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タネから次代の農業を考える<プロローグ>~伝統野菜は“伝統的”じゃなくなった?

Posted By staff On 2013年3月18日 @ 8:44 AM In 未分類 | No Comments

■はじめに
こんにちは。新シリーズ「タネから次代の農業を考える を始めていこうと思います :-)
次代の農業を考える上で欠かせないのは“みんなの意識がどこに向かっているか?”ということみんなの期待を掴むことです
本ブログでは、近年(特に3.11以降)顕在化してきた意識潮流として「脱市場」「自給志向」を提唱しています
「★農における業態革命~VOL.2 農業の業態革命のきっかけ。自給志向が高まってきたのはなんで?」(リンク [1])より。

>自給志向、自習志向は、その背後に、市場からの脱却≒自給自足的なイメージが孕まれている。とりわけ311以降、この流れが強く顕在化してきた。
70年のヒッピーは、自給志向的、あるいは共同体志向的であり、ややこれに近い雰囲気を持っていた。つまり自給志向や自習志向は、豊かさが実現された時から、既に登場していた潮流である。<
ここで早速「自給志向」という概念が出てきましたが、「豊かさの実現」というキーワードから考えてみます。
日本における「豊かさの実現」は1970年に三種の神器と呼ばれた家電製品がほぼ全国民に行き渡ったことからも伺えますね。
高度経済成長第一の価値観≒私権第一の価値観の元では、環境破壊や共同体の解体 根無し草の個人の増大という現象を生みました。 
しかし、この時代に、それまでの高度経済成長第一の価値観に逆行するカタチである人たちが現れました。

「脱市場」「自給志向」の意識が最初に表れたのは「豊かさが実現」した70年代。ヒッピーの出現でした。しかし、80年代のバブル経済=市場拡大のごまかし延命措置によって、この意識潮流は一旦沈静化します。その後の大きな出来事は、90年代のバブル崩壊、00年代のリーマンショック、10年代の3.11。これらを経て、いよいよ「市場拡大(経済の回復)はもはや見込めない」「現在の統合階級(政治etc)への期待もできない」という現実を直視せざるを得なくなり、再び顕在化してきているのがこの「脱市場」「自給思考」です。
こうした期待に応える農業を、本シリーズは“タネ”という切り口から考えていこうと思います :o


プロローグの今回の記事で扱うのは【伝統野菜は伝統的じゃなくなった?】です。
私たち類農園でも普段つくっている「伝統野菜」 最近、再評価されてきており、野菜の露店販売をしていても、お客さんからの反応が良いです。また地産地消との関連も強そう。「脱市場」「自給志向」に応える可能性があるのでは :roll: と調べ始めたのがきっかけでした
○伝統野菜のF1種・・・?
伝統野菜と聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか?
例えば農水省のHPでは、こんな風に紹介されています。

伝統野菜とは、 その土地で古くから作られてきたもので、採種を繰り返していく中で、その土地の気候風土にあった野菜として確立されてきたもの。地域の食文化とも密接していました。

ところが、この伝統野菜にF1化されたものが出回っているというのです
例えば大和まなもその一例。F1化されています。→リンク「大和野菜を全国区に!」 [2]
F1種は、実質的に採種は行えません。種苗会社が開発したものを、小売店から仕入れるのが一般的です。つまり、一代限りのタネなのです。
 「伝統」なのに、その土地の農家がタネを採って代々引き継いでいるのではなく、種苗会社が品種改良したり、思惟的に交配させてタネを採っているのです。何か違和感を感じます。
○伝統野菜のタネ、採取地はヨーロッパ・・・?
さらに、よく調べてみると、伝統野菜のタネがなんとヨーロッパで作られているものまであるのです 例えば、新潟県の伝統野菜、「寄居かぶ」。こちらのオンラインショップで扱われているタネは、採種地がイタリアになっています。→リンク [3]
新潟県の伝統野菜のタネが、イタリアで採られている・・・やっぱり何かヘンだと思いませんか?
この違和感はどこから来るのでしょうか ??
■伝統野菜とF1種を再整理
今一度、伝統野菜とは何か?F1種とは何か?を整理してみます。
○伝統野菜とは?
日本では、農耕が始まってから1960年代までの長い間、育てた作物から種を採り、そのタネから作物を作るという営みが続けられてきました。そうした中で形質が固定して言ったものは固定種とよばれています。本来の伝統野菜もその固定種のひとつです。

昔は、世界中の農民が、自家採種をしていた。
よその土地から入手したタネでも、よくできた野菜からタネを採れば、その野菜はその土地に適応して、その風土に合った子孫を残す。こうした植物の適応力を馴化といい、馴化と交雑によって、世界各地に様々なその土地固有の野菜が生まれた。(中略)よくできた野菜を選抜し、タネ採りを続ければ、普通三年も経てばその土地やその人の栽培方法に合った野菜に変化していく。たとえ土地に以前からあった野菜と交雑したりしても、それはそれで、八年も選抜していると雑種形質が固定し、その土地の新しい地方野菜が誕生したりする

(「タネが危ない」著:野口勲より)

もともと日本にあった野菜は「ワサビ」くらいで、ほとんどの野菜は世界中から入ってきた伝来種です。それが日本各地に広がり、それぞれの気候、風土に適応し、時には他の野菜と自然交雑することによって、現在の地方野菜、伝統野菜に変化してきたのです。

(著:野口勲、関野幸生「固定種野菜の種と育て方」より)
本来の伝統野菜とはこういったものなのですね。
採種を繰り返すことでその土地の気候・風土に馴化し、形質が固定されたものが固定種です。固定されたといっても、土や気候は毎年変わっていますから、そうした変化に毎年対応しながら少しずつ適応しながら受け継がれているものなのです。
現在一般的に「伝統野菜」として市場に出回っているものは、各自治体が指定したものです。しかし、指定の基準は非常に曖昧で、各自治体によっても異なっています。そして「固定された種」や「自家採種を繰り返しているもの」といったしては特にないようです。例えば大和野菜の場合、以下のように記載されています。
奈良県HP [4]より

大和の伝統野菜とは、戦前から本県での生産が確認されている品目で、地域の歴史・文化を受け継いだ独特の栽培方法等により、「味、香り、形態、来歴」などに特徴をもつもので、18品目を認定しています。

ですので、今、スーパーなどで「伝統野菜」として売られていても、F1種である可能性もあるのです。
○F1種(ハイブリット種)と固定種
つぎに、F1種の特性と固定種の特性をを比べてみましょう。

【固定種の種】
・何世代にもわたり、絶えず選抜・淘汰され、遺伝的に安定した品種。ある地域の気候、風土に適応した伝統野菜、地方野菜(在来種)を固定化したもの。
・生育時期や形、大きさなどが揃わないこともある
・地域の食材として根付き、個性的で豊かな風味を持つ
・自家採種できる
・肥料や農薬がなくても健全に育つ
【F1種の種】
・異なる性質の種を掛け合わせてつくった雑種の一代目
・F2(2代目)になると、多くの株にF1と異なる性質が現れる
・生育が旺盛で特定の病気に大病性をつけやすく、大きさや風味も均一。大量生産、大量輸送、周年供給などを可能にしている
・自家採種では同じ性質を持った種が採れない(種の生産や入手価格を種苗メーカーにゆだねることになる)
・農薬や肥料の使用が前提

(「固定種野菜の育て方」「いのちの種を未来に」「タネが危ない」などから作成)
(F1種について詳しくはこちら→【コラム☆】~世界初のF1種をつくったのは日本人だった☆ [5]
ここで私たちが「自給志向」「脱市場」への可能性を感じるのは、「自家採種できる」「肥料や農薬がなくても健全に育つ」などといった固定種の性質です。自家採種を行うことができれば、種苗会社からタネを買う必要もありません。自分たちで何代も作物をつなぐことができます。さらに肥料や農薬がなくても、馴化することできちんと育つ。
当初私たちが直感的に感じていた、伝統野菜への可能性もこうした、固定種としての性質によるところではないかと思うのです。
■F1種はどのようにして普及したか?
しかし、現在スーパーで売られている野菜や、日本で流通しているタネのほとんどがこのF1種であるといわれています。F1種はどのようにして普及したのでしょうか。
F1種が始めてつくられたのは、大正時代です。しかし、普及したのは60年代、高度経済成長期だそうです。

さらに時は流れて昭和41(1966)年、野菜の指定産地制度を含む「野菜生産出荷安定法」が公布されました。「野菜指定産地」とは、指定野菜(国民生活上きわめて重要、つまり消費量が多く安定供給が必要と政令で定められた野菜。14品種)の種別ごとに、その出荷の安定をはかるために当時、農林水産大臣が指定した集団産地のことをいいます。(中略)指定産地になっておけば、指定野菜ばかりを大量に生産する義務が生じる代わりに、野菜が取れすぎて価格が暴落しても、廃棄処分することで価格が補填されるからです。こうして日本中に、いわゆる百姓ではなく、トマトならトマトだけを、キャベツならキャベツだけをつくる農家が生まれていきました。農業のモノカルチャー時代の到来です。それまでの農家は自分で種を採り、自分が食べるものは自分でつくっていました。それが「大量出荷するためには、規格どおりの野菜が歩留まり良くできなくちゃダメだ」ということになり、指定産地向けに品種改良された、周年栽培が可能で、品質が安定しているF1種が一気に広がっていったのです。

高度成長期には、急激な農業従事者の減少と、兼業化率の上昇が起こっています。そのため、農産物についても、工業製品のように、効率的に生産する必要性が生じたとも考えられます。
しかし気になるのは、消費者側の欠乏・期待です。F1種は消費者側にもすんなりと受け入れられていったわけですが、なぜうけいれられたのでしょう?どういった欠乏に応えたのでしょう?
F1種の性質である、「均一な外観(きれい)」「周年出荷できる(どの季節でも食べられる)」といった性質は、快適な暮らしや、清潔できれいな暮らしをイメージさせます。しかし実際には、そのために農薬を使ったり、土の貧弱化により栄養価が下がったり、季節のものでなければ味は落ちます。これは、快美幻想のひとつといえそうです。
以下、「超国家・超市場論9 私権闘争の抜け道が、交換取引の場=市場である」(リンク [6])より

性幻想を高めるための毛織物やレースをはじめとして、私権圧力下の解脱回路が生み出す快美幻想がはびこり、全般に亙って快美(快適さや便利さ)を求める快美欠乏が上昇してゆくにつれて、その幻想共認が作り出す価格格差をテコとする市場はどんどん繁殖してゆく。そして次には、その生産効率を上げる為の科学技術が発達してゆき、市場競争が生み出した侵略競争→軍備強化への期待圧力が、その科学技術をさらに大きく発展させてゆく。この科学技術の発達による快美充足の可能性の実現こそ、中後期の市場拡大の原動力である。

私権闘争真っ只中の高度成長期、快美欠乏はどんどん大きくなったのでしょう。その欠乏にマッチしたのがF1の野菜だったのです。(「指定産地制度」には、人々の快美欠乏にあやかり、F1種、農薬、肥料、農業機械などの科学技術の発達させ、それまで多数の「百姓」の存在によってなかなか市場に乗ってこなかった農業も、本格的に市場化し市場拡大させようという意図も見て取れます。)
■タネの流通形態
次にタネの生産ルートを探るべく、タネの流通経路についてまとめてみます。
現在のタネの流通は以下の図のようになっています。実践の矢印が、タネの流れです。
「種苗事業の構造と機能に関する一考察―野菜種苗を中心にして―」より→リンク [7]
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種苗会社が仕入れる種は、農協、採取農家、海外委託採種となっています。現在では、海外からの仕入れが9割にも上っているそうです。

>最近は種苗業界の集まりで情報交換をしても、海外での採種状況の話ばかりです。聞くと、現在流通している種で国産のものの割合は一割にも満たないそうです。海外採種は、カイワレダイコン・ブームの頃に種が足りなくなった藤田種子という会社が、ヨーロッパやアメリカに採種を発注したのが最初です。そのことをきっかけに、他の会社でも「海外で採取したほうが安い」ということで始められるようになったのです。

<著:野口勲「いのちの種を未来に」より
F1、農業機械、農薬等の普及と共に、タネの生産も市場化された結果、コストの低い海外で生産されるようになったということなのだと思います。
■伝統野菜再考
それでは、冒頭に挙げた二つの違和感。
○「伝統野菜」のF1種・・・?
○伝統野菜のタネ、採取地はヨーロッパ・・・?
についてまとめましょう。
F1種の普及の背景には、60年代の私権圧力の上昇⇒快美欠乏(解脱)の上昇がありました。
一方で現在は、70年の「豊かさの実現」以降くすぶっていた「脱市場」「自給志向」といった意識潮流が一気に顕在化しはじめています。おそらく、伝統野菜が見直されているのはそうした欠乏に少しでも応えてくれそうという直感的な期待感があるからではないかと思います。その直感を文字にすれば、「自家採種が可能(≒継続的な栽培が可能)」「土・気候への馴化が可能(≒農薬・肥料の要らない栽培が可能)」などとなり、実際には「伝統野菜」というよりも「固定種」や「自家採種」への期待感が高まっているものと思われます。F1が流布した時代と現代では、真逆の欠乏・期待があるのです。そして、現在のみんなの期待は継続的な栽培や安心安全の可能性を感じられる、「固定種」「自家採種」にありそうです。F1化された伝統野菜や、海外で採種している伝統野菜への違和感は、現在の我々の意識潮流に合っていないことから生じたものなのだと思います。
そこで本シリーズでは、「自給期待」「脱市場」の期待を汲んだ、次代の農業のかたちを探るべく、「固定種」「自家採種」の可能性について追求していきます。
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タネについては、すでに当ブログでも、種についてはいくつか扱ってきました。こちらも読んでみてください。
【コラム☆】固定種の時代がこれから来る☆+゜ [8]
【コラム☆】~世界初のF1種をつくったのは日本人だった☆ [5]
自殺する種子「ターミネーター・テクノロジー」とモンサント社の種苗支配 [9]
【コラム☆】~F1種の危険性:ミツバチはなぜ消えたのか?~ [10]
【新年コラム】タネをまもる人たち [11]
【コラム】「タネを支配する者は世界を支配する」~モンサント社をはじめとする遺伝子組換産業によるタネ支配 [12]
いのちの種を未来に・・・固定種・F1種・遺伝子組替種子の問題 [13]


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[1] リンク: http://blog.new-agriculture.com/blog/2012/10/001370.html

[2] リンク「大和野菜を全国区に!」: http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/2009/2009-11/page08.html

[3] リンク: http://noguchiseed.com/hanbai/tane/shosai/0139.html

[4] 奈良県HP: http://www.pref.nara.jp/dd.aspx?menuid=6979

[5] 【コラム☆】~世界初のF1種をつくったのは日本人だった☆: http://blog.new-agriculture.com/blog/2011/10/001263.html

[6] リンク: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=30709

[7] リンク: http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/11163/1/54_p21-37.pdf

[8] 【コラム☆】固定種の時代がこれから来る☆+゜: http://blog.new-agriculture.com/blog/2011/09/001256.html

[9] 自殺する種子「ターミネーター・テクノロジー」とモンサント社の種苗支配: http://blog.new-agriculture.com/blog/2011/12/001295.html

[10] 【コラム☆】~F1種の危険性:ミツバチはなぜ消えたのか?~: http://blog.new-agriculture.com/blog/2011/11/001289.html

[11] 【新年コラム】タネをまもる人たち: http://blog.new-agriculture.com/blog/2013/01/001389.html

[12] 【コラム】「タネを支配する者は世界を支配する」~モンサント社をはじめとする遺伝子組換産業によるタネ支配: http://blog.new-agriculture.com/blog/2012/07/001349.html

[13] いのちの種を未来に・・・固定種・F1種・遺伝子組替種子の問題: http://blog.new-agriculture.com/blog/2009/02/000779.html

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