2018年7月24日
2018年07月24日
都会における人と植物の共存
東京では、一定規模の建築を新築する場合は、建物の屋上に緑地の確保を義務づけられています。これは、ヒートアイランド緩和のために、東京都が定めた条例です。要は植物の葉っぱからの水分の蒸発散機能を生かして気温を下げようという発想です。
ところが、条例にもかかわらず、手続きをしなかったり、緑化がスペース的に確保できないという理由から、屋上に緑地を確保するという東京都の計画の目論見が実現できない状態が、十数年続いています。
何故か? 理由は植物の維持管理です。植物は植えた後、水やり、施肥、草取り、剪定等という管理が発生します。樹木を健全に育てるためには、人力でこの管理を行う事が必要で、規模が大きくなるとかなりの費用がかかります。事業者は、このお金を生まない維持管理費を何故支払い続けなければならないのか?という疑問から、計画しないで済むならしないという意識になっていることが基本的な理由です。
そういう意味では、これから紹介する記事は、逆の発想から生まれた活動と言えるでしょう。「都会における人と植物の共存」:農という形を通じて、本来、人の五感が喚起できる空間を自ら作り出すという発想です。
マイナビ農業からの紹介記事です。(2018年4月3日)
■都会の農業を活性化。アーバンファーマーズクラブが結成
「渋谷の農家」の小倉崇さんを代表として、東京で「アーバンファーマンズクラブ」が結成されました。都市での農業の活性化を目的として設立された団体です。今までも渋谷の人々を巻き込んできた小倉さんですが、今回も東京で暮らす人々とともに農業を行うことが目的です。都会に住みながら少しでも農業に触れたいという人、農業を通じて人と関わりたいという人にとって絶好のチャンスとなるかもしれないアーバンファーマーズクラブについて、紹介します。
■アーバンファーマーズクラブとは
「東京都渋谷区、ライブハウスの屋上生まれ」の野菜があったら、食べてみたいと思いませんか?編集者である小倉崇(おぐら・たかし)さんは、出版や広告の仕事をしながら農業への情熱を持ち、2015年に渋谷のライブハウスの屋上に農園をオープン。ラブホテル街のど真ん中にあるライブハウスで野菜の栽培を始め、その姿は「こんな都会でも農業ができるのだ」と新たな可能性を感じさせてくれました。
ライブハウスの仕様が変わったことで農園は閉鎖してしまいましたが、小倉さんを中心とした新たな団体が設立されることが、2月に行われたトークイベントのなかで発表されました。
その名も「アーバンファーマーズクラブ」(Urban Farmers Club)。「渋谷の農家」である小倉さんを代表として、都会での農業を活性化させる団体です。
「自分で食べる野菜は自分で育てる」というコンセプトのもと、渋谷エリアを中心に「アーバンファーミング」を推し進めます。例えば、東急プラザ表参道原宿の屋上や恵比寿ガーデンプレイスの一角で地域の人々と一緒に農業をしたり、種の配布をすることでベランダなどでの家庭菜園を増やしたりと、広大な農地があるわけではない東京ならではの農業を模索します。現在は畑の準備を進め、今後イベントを開催したりと活動を広げていきます。
■アーバンファーミングを活性化させる目的
アーバンファーマーズクラブのこれからの活動には、4つの目的があります。
(1)農業を通じて地域活性化する
アーバンファーマーズクラブは、地域の人々を巻き込んで活動していきます。地域に暮らす人々とひとつの畑で食べ物を育てるという行為そのものも地域の人同士の交流を促しますが、その後の効果にも注目します。野菜を育て収穫したあと、採れた野菜を近隣の人にお裾分けしたり、自分の作った野菜で料理を振る舞ったりと、農業をきっかけにコミュニティを広げます。
(2)野菜を自分で育てて食育につなげる
都会で育つ子どもは、もしかしたら野菜がどのように育つか見たことのないまま、知らないまま野菜を口にしているかもしれません。自分が口にするものがどうやって生まれてきたのかを知るには、自分で作ってみるのが一番。アーバンファーマーズクラブでは、農業を通して野菜をもっと身近に感じる食育が出来たらよいと、子ども向けのプロジェクトも考えています。
(3)農園を増やして環境対策に貢献する
アーバンファーマーズクラブの舞台は渋谷エリアです。例えば渋谷駅周辺は谷底になる地形になっており熱気がたまりやすく、ヒートアイランド現象が起きています。これを改善させるには、緑を増やすことが効果的です。渋谷の屋上やベランダで農園を作ることで、環境に良い影響を与えることが望まれます。
(4)食料自給を考える
小倉さんは東日本大震災のとき、食料をどうするのかということを改めて考えさせられたそうです。震災が起きライフラインが遮断されれば、他地域からの食料の調達はすぐには望めないまま、食料の買い占めも起こるといった状況になりかねません。「自分で食べる野菜は自分で育てる」という考えには、震災で感じた危機感も影響しています。
■2020年までに2020人のアーバンファーマーを
小倉さんはイベントのなかで、ニューヨークやロンドンでの例を挙げながら、都市農業の可能性を話しました。たとえば現在ニューヨークでは、屋上農園が話題です。とある農園付きの人気レジデンスでは、住人は農園で作物を育てるだけでなく、ワークショップや食事会に参加することができ、家賃が高いにも関わらず入居希望者は絶えないのだとか。ロンドンでは、2012年のオリンピック・パラリンピックまでに2012か所の農園を作ることを目指した結果、現在2700以上の農園があります。80トン以上の食料を生み出し、市民のコミュニティ作りにも寄与し、まさにレガシーと言えるでしょう。
2020年のオリンピック・パラリンピックを控えた東京にとっても、「都市農業」はキーワードとなりそうです。アーバンファーマーズクラブでは、2020年までに2020人のアーバンファーマー(市民農家)を誕生させ、2020カ所のアーバンファーム(市民農園)を開設することを目標にしています。
2020カ所のアーバンファームには、ベランダなど、あなたがこれから始めるかもしれない小さな農園も入ります。アーバンファーマーズクラブの活動に興味を持った方は、ウェブサイトにて仮入部を受け付けています。これから期待が高まるアーバンファーマーズクラブの活動。まずは仮入部してみてはいかがでしょうか。
投稿者 noublog : 2018年07月24日 Tweet