| メイン |

2022年04月19日

『稼ぐ農』シリーズ5 農業を制するには”流通”は避けて通れない

稼ぐシリーズもいよいよ中盤にかかります。

今回は「流通」に注目します。稼ぐ農において避けて通れないのが農の流通です。

農家は末端価格の半分しか稼げず、結局農作物の価格の半分は流通と販売で稼いでいるのです。最初にこのテーマを追求する時に提起した17のテーマの中から流通に関わるテーマを選定し考えてみます。今回もネタを与えていただいたのは当ブログの知恵袋のK君です。

 

・農協を通すと稼げない、その仕組みは
・直売所は生産者が値段をつける。そのリスクとメリット
・一番は道で売ること‥丸々利益になり意外とそれで稼いでいる農家は多い
・末端価格は何で決まるか?全ては消費者とのバランスで自由に決められている

にほんブログ村 ライフスタイルブログへ

農業と言えば農協に作物を提供して市場へ卸し、問屋を通してスーパーや商店に配送、末端消費者はスーパーでトマトやきゅうり、米を購入というのがほぼ農業の全ての流通経路です。農協を通さない作物は統計をとった訳ではありませんが1割も満たないのではないかというのがK君の見立てです。では、農協に卸さない場合はどうやって流通を作っているのでしょうか?
簡単に思い浮かぶのが産地直産のセールや道の駅。いわゆる農家と消費者が一直線で繋がるルートです。デパートやスーパーでも偶に産直販売は売られます。また、農業の傍ら、道で直接売るという方法もあります。

どちらから話ししましょうか?
まず直接販売の話しからします。産直野菜の価格はどうやって決まるのでしょうか?基本、自由です。生産者が決めています。例えば大根をいい味のものができたので1本200円で売ろうという農家が居ます。一方、大量に取れたので売りさばかなければいけない、そういう農家は1本100円で値段を付けます。200円のものは全く売れず、500本出して300本しか売れなかった。60000円です。一方、100円の大根は1000本出して完売。100000円の売上。

あるいはこんなケースも。200円の大根に生産者の写真や作り方をコメントして打ったことで500本が完売 100000円の売上、100円の大根は1000本出して売り切れたけど100000円の売上。こうやって売上が倍、3倍変わるケースもよくあります。

稼げる代わりに結局リスクを農家が背負う形になるのです。市場を知り、消費者のマインドを掴み、直売所やスーパーへの営業も行い、やっと自分がつけた価値で商品が売れ残らずに捌ける。

そこでの価格はバランスで決まる反面、半ば博打性も含んでいます。最も利益が出るのが道で売ることというのも最たる話で、流通も小売店の陳列料もかからない道売りは成功すれば丸々利益(稼ぎ)に直結するのです。ただ、それをするには生産者である農家が自ら販売も担うことになり、長時間労働や体力の問題も出てきます。長時間の労働と自然に左右される農業、儲ける事も重要ですが、それ以前に安定を選びます。

農協の話に移ります。
あまり知られていない話ですが日々農協と対面しているK君から貴重な話をいただきました。まず作物の価格は農協が決めます。それもある地域の農協だけでなく全国ほぼ一律、生産量と販売価格のバランスで値決めしていきます。農家は前述のような価格を自由に決めるというのとは正反対で作った作物を農協に持ち込み農協が決めた買値で一方的に買い叩かれます。
またその際には農協が決めた形、大きさに至らない作物は跳ねられ、買い取ってもらえません。一生懸命作った作物の何割かはこの段階で農協が扱う商品ではなくなります。どのくらいの価格なのか?が気になりますが、実際は末端価格の約半分しか手元に入りません。農家は農協と交渉もできないし、一方的に決められた価格を受け入れるしかない状態でそれが当たり前となっているのです。農協へ売る為には味や安全はほとんど関係なく一定の形のものを大量に持ち込む農業が最も稼ぐ農家なのです。当然それを可能とするF1”種”は農協を通じて農家へ売られ定着していきます。無農薬や有機栽培を誰もしなくなっていった、という要因も農協にあります。

農協に納めた作物は卸売市場を経由、仲買問屋を経由してスーパーへと3段階をかけて流通します。都度、人件費も運搬費もかかり最後はスーパー陳列の場所代も。農作物の半分は流通価格という所以もここにあります。

この農協を通じた流通経路は鉄壁で農家を安定させているとも言えますが、美味く安全な野菜を消費者に届けるという事とはほぼ間逆な構造になっていることが問題でもあります。また農業を生き生きと担おうという若者はじめ後継者の育成にもブレーキがかかっている。そもそも農業を儲からない仕事にしているのは農協の有り様なのかもしれません。

それらを俯瞰して見るとやはり農業を稼ぐようにするには2つしかありません
過去に投稿した「5000円のレンコン」のように高品質少数の商品を特定の料亭や得意先に売るニッチ戦略を取っていくか、この記事に書いた流通網を自ら作り農協を通さずに販売するルートを作り出していくか、どうか。

前者は成功例は多々報告されていますが、一斉に、多数の農家が取り組むには無理があり、後者は流通網と消費者を作るのは一介の農家ではとてもできません。次回以降の投稿に委ねますがやはり稼ぐ農の為には、「生産ー流通―販売」この3つを自前で作り出すという力が求められます。たぶんそれができるのは企業でしかないのでしょうが、企業だからできるわけでもない。

狭いですが可能性を探索していきたいと思います。

投稿者 tano : 2022年04月19日 List   

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2022/04/5698.html/trackback

コメントしてください