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『農業革命;未知なる乳酸菌』シリーズ-5 ~農における微生物の働き~

e0277397_1437179これまで「農業革命;未知なる乳酸菌」シリーズでは、乳酸菌および微生物の秘める可能性を広く探索し、その効果を探るべく、実験にも取り組み始めました。

『農業革命;未知なる乳酸菌』シリーズ-1 ~乳酸菌の大いなる可能性~ [1]
『農業革命;未知なる乳酸菌』シリーズ-2 ~食に関する乳酸菌~ [2]
『農業革命;未知なる乳酸菌』シリーズ-3 ~農業革命の可能性を秘めた乳酸菌~ [3]
『農業革命;未知なる乳酸菌』シリーズ-4 ~実験編:実験を通して乳酸菌の効果を体感する~ [4]

今回は、より具体的に、乳酸菌・微生物と農業の関係に迫っていきたいと思います。

シリーズ3でも述べましたが、乳酸菌を散布する効果は多くの農家さんが認めるところですが、そのメカニズムについては、未解明な部分が多く残っています。まずは、一般的に言われている代表的な微生物の働きについてみてみましょう。

はじめに主な微生物をご紹介します!

 【乳酸菌】
imagesR5WJVZXZ糖をエサに乳酸などの有機酸を多く作り出すのが特徴。
・条件的嫌気性菌で、嫌気的な条件で乳酸を作るが、酸素があっても平気。
・桿菌と球菌があり、桿菌にはヨーグルトや乳酸菌飲料をつくるラクトバチルス、球菌にはチーズやヨーグルトをつくるストレプトコツカスなどがいる。
・ボカシ肥・発酵肥料づくりでは、こうじ菌や納豆菌がつくった糖をエサに増殖、乳酸は強酸性なのでボカシ肥のpHが下がり、酸性を好む酵母菌が増殖しやすくなる
・米ヌカを葉面に散布して病害虫を防除米ヌカ防除している生産者は、米ヌカで乳酸菌が繁殖し、つくられた乳酸で葉面のpHが4.5以下の酸性に変わり、病原菌は殆んど活動できなくなると言う。また、乳酸菌がつくる有機酸は土のミネラルを溶かしたり、キレート化したりして、植物に吸収しやすくする。
・乳酸菌をメインにした微生物資材も市販されている。

【酵母菌】
032729m・自然界では熟した果実(特にブドウ)の表面などに多く、糖をエサに様々なものを合成する力が強い
・糸状菌(カビ)の仲間だが、カビ特有の長い菌糸はつくらず、カビの胞子が独立したような丸い形で、カビと細菌の中間的な性質をもつ。
・酸素があってもなくても生活でき、酸素のない状態では糖からアルコールをつくり、酸素があると糖を分解して各種のアミノ酸、有機酸を合成する。
・ボカシ肥・発酵肥料づくりでは仕上げに働く菌で、こうじ菌や納豆菌が有機物を分解してつくった糖などをエサに、アミノ酸、ホルモン、ビタミンなどをつくる
・良質の発酵肥料は全体が酵母菌の固まり、田畑に入ると土の微生物が一斉に活性化し、土が肥沃になる。
・化学肥料をも分解し、酵母菌の活躍で良質の化学肥料ボカシができる。
酵母菌が出す酵素は殺菌力が強く、酵母菌資材を活用した種モミ処理も注目されている。

 

【根圏微生物】
q03-3_2・根の周り(根圏)に生息する微生物。
・根圏では、植物の分泌物(根酸)などをエサに微生物が繁殖し、その微生物が、土の養分を作物が吸収しやすい形態に変えたり、微生物が分泌する養分を作物が受け取るなど、作物と微生物が共生する活性の高い場となっている。
・チッソ固定菌、リン溶解菌、糸状菌、細菌、菌根菌など多様な微生物がおり、(1)養分吸収、(2)根の形態、(3)生理活性物質生産、に対する働きを通して、直接植物の生育に影響を及ぼしている。
根圏微生物が根圏環境を保護し病原菌の植物根への感染の防除に役立っている根まわり堆肥は、良質の微生物が豊富に存在する堆肥で根を守り、病害虫にかかりにくい環境をつくっている。

 

では、これらの微生物を散布することで、どのようなメカニズムでどのような効果があるのでしょうか?葉面上と土壌での働きに分けてみてみましょう。

 

■葉面上での働き
20140716_263512葉の表面には糸状菌(カビ)、酵母、細菌などの微生物が生息しています。
一見何もなさそうに見える葉っぱの表面ですが、葉から分泌される糖類や有機酸、古くなった細胞がはがれたものなど付着しており、葉面微生物はこれらを分解して葉面をきれいに保ったり、病原菌から植物を守ったりしています。
その仕組みは、
(1)葉面微生物が抗菌物質を出す
(2)病原菌に寄生して病気にする
(3)栄養分を病原菌と奪い合う
(4)作物を刺激して抵抗を誘導する
(5)植物が出す他感物質によるアレロパシー

また、乳酸菌を葉面散布すると、病害が減少するという結果も報告されていますが、これも葉から分泌される糖などを利用し、酸(pH4~5)を発生させ、病原菌やカビの増殖を抑えてくれるため、作物が病気やカビに侵されにくくなっていると考えられます。
写真はこちら [5]からお借りしました。

 ■土壌での働き
cimg2061土壌には、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌など様々な微生物が共生しています。
乳酸菌を散布すると、乳酸菌が発生させる酸によって、酵母菌をはじめとする土中微生物が増殖しやすい環境をつくり、微生物たちがアミノ酸やビタミンなどをつくり植物の成長を促します。※pH5~6が作物にとって良い土のようです。
画像はこちら [6]からお借りしました。

 

 

 

■土作り(微生物の必要性)
・土は現在偏った肥料の施肥によってバランスが良くありません。有機質資材を使用しているからと言ってもリン酸や石灰が自然と多くなってしまい、過剰な肥料分で調整が旨く行っていない場合が多い状況です。
・生きている土は微生物が豊富にあって、酸素や水を良く通しペーハー(pH5~6)も安定しています。微生物が多いと土は活きていますから、有機質資材を良く分解して、作物が根から吸収しやすい養分や栄養を作り出します。
・リン酸やカリが多くなると塩基化しやすく、分解するにはペーハーが5~6でないとしません。根から出る根酸も植物の生理活性や剪定等から出ますのでメカニズムを理解しないと旨く行きません。

参考)農作物への乳酸菌散布 その効果のメカニズムは? [7]

いかがでしたか?ここまで見てきたことをまとめると、葉面上にしても、土中にしても、乳酸菌の出す強酸が、他の微生物の活性度を引き上げる起爆剤となり、病気、カビからの防衛機能を高め、微生物の分泌物が植物成長を促進させるという共生関係にあるようです。

今回ご紹介したのは、微生物世界のまだまだごく一部です。農業以外の分野での微生物の活躍も注目されていますので、またご紹介していきたいと思います。

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