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2021年07月29日
100年先も続く、農業を。
・新規就農者を中心とした提携生産者が栽培した農産物の販売
・環境負荷の小さい農業を広げるためのあれこれ
を事業内容に掲げる、「株式会社坂ノ途中」の志。
以下、【坂ノ途中のこと】より引用
坂ノ途中が目指しているのは、
環境負荷の小さな農業に取り組む人たちを増やすことです。
100年先もつづく農業のかたちをつくりたい、
そして持続可能な社会にたどり着きたいと考えています。
ひとつの方法として、私たちは農産物の販売をしています。
つながっている農家さんは、西日本を中心におよそ300軒。
そのうちの9割が新しく農業に挑戦した人、つまり新規就農者さんです。
農業をはじめて間もない人たちと連携して事業がーーかろうじてなりとも
ーー成り立っているのは、おそらく日本で初の事例だと思います。
私たちがどんなことを考えて、どんなことをしているのか。
書いていたらずいぶんと長くなってしまったのですが、
紹介させてください。
坂ノ途中 小野邦彦
■未来からの前借り、やめましょう
農業ってとても多面的です。
食べものだけでなく、繊維や薬の原料も生産します。
中山間地域の活性化にも一役買います。
農地は土砂崩れや洪水を防いでくれることもあります。
田畑にいて、いろいろな生き物の気配を感じることが、楽しかったり
気持ちよかったりもします。
あるいは、農業というのは、実はとても大きな環境破壊の要因だったり
もします。
森林伐採のいちばんの理由は、農地の確保です。
砂漠化の要因だって8割以上が農業由来だといわれています。
そんな視線で眺めると、
農薬や化学肥料に代表される外部資材に依存して営まれる今の農業は、
ずいぶんと危ういものに見えます。
現代農業は、今、この瞬間のコストは縮減できるし、安定した多くの
収穫が期待できます。
でも、その一方で、環境への負担は確実に積み重なり、水質汚染や土壌
の劣化を招いています。
エネルギーもたっぷり使います。生物多様性は損なわれていきます。
つまり今の農業の効率性の高さは、
未来に目を向けないことで実現されているという側面があるのです。
私たちはそのかたちを変えたいと思っています。
未来からの前借りをしない農業を広げていこうとしています。
■新規就農者のパートナーになることで、 農業を持続可能に
坂ノ途中のパートナーは、新たに農業に挑戦している人たち、
「新規就農者」です。
就農を希望する方のなかには、有機農業など、農薬や化学肥料への依存
度を減らした農業や、気候や土質に合わせた栽培スタイルを志す人が
とても多いです。
けれども、就農を希望する人たちのうち、実際に就農までたどり着く
のはごく一部。
営農を継続できるのはさらに一握りです。
その大きな理由は、売り先がないこと。
実は、新規就農者の栽培技術は、相当に高い。
就農が厳しい戦いになることを覚悟の上で飛び込むような人たちだから、
ほんとうに熱心に勉強しているし、よく働く。
経験不足を補うために各地の生産者を訪ね参考事例をかき集める。
そんなふうにして育てられた農産物はかなり高い品質を持つものです。
ただし、ほとんどの場合、小規模からのスタートです。
借りられる農地は、狭い、日当たりが悪い、水はけが悪いなど、
条件が良くないことも多分にあります。
結果として、収穫できる農産物は少量、または不安定になります。
美味しくても少量で安定しない農産物を扱いたいという企業は、
ほとんど存在しないのが現状です。
坂ノ途中は、新規就農した人たちと連携して、
彼ら、彼女らが栽培した農産物を販売することを主な業務としています。
収穫は少量で安定しないけれど、良い農産物が販売できるしくみ、
つまり新規就農した人たちが、環境を損なうことの少ない農業を
はじめやすい、つづけやすいしくみ、それを作ることが、
新しく農業を営む人たちを増やし、
農業を未来につづくものとする最短ルートだと考えています。
農業の担い手が減り、農地が空き地になっている現代だからこそ、
新規就農する人を増やせる余地があります。
暗いニュースとして語られる、
農業の担い手減少や耕作放棄地の増加を、
前向きな変化のきっかけにしようとしています。
私たちの坂ノ途中という社名は、成長途上にある就農希望者や新規
就農者の良きパートナーであろうという願いが込められています。
■坂ノ途中の工夫と挑戦
とはいえ、
小規模、不安定な生産になりがちな新規就農者さんの農産物を取り扱う
のって、やっぱり大変です。
基本的に季節に合わせた栽培をお願いしているので、
時期によって野菜の種類は大きく変わりますし、
そもそも取り扱えなかったり、量が限られる品目も多いです。
(フルーツは今でも少ないし、農薬を使わない栽培が難しい白菜も、
毎年足りません)
「小松菜もう10束、追加できません?」
「10は難しいなぁ。あと5束くらいならいけそうやけど」
「じゃあ5束お願いします、もう5束はほかの方探しますわー」
そんな、細かなやりとりが多くなります。
野菜を集める「集荷」だって、大産地から送ってもらうより、
うんと手間もコストもかかります。
農産物流通に詳しい方からすると、とても無謀な行為に見えるようです。
とくに創業間もないころは、
農家さんからも流通業者さんからも八百屋さんからも、
「意義はわかるけど、そのやり方は無理やと思う」
なんて、何度となくいわれました。
仲間が集まり、野菜の流通量が少しずつ増えてきても、
「で、スポンサーは誰?」
「社長さんって、お金持ちの息子さん?」
そんなふうに訊かれます。
それくらい、一般的な流通より手間のかかる作業をしています。
最近は、社内にITエンジニアが加わり、
それまで人力でどうにかこうにか乗り越えていたこの膨大な作業を、
自動化できる部分は自動化できるよう、
オリジナルのシステム開発を進めています。
もしかすると、少量不安定な農産物を扱うことが無謀じゃなくなる、
そんなかたちができていくかもしれません。
■創意工夫のつまった、バリエーション豊かな野菜
いっぽうで、僕たちのような農産物の取り扱いをしていると、
手間がかかるだけでなく、良いこともたくさんあります。
農家さんとのやり取りが頻繁にあって、
お互いの事情を知っているので柔軟に対応しやすいです。
結婚資金を貯めている農家さんからの買い取り量を増やすための
工夫を一緒に考えたり、
雪が積もり収穫ができなくなる地域の農家さんからは、その前に
買い切るようにしてみたり。
新規就農した人たちは農業に対して前向きです。
あれこれ見慣れない西洋野菜の栽培に取り組む人、
地域の伝統野菜、在来野菜を発掘して育てる人。
あるいは、環境に負荷をかけないかたちで、
収穫の時期を少しずらしてみる人。
おかげで、坂ノ途中にはとてもバリエーション豊かな野菜が並んでいます。
もちろん、扱える野菜がそもそも美味しいことも、大きな特徴です。
みんな、好きで好きではじめた農業です。
とてもよく勉強していますし、創意工夫を積み重ねます。
量や生育速度を無理に追いかけないスタンスで、品種も選ぶし
栽培もしています。
だから、しみじみとおいしい、そんな野菜が多いです。
■そんなわけで
そんなわけで坂ノ途中では、野菜を中心とする農産物の販売をしています。
環境に負担をかけない農業を志す人たちでも、好みのスタイルはさまざま。
レストランに向けた珍しい品種に力を入れたい、
研修生を受け入れられるようにしたい、
自然農法にチャレンジしたい、自家採種にこだわりたい、
などなど。
坂ノ途中では、多様な販路を維持していくことで、
いろいろな営農スタイルを肯定したいと思っています。
「こんなスタイルじゃないと、ウチは取引しませんよー」じゃ、
ちょっとさびしいですもんね。
農業を持続可能なものにしよう!未来につながるものにしよう!
そういう価値観を共有できていれば、
その表現方法は違っていても、協力し合って、少しでも前に進みたい
と思っています。
だから、坂ノ途中では個人の方へ向けてのネット通販だけでなく、
レストランさんや小売店さんへの卸販売や、京都で八百屋の運営を
しています。
投稿者 noublog : 2021年07月29日 TweetList
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