- 新しい「農」のかたち - http://blog.new-agriculture.com/blog -

【ロシア発で世界の食糧が変わる】1 世界の食糧貿易の変遷~農業生産が少ないから、輸入国になるのではない~

プロローグでは、ロシア・ウクライナ侵攻で世界中に物価高騰・食糧高騰の大きなインパクトを与えてきたロシアが、貿易で大きな存在感を示してきていることを見てきました。

今回の投稿では、まず世界の食糧・貿易の状況がどのように変化してきたのかについて見てみたいと思います。

[1]

画像は、こちら [2]からお借りしました。

■農業生産が少ないから、輸入国になるのではない(食糧支配の変遷)

普通に考えれば、『食糧輸入国は、農業の生産が少ない国だ』ということになります。しかし実態は、『国家の支配・非支配で、食糧の輸入・輸出の構造が決まっている』というのが事実です。

 

世界の貿易構造を分かりやすくまとめてくださっているサイトがありましたので、こちらの内容に沿って分析していきたいと思います。

1913/1928/1937/1970/1993/2003/2011年 の世界各国輸入先第一位の国の色塗りマップ [3]

 

●1900年代初期:欧州が世界を席巻
こちらの地図は、「輸入先第一位」の国を色で示したマップです。赤紫は英国、青はドイツ、緑は米国からの輸入を示しています。

1900年代初期は、大英帝国(イギリス)アジア・北米・南米の世界中をシェアし、大きな力をふるっていたことがよく分かります。イギリスという小さな国にも拘わらず、世界中に食糧を輸出していることがよく分かります。

ユーラシア大陸の北部を、ドイツの力が振るっており、欧州諸国の強力な制覇力が見て取れます。

[4]

 

●1970年:アメリカの台頭
次に、戦争の時代が終わり、高度経済成長期を遂げた1970年代の世界の食糧貿易マップです。戦争(軍事産業)で力を付けたアメリカ(緑)が、大きな力をふるっていることがよく分かります。

北米・南米のエリアはもとより、オセアニア・中東・欧州にまで勢力を伸ばしています。

[5]

 

●2011年:中国の台頭

そして、2011年の地図です。黄色が中国、緑が米国、紫がロシア、赤は日本です。

ITバブルや不動産バブルを契機に、経済大国に仲間入りした中国(黄色)が、全ての大陸の輸入第一のシェアを占めており、大きな力をふるって来ていることが分かります。

ロシア(紫)も、周辺諸国とのパイプを太くしています。

一方で、EU(欧州系)は、支配力をほぼ失っていることも見て取れます。

[6]

 

●2019年:ロシア・ウクライナ・ブラジルの急成長

マップの種類は異なりますが、2002年と2019年の小麦の貿易構造を比較した資料です。さらに、ロシア・ウクライナ・ブラジルが、急激に大きな存在感を示してきていることが分かります。これら3つの国は、ここ10~20年で農業生産量を急激に伸ばしています。

[7]

[8]

 

■軍事的な支配から、経済的な支配、そして次代はどうなるか?

一言に「国家支配≒食糧支配」といっても、時代に応じて支配する『力の中身』が徐々に変わっていることが分かります。

1900年代前半は、世界的に戦争が広まっており、軍事力が最大の制覇力となり、イギリス・アメリカが大きな力を持ちました。1950年以降は、世界的に経済成長が加速した時代であり、経済支配力≒食糧支配力となりました。アメリカ・中国が大きく台頭してきました。

そして現代。ここ10~20年前で成長しているロシア・ウクライナ・ブラジルは、どのような力を高めてきたのでしょうか?軍事力・経済力が高いとは言え、それで支配しているという感覚とは少し違うように思います。

これらの国は、これまでの近代的な経済・制度とは一線を画する、新しい可能性を追求している国のようにも思います。そういう意味では、『先端力・追求力』というあたりが、新しい時代の制覇力≒食糧制覇力になっているように思います。

 

いずれにせよ、イギリス⇒アメリカ⇒中国⇒ロシア・ウクライナ・ブラジルへと、時代の変化にともない、国家制覇力≒食糧制覇力が転換していることは世界情勢を考える上で、非常に重要な認識です。

今回は、時代の変化に伴う食糧構造の変遷について見てきました。次回は、ロシア・ウクライナ侵攻によって、食糧の貿易封鎖・価格高騰など、どのようなことが起こっているのか?を最新情報を見ていきたいと思います。

[9] [10] [11]