ
【耕作の状況】
大豆 30ha
麦 45ha
米 2.5ha
じゃがいも 5ha
飼料稲 20ha
花 パンジー・ビオラなど鉢花 1200坪のハウス
農業参入の背景 ①土木から農業へ
もともと、実家が農家だった藤原氏は、19歳の時に奨励されていたブドウ栽培を始めますが、5年で撤退。その後、3年ほど土木会社で働いた後、昭和48年に藤原社長が27歳の時に設立した会社です。個人農家の依頼による、圃場整備の仕事から始めたそうです。
効率的な仕事が評判を呼び、年々仕事は順調に広がっていったそうですが、1990年にバブルが崩壊。その際から、「何とかせな、ダメだ」と思い続けてきたそうです。
そして、1995年、認定農業者の認定を受け、1200坪のハウスを立ち上げます。
2年後の1997年、フラワーうさを立ち上げ、農業参入に進みました。
フラワーうさでは、パンジー、ビオラなどの鉢花を栽培していますが、鉢花を選んだ理由としては、自身が花が好きだったことと、計画を立てれば作業に余裕が持てることや、仮に失敗しても作業にやり直しが効く可能性があるといったことなどがあるようです。
開始3年間は、技術も知識も販売先もなく、赤字でしたが、地道な努力と、2001年に大分県に大分農業文化公園が開園することになり、鉢花の大量発注が入るという運にも恵まれ、開業4年目にして黒字化を達成しています。現在はパンジー、ビオラ他30~40種類の鉢苗を大分・福岡の市場に出荷しています。
その後、2000年ごろから集落の耕作も任されるようになり、麦・大豆の耕作を始めます。また、転作奨励金の減少などの背景もあり、2005年からはカルビーとのじゃがいもの契約栽培を開始するなど、現在も多角化・拡大化を進めています。
しかし、耕地面積拡大の背景には、高齢化により耕作できる農家さんが減少し、地域の担い手として㈲宇佐重機が期待されているというのが本質だと思います。
農地を担う中でも、どうすれば採算ベースに乗せられるのか、常に考えて続けているからこそ、続けられているのだと思います。
●製造業からの農業参入
(有)橋本産業
続いて、プラスチック部品製造業の(有)橋本産業さんを紹介します 😀
橋本産業さんは、平成元年創業の会社ですが、新たな事業分野を求めて農業に参入し、斬新な発想で自ら農業技術を開発し、製造業で培った経営ノウハウを生かして、低コストで利益を生む農業経営を進めています。
「アスター」という品種に特化した花弁のハウス栽培に取り組む中で、様々な問題に大して諦めることなく試行錯誤を繰り返し、独自の工夫を積み重ねて、生産物が市場で高い評価を得られるまでの技術を確立しました。
【概要】
会社名 (有)橋本産業
代表者 橋本成一氏
業種 プラスチック部品製造業
進出分野 花弁(アスター)栽培
①農業参入の背景
(有)橋本産業の農業分野の参入は、プラスチック成形業で、生計を立てながら、一方で代表者の橋本氏が好きだった農業、特に花弁栽培に関心を寄せたことがきっかけです。
平成元年に(有)橋本産業を立ち上げ、当初は自動車部品メーカーとの取引で経営を安定させていったものの、創業から7年後、自動車産業の先行きや、激化する下請け競争の危機感から、本格的な農業参入を試みます。農家の組合に加入して土地を借り、750坪の花弁ハウスを建設、近隣農家とともにトルコキキョウの栽培を始めました。
②カイゼンで掴んだ新技術
しかし、トルコキキョウは冬場の暖房コストが高く、採算に合わないことがわかり、5年ほど前から新しい品目、アスターの栽培に乗り出します。
アスターは市場での価格と需要も安定しているのですが、連作を嫌うことから栽培が難しく、その対策も確立されていませんでした。
そこで、橋本氏が考案したのが、プラスチック廃材のリサイクルに花弁栽培ポットでした。このポットに牛糞堆肥に少し有機物をブレンドしたものを入れ、ハウス内の土中に並べて埋めると、ポット内に自然にミミズが発生して土が肥え、収穫後は土を補充するだけで連作が可能になりました。その上、蓄熱効果が高いため冬場に重油を炊く必要がなく、花が少なく需要の多い冬季に暖房費ゼロで出荷でき、利益のでる周年栽培を実現しました。
この他にも、播種技術の改善、無駄のない栽培管理方法など、様々なカイゼンを行っているからこそ、今の成功があるようです。
また、このポット栽培の技術を生かして、花弁だけではなく、ほうれん草などの葉菜の栽培にも着手するそうで、今後の発展にいっそうの期待が感じられます
2.農業参入の成功のポイントは?
以上簡単にですが、2社の紹介をさせていただきました。
その中で、共通して、「これは、成功につながる!」と感じた点をまとめてみたいと思います。
ポイント1.経営意識が高い
まず、どちらの企業にも感じられることですが、農業に対する経営意識や、意欲が非常に高いことです。
例えば、先に紹介した、㈲宇佐重機さんは、もともと土建業であったこともあり、堆肥の切り返しに使う重機など新たに購入する必要はなく、宇佐重機が所有する機械を借りられます。また建設・土木業界には農家出身の社員が多く、農業参入後すぐに即戦力になるというメリットがあります。
しかし、菅原社長は参考記事の中で次のように語っています。
「土建業者の新規参入でほとんど成功していないのは、農業は自分たちにも簡単にできるという過信が大きな原因ですよ」
「農業でやっていけない人が外に出て働く時代。人材があるからといって農業に参入して成功するほど簡単ではないのも事実だ」との認識を持つ。「大事なのは、どうすれば経営として成り立つかという視点、作物の生育状況を判断する力が経営者にあるかどうかだろう。それがわからなれば社員に指示を出せない。それに建設土木と比べて農業は緻密な作業の連続。私も実感していることだ」
「建設業は設計書といわれる予算書に基づいて仕事をするため利益が読めるが、入札など熾烈な競争がある。一方の農業、特に土地利用型農業は利益が薄い。身を削るような努力をしないと利益を残せない。だが努力を続け、技術・天候など条件が整えば、見返りがストレートに現れるところが魅力だ」
など、農業の難しさを語っています。
同様に、㈲橋本産業の橋本氏も、経営においては、「弛まぬカイゼン」が必要で、「正確に、確実に、無駄なくできる方法を考える」ことが大切だと語っています。常に追求を止めない、その姿勢が仕事の壁を乗り越えていくのでしょうか。
ポイント2 農業が好きであること、農業を担う意思があること
大変な農業だからこそ、続けていくためには、「農業が好き」であったり、農業を担っていくという意思が必要だと思いました。
橋本社長は、気候の影響を大きく受けるなどの農業特有の問題さえも、「農業が好き」であれば、考え工夫して解消への道筋を掴むことができると言います。
また、菅原社長が出かける麦・大豆の耕作は、利益がほとんどでませんが、「地域の農家のためになるならば」と請け負っていったからこそ、拡大を続けてこれたのだと思います。
以上、ポイントを2つほど挙げました。
経営意識が高く、常に問題があっても解決していくことができるのは、前提として、「農業が好き」「農業を担う」という意思が強いからだと思います。
甘い気持ちで参入しても撤退してしまう企業が多いのは、この意思の違いなのかもしれません。
以上です。ありがとうございました。
□参考文献
・社団法人中小企業診断協会 大分県支部「企業の農業参入に関する調査・研究報告書」平成22年2月
・農業と土木業、ふたつの経営を極める
http://agri-biz.jp/item/detail/402?page=2
・土建業を経験したから気づいた農業・農業界のおかしさ、難しさ
http://agri-biz.jp/item/detail/6506?item_type=1
□画像はこちらからお借りしています。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/BotanicalGarden-F.html
投稿者 sugi70 : 2012年02月03日 TweetList
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