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2013年09月05日
農を身近に★あぐり通信vol.9~TPPという現実を受け止めて何ができるか
みなさん、こんにちは。
TPPについては賛否両論ありますが、まずは以下をご覧ください。
『過保護は大ウソだった 日本の農業が衰退した本当の理由』週プレNEWS 8月19日(月)6時10分配信
-以下引用-
現在、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉における最大の焦点となっている、日本の農業だか、これまで“閉鎖的”でなおかつ“過保護”であると、しばしば諸外国の非難を浴びてきた。
だが、東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授は、この見解に対して首を横に振る。
「まずハッキリさせておきたいのは、日本の農産物市場はまったく閉鎖的でないということです。それどころか一般的に“聖域”と呼ばれるコメ、小麦、乳製品、砂糖、牛・豚肉の5品目を除けば、日本の農産物の関税は野菜類が3%、生花が0%といったように、先進国の中でも極めて低い。どんどん関税を下げていった結果、日本の農業が衰退していったと考えるほうが正しいのです」
さらに、鈴木教授が続ける。
「TPPの議論でよく耳にするのが、TPPという『外圧』によって日本の農業を変えていくしかないという指摘です。農業を“過保護”にしてきたことで合理化が進まず、国際的な競争力がなくなった、という理由ですが、これも現実は正反対です」
実は、日本に開放を求めている諸外国のほうが、農家への保障は手厚い。
「例えばアメリカやカナダ、EU諸国などでは、農産物や乳製品の価格が下落すると、政府がそれを買い上げて価格を維持する制度があります。日本にはこうした制度はありません。加えて、これらの国々が力を入れているのが補助金を使った農家への所得補償です。ヨーロッパでは農業所得全体の95%が補助金で支えられており、アメリカはコメ、トウモロコシ、小麦の農家だけで多い年は約1兆円も補償しています。これに対して日本の補償は農業所得の2割を切る程度です」(鈴木教授)
こうなると、日本の農業にとってTPPが致命的な影響を与える可能性のほうが高いのではないか。鈴木教授も言う。
「関税は下げ、政府の買い支えもなく、補償も少ない……。それでもまだ日本の農業は“過保護”だといえるでしょうか? むしろ長年、外圧に晒され続けて衰退しきった日本の農業が、TPPで息の根を止められようとしているのが現実なのです」
(取材・文/川喜田研)
-以上引用終わり-
上記の状況認識を得ると、TPPをめぐって当たり前のように言われていることの前提条件がひっくり返ります。
引き続き、特にアメリカの補助金制度を見ていきましょう。
続きはぽちの後で。
米国の安い農作物は「補助金漬け」政策に支えられている
国の農作物の安さ理由は、至れり尽くせりの輸出補助金にあるようです。
例えば、「CCP」という輸出補助金は、市場価格の低下による差損を補填するタイプの補助金で、差損を補填することで、安価な農産物を輸出し続けることを可能にするものです。
1995年から2009年まで出された輸出補助金総額は、実に2452億ドル(22兆円)にも及び、この膨大な輸出補助金により、米国の農作物の安さを維持しています。中略
JAが米国の農業団体と意見交換した記録を見ると,意外なことには、米国の農業団体はTPPに熱心とはいえません。モンサントなどは大乗り気なのに対して、いささか引いた対応をしています。 「ホント言うとやってほしくないんだよなぁ」といった感じです。その理由はすこぶる明瞭です。
米国は、今まで自由貿易の旗手のような顔をしながら、実はトリッキーな手を使っていました。それが輸出補助金というやつです。
これはたびたびWTOでもやり玉に上げられながらも、あのてこのてを使って1995年から2009年まで出された輸出補助金総額は、実に2452億ドル(22兆円)というのですからハンパじゃありません。
これらは、米国が農業輸出の目玉としている、トウモロコシ、大豆、小麦、米、綿花に7割が投入され、それ以外にもピーナッツ、ソルダム、乳製品、キャノーラ(菜種)などにも支払われています。(資料1参照)
まさに日本と縁が深い作物ばかりです。残念ながら、米国産トウモロコシがなければ日本畜産は明日にも壊滅しますし、大豆がなければ醤油、味噌ができず、小麦がなければパンもケーキも焼けなくなります。
これだけ偏ったシフトになっているので、米国の作柄に毎年日本の食卓は左右されることになりまます。もちろんリスク分散は考えてはいるのですが、なにせ安い。そして大量に確保できるというメリットのために米国に対する穀物一極依存はなかなか改まりません。
安さの原因は輸出補助金なのですが、農作物に特有の天候異変で市場価格が上がったり下がったりすることで農業収益が低下することを防ぐ意味合いがあります。いわばセーフティ・ネットです。
これには5種類の補助金枠があります。
①直接支払制度(Direct Payments)・・・土地の価値を評価に対して農業者に直接支払らわれるタイプの補助金。年間約50億ドル。
②CCP(Counter Cyclical Payments) ・・・うまい訳語が見当たりませんが、市場価格の低下による差損を補填するタイプの支払い。差損を補填することで、安価な農産物を輸出し続けることができるために、WTOで禁止されている輸出補助金に相当するとして国外からの強い批判を浴び続けている。
③マーケティング・ローンの提供・・・農産物の販売のための農業ローンを提供しLDP(ローン不足払い)になった場合に差額を政府が補てんする仕組み。
④ACRE(Average Crop Revenue Election Program)・・・08年に登場した補助金枠で、価格、低収量収入の最低保証をする補助金。トウモロコシ、大豆生産者の全部が加盟していると言われる。
⑤作物保険 作物保険加入にあたっての政府補助金 ・・・農業共済加入に対して与えられる補助金枠。
至れり尽くせりですな。補助金漬けと揶揄されている日本の農業補助金など可愛らしいものです。おそらくTPP交渉では間違いなく日本が言わずともオーストラリアやNZあたりからの猛攻撃に合うことは避けられないでしょうね。
特に②のCCPはひどい。もしこれが日本のコメならば、天候不順で収量が低下したり、品質が悪いために市場価格が下がったら、その差損を政府が埋めてくれるということになります。引用終わり
いかがでしたか?
TPPの賛成派も反対派もこうした状況認識をまずは収集し学ぶことが必要だと思います。
その上で、どうするか?ですが、TPPはあくまでお互いが「交渉する」場です。ですから、引用にもあったように日本もアメリカに対してISD条項などを使って圧力をかける。あるいは自由化を迫るなどが求められます。
しかし、一方で大衆は気付き始めてています。「どうせ日本政府にはそのような外交能力はないだろう。アメリカの言いなりにしかならないのだろう」と。
実は、経団連以外に、一部の優良農家や農業企業の中にも「TPPでかえって農家は圧力を受けて強くなるのだ」という賛成派がいます。その論理も「政府=お上には頼らないでやっていくしかないのだ」という認識とも思えます。
そういう意味では「なにがなんでも反対!政府は農家を保護しろ!」というJAを始めとした一部の反対派は片手落ち感が逆に残ります。
当ブログももちろんTPPには反対ですが、それは農業がダメになるからだけではなく日本がアメリカの属国と化す危険性があるからです。
しかし、現実的には政府はTPPに加盟するのですから、この現実を直視した上で方針を考える必要があります。
「どこまでいってもお上はあてにならない」⇒自分たちでなんとかするしかない、という気迫を持てば、農業≒食を守るためになにができるかと改めて考える土壌に乗れます。
例えば、企業がNWを組んで農家と提携して、社員の食い扶持分は確保する。
あるいは企業が自給自足のために農業事業を立ち上げる。
市場で勝つためのNWではなく、脱市場下で生き残るためのNW化など、今からでもできることはたくさんあります。
政府が助成金を出せないのなら心ある企業NWがそういう制度を確立することもできるのです。
当ブログはそうした視点で今後も「新しい農のカタチ」を追及していきます。
投稿者 hirakawa : 2013年09月05日 TweetList
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