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コラム 良い土ってどんな土? ~植物と微生物との共生関係~

土壌は作物の根が生活する場ですから、空気も水も必要で、土である個体と、空気である気体と、水である液体から出来ています。これを「個相」「気相」「液相」と呼びますが、個相50%、気相と液相が25%という割合の土壌が理想だと言われています。
このバランスを保つためには、土壌の「団粒化」が必要です。

団粒化というのは、粘土の粒子が集まってミミズの糞のように大きな粒子(0.5~5mm)になることです。団粒化土壌は雨が降ると水はすぐに地下に抜け、水が抜けた後に空気が動いていくので、水はけ、空気の流通がとてもよくなります。逆に、干ばつになると、団粒化された土壌では地下水や下層の水分が毛細管現象でどんどん蒸散しながら上昇してきます。さらに、団粒化された粒子の中にも薄い粘膜によって保たれていた水分が大量に含まれていますので、日ごろは水はけがよく、しかも保水力がよいから、少々の干ばつではこたえません。

 

植物と微生物との共生関係

土壌を作っている主な成分は、珪酸(約60~70%)、アルミナ(約10~20%)、鉄(約5~10%)、石灰(約2~20%)、苦土(約2%)、カリ(約1%)、腐植(約3~5%)で、それ以外にも1%以下の微量な元素(ミネラル)も含んでいます。そして、土壌の中には、バクテリア、菌類、藻類、原生動物、その他数多くの生物が棲んでおり、小さじ一杯の健康な土壌の中には、地球上の人間よりも多い数の微生物が棲んでいます。

団粒は「粘着性があるひも状態」を作る菌糸菌によって成長が促され、植物の根から出る液体炭素の滲出液や菌類が出す粘着物質によって団粒の壁が作られます。その壁の内側では再び炭素滲出液によって数多くの微生物が活動しており、ほとんどの団粒は植物の根と繋がっています。つまり、健康な土壌は、微生物の働きがあってはじめて出来上がるのです。

植物は光合成によって、葉緑体の中に糖質を生成し、それら化合物を細胞や構造のために使ったり、生命エネルギーの為に使いますが、それだけでなく大量の化合物を「液体炭素」として土壌に放出しています。その量は、光合成によって固定させた炭素の20~40%にも及びます。

バクテリアや菌類は、炭素を含むおいしい根滲出液を食べるために現れますが、もっとたくさんの量を得るために、今度は植物が必要とする窒素やリン、ミネラル栄養素、植物ホルモンなどを植物に供給することで、植物と微生物が共生関係を作っています。

両者の関係は、お互いに必要なものを供給しあうことで成立しており、唯一必要な追加エネルギーは太陽光のみなのです。

 

有機農業の本質は、生物の多様性を壊さないこと

農薬や化学肥料を使う近代農法の問題性は、土壌生物を死滅させ、植物と微生物の共生関係を破壊してしまうことにありますが、有機農法なら問題がない、というわけではありません。
日本の「有機認証制度」は、禁止農薬や化学肥料を使わないこと、遺伝子組換え技術を使用しないこと、などを認証の条件にしていますが、禁止事項や罰則ばかりで、持続可能な農業はどうやったら実現するのか、どうしたら植物が健康になるのか、といった本質を捉えてはいません。

例えば、有機農法では除草剤を使用できないため、土を耕すことによって雑草の繁殖を防いでいますが、耕作によって土壌をかき回し空気にさらすことによって土壌に含まれる炭素が酸化します。さらに、植物の生長に重要な微生物や菌根菌を破壊してしまいます。

有機農業の本質は、土壌そしてさらには生物の多様性を維持することにあり、微生物や生物が多様であればあるほど、植物は健康に育ち、気候変動や病気に対する抵抗力と回復力が高くなります。有機認証制度が使用してはいけない農薬や化学肥料を規制しているのもそのためのひとつにすぎません。

生物の多様性を作るためには、耕作を最小限にとどめ、土壌中の微生物やミミズ、ヤスデ、クモなどが生育しやすい環境を作ってあげる必要があります。

単一作物ばかりを栽培していると環境が均一化してしまい、害虫や病気を招くことになりますので、輪作をすることで生物の多様性を助け、土壌酵素の活動を高めることが重要です。特に、マメ科植物がを輪作に含めるとより有効です。
また、動物の肥しは土壌に生物多様性をもたらす炭素と生きた微生物の両方を豊富に含みますので、家畜を一緒に飼育することも、土壌有機物レベルを改良するのに効果的です。

重要なことは、虫類や菌類は植物の病気の真の原因ではなく、それらは不適切に栽培された作物を侵食するだけだということです。不適切に育てられている作物を指摘してくれる病害虫は、農業を営むうえでの「自然」の先生であり、多種多様な虫類や菌類は農業生産にとって不可欠なものなのです。

 

 

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