| メイン |

2015年12月24日

『微生物・乳酸菌関連の事業化に向けて』-16 ~エネルギー4 ミトコンドリア~

mitochondria1
いつの間にか、今年も残り僅かとなりました。

これまで、微生物関連の事業化の可能性を探り、既存事業の紹介シリーズ「エネルギー編」も、本日で一旦の締めとさせていただき、新年からは、いよいよ皆さん最も興味深い「ヒト」の身体に関連する事業を扱っていきたいと考えています。
本日は「エネルギー編」のまとめとしても、また「ヒト」あるいは「生命」に深く関係する『ミトコンドリア』に着目してお伝えします。

そう、ご存知のように、ミトコンドリアは、人類はもとより「真核生物」の全てが備えている貴重な「細胞の発電所」といわれていますね。ミトコンドリアは「物を食べる、呼吸をする、運動する」そのようなすべての生体活動で使うエネルギーの源といえるATPを生み出す、『エネルギー自立創生の始源』ともいえるかもしれません。

にほんブログ村 ライフスタイルブログへ

そのエネルギー生成の仕組みは、『食物+酸素 → 水+二酸化炭素+ATP』
ATPはたっぷりと充電された電池のようなもので、真核生物は全て、このATPが分解される際に生じるエネルギーを使って活動しています。細胞膜を介した能動輸送に使われるエネルギーの源も、このATPです。(参考:リンク

では、ミトコンドリアでエネルギーが生まれる仕組みに迫りたいと思います。(以下抜粋・引用:Thinking every day, every night

◆エネルギーとATP
生物はその活動のためにエネルギーを必要とします。そのエネルギーを最終的に産生するのがミトコンドリアの働きです。
教科書的にいえば、ミトコンドリアは、体内に存在するADP(アデノシン2リン酸:C10H15N5O10P2)を元に、よりエネルギーの高いATP(アデノシン3リン酸:C10H16N5O13P3)を合成し、生命はこのATPをADPに分解するときに放出されるエネルギーを利用して生命活動を行います。

実際にはこんなに簡単な話ではないし、前後を含め、生物の捕食から消化、炭水化物の分解、呼吸による酸素の供給などが複雑に絡み合って、生命全体の営みが成り立っているわけですが、ひとまず話を簡単にしておきましょう。

興味深いのは、人間に限らず、動物や植物、細菌に至るまで、真核生物(細胞に核を持つ生物)は、みな決まってこのADP⇔ATPの仕組みでエネルギーを利用しているということ。
ATPはいわば「エネルギーの貯蔵所」ともいえるので、アナロジーとしては、蓄電装置、蓄電池を想定できます。
すべての真核生物がATPという単純な1物質のリン酸基にエネルギーを保管し利用しているという事実はなかなか感慨深いものがあります。

 

◆意外なATP産生メカニズム
さて、ここで当然出てくる素朴な疑問は、「では、ミトコンドリアはこのADP⇔ATPをどのような神ワザ的なメカニズムで実行しているのだろう?」ということ。

これまで「ミトコンドリアとは水力発電所のようなもの」と想像するのが精一杯でしたが、このメカニズムが、1997年以降、電子顕微鏡で視覚的に確認できるようになりました。

そしてそこで明らかになったことは驚きの内容!
何と、ミトコンドリア内で実際にATPを合成しているATP合成酵素は、まさに水力発電所のタービンのように高速回転し、その力を使ってATPを合成していたのです!しかも1秒間に1400回転(ヒトの場合)というものすごい勢いで。

 

◆ミトコンドリアの構造について概説します

o0800052713397689440

ミトコンドリアは2重構造になっていて、外膜内膜があります。外膜は細胞内の基質(空間)と接する境界。内膜の内部はマトリクスと呼ばれ、ここがいわばミトコンドリアの活動の主戦場です。
外膜と内膜の間は膜間腔と呼ばれ、いわば外界(細胞内基質)と内界(マトリクス)の緩衝地帯にあたります。
内部に行けば行くほど、ガードが固く、入っていける物質が少なくなっていきます。水素や酸素などの低分子であれば容易に行き来できますが、高分子は何らかの力で強制的に出し入れする必要があります。

ATP合成酵素はこの内膜に存在し貫いて、内側のマトリクスと外側の膜間腔の両方に面しているタンパク質です。
ATP合成酵素は膜間腔とマトリクスの間の抜け道を備えており、その抜け道にタービンのような部位を接しています。

水力発電では水の位置的な落差(水位差)を利用してタービンを回し、その力で電気を発生させますが、水力発電でいう「水」はミトコンドリアでは、H+(水素イオン=プロトン)であり、「水位差」はミトコンドリアでは、膜関腔とマトリクスの間のH+の濃度差になります。
この濃度差が発生することにより、膜間腔のH+がマトリクスに流入し、それがATP合成酵素を回転させ、その力でADPからATPが合成されるのです。

わかりやすい解説がYoutubeにアップロードされています。


(JST Channel:科学技術振興機構)

ではなぜ、膜間腔とマトリクスの間にH+の濃度差が生じるのでしょう?

それを見ていくためには、エネルギーの利用に関して、もう少し広い視野で生物の活動を見ていく必要があります。
ここからは少し説明が細かく&難しくなりますが、ご容赦ください。これでもかなり端折った説明になっています。

 

◆エネルギー産生の全体像
動物を例に取りましょう。動物は他の生物を捕食し、炭水化物や脂肪やタンパク質などを体内に取り込みます(消化)

このうち炭水化物について見て行きましょう。炭水化物(グルコース C6H12O6)は、細胞に運ばれると、その細胞基質内でピルビン酸C3H4O3や、NADHに分解されます。(解糖系)

ピルビン酸は、ミトコンドリア内のマトリクスに送られます。ここからはすべてミトコンドリアの世界での出来事です。

ミト2

ミトコンドリアに送られたピルビン酸はいったんアセチルCoA(C23H38N7O17P3S)に変換された後、クエン酸回路(TCA回路)に送られます。
クエン酸回路では分解や合成を繰り返しながら、NADHFADH2などといった物質を生成します。

生成されたNADHやFADH2は、ミトコンドリアの内膜に埋め込まれた「NADH脱水素酵素」など数種類のタンパク質に渡されます。
これら一連のタンのパク質は「電子伝達系」と呼ばれ、呼吸で得られた酸素O2の酸化作用の助けを借りて、渡されたNADHからH+(プロトン)と電子(e-)を引き剥がし、この電子の電荷の力により、H+を膜間腔に押し出すとともに、電子伝達系の次のタンパク質へ電子を受け渡します。
こうやって電子伝達系の間を電子が渡されていく過程で、次々とH+が膜間腔に汲み出されていくわけです。

そして、H+が電子伝達系により次々と膜間腔に汲み出されると、外部の膜間腔と内部のマトリクスの間にH+の濃度差(電気化学的勾配)が生じます。

そう、この濃度差が、先に挙げたATP合成酵素を回転させる源になっているのです。

ATP合成酵素にはH+の通り道が設けられており、H+がその抜け道を通って濃度の高い膜間腔から濃度の低いマトリクスへ流れこんでいき、その力でATP合成酵素が回転し、エネルギーがATPに蓄えられていきます。

私たちは呼吸によって酸素を肺から体内に取り込み、二酸化炭素を吐き出すと習いました。
上の図を見ていただければ分かる通り、ミトコンドリアは呼吸により酸素O2を受け取り、クエン酸回路や電子伝達系によりCO2とH2Oを吐き出しています。
つまり、ここまで述べてきたミトコンドリアのエネルギー産生のメカニズムは、呼吸による生物代謝そのものの説明でもあるのです。

呼吸によるエネルギー産生を化学式で煎じ詰めると、以下のように書けます。(式は化学式として正確ではありません。あくまでイメージです)
C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O+エネルギー(ATP)

なお、図を見ていただければ分かるように、解糖系でもATPが生成されます
また、クエン酸回路でもATPが産生されます。
しかし、電子伝達系のATP合成酵素によるATP産生とは効率が比べ物になりません。
1つのグルコースから、解糖系やクエン酸回路では2つのATPが産生されますが、電子伝達系では32とか34もの大量のATPが産生されます。

ついでにいうと、たとえば解糖系で2つのATPが産生されるといっても、実際には解糖系の反応の過程でATPのエネルギーを活用(消費)しており、消費と産生の差し引きが+2ATPだということです。

 

◆細胞内小器官としてのミトコンドリアの特異性
進化の観点から見ると、太古の世界では酸素が非常に少なく、真核生物は酸素を必要としない解糖系のみでエネルギーを確保していたと考えられています。酵母菌や乳酸菌などは今でもそうですね。上図の左側の部分のみしか工程がなくて、乳酸菌の場合はピルビン酸の代わりに乳酸菌を生成しているわけです。

その後、光合成をする植物の繁栄により、大気中に酸素が大量に発生するようになると、バクテリアのような単細胞生物の中には、この酸素の酸化作用を利用して、上図の右側の工程、すなわちクエン酸回路と電子伝達系の部分を実現し、効率よく大量のATPを産生するものが現れてきたと考えられています。

そして、そのバクテリアを何らかの方法で、細胞内に取り込んだのが、現在の真核生物のミトコンドリアというわけです。(真核生物側から見たら「取り込んだ」あるいは「囲い込んだ」かもしれませんが、ミトコンドリア側から見たらもしかしたら「寄生した」とか「共生した」ということなのかもしれませんね)

あくまでも有力なひとつの仮説にすぎませんが。

なぜこのような進化を辿ったと考えられているかというと、ミトコンドリアは細胞の核に存在するDNAとは別に独自のDNAや、タンパク質を合成するリボソームなどの器官を持ち、バクテリアなどの生物に酷似しているからです。細胞の中にありながら、それ単体であたかも独立した真核生物のような「なり」をしている特異な存在、それがミトコンドリアなのです。

 

◆DNAは母親からのみ
最後に。
・ミトコンドリアは独自のDNAを持っていると述べましたが、そのDNAは母親からのみ受け継がれます。(受精の時に精子のミトコンドリアが消滅します)
つまり現在生きている真核生物のミトコンドリアのDNAは、太古の昔の真核生物のミトコンドリアのDNAをそのまま受け継いで今日に至っているわけです。(もちろん突然変異でDNAは変容していきますが)

 

===
いかがでしたか?
ミトコンドリアは、自立してエネルギーを創出している。
しかし、この「自立」という表現は不適切かもしれません。全ては外圧下、周りの環境要素と密接に関連しながら、エネルギー産出の仕組みを創り上げたと云うべきでしょう。

新年からは、微生物と「ヒト」について考察していきますが、この視点を忘れずに追求を重ねていきたいと考えています。
それでは皆さま、良いお年をお迎え下さい。・・・そして、来年もどうぞよろしくお願いいたします。
佐藤有志

投稿者 noublog : 2015年12月24日 List   

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2015/12/3410.html/trackback

コメントしてください

*