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『食糧問題』シリーズ3:世界的な食糧危機(食料不足)はおこるのか?~国連フェイク報告の実際

「食糧問題」シリーズ、記念すべき3回目の記事です!

前回の記事では、ハンガーマップを見ながら、飢餓問題が特に深刻となっているアフリカ大陸に焦点を当て、世界の食料分配に大きな偏りが出てしまう構造について押さえました。

植民地支配時代の構造をそのままに、西洋諸国による「緩やかな略奪の構造」が飢餓問題を生み出していることが見えてきたのでした。

 

今回の記事では、そうした“地域限定的or期限限定的な飢餓”ではなく、“恒常的・全世界的な食糧危機”が来るのか?という問題を扱っていきたいと思います。

 

1.世界の食料供給量は過剰であり、今後も食糧危機が起こる兆候はない

・2050年には世界の人口は現在の74億人から96億人に約3割増加する

・経済発展で一人あたりのGDPが増加し、都市化も進展するので、穀物をエサとして生産される肉や乳製品など畜産物への需要が高まり、穀物の需要を大きく増加させる

・なので、世界の食料生産を60%程度増加しなければならない

 

こんな情報をよく目にするようになったが、本当でしょうか?

 

■人口2.4倍に対して、穀物生産量は3.4倍→世界の穀物量は過剰

グラフは、1961年の数値を100とした世界の人口、米・小麦の生産量の推移です。人口は2.4倍だが、米、小麦とも穀物生産は3.4倍です。

[1]

世界の人口が今後35年間で74億人から96億人へ22億人増加するといわれていますが、過去35年間では、それを上回る30億人も増加していて、しかもそれ以上の食料を増産してきました。

その結果、シリーズ1回目の記事で見たように、

年間約26億トンの穀物生産÷世界人口77億人=1人当たり年間340㎏

(日本人が実際に食べている穀物は、年間154㎏)と、十分すぎる食料が生産させているのが現状です。

■今後も食糧生産量の上昇傾向は続きそう

食料危機を煽る人たちは、世界の農地面積の増加が期待できない中で、単位面積当たりの収量の増加が鈍化しているので、農地面積に単位面積当たりの収量を乗じた世界の穀物生産の伸びも期待できないと主張していますが、上のグラフからはまだ単位面積収量も頭打ちになっておらず、今後もICTやAI、バイオテクノロジーなどによって、単位面積収量はこれまで以上に増加する可能性はあります。

さらに、世界には、ブラジルなど農地面積の大幅な増加を期待できる地域があります。日本の農地は450万ヘクタールに過ぎないのに、ブラジルではセラードと言われるサバンナ地域(アマゾンではない)だけで1億ヘクタールほどの利用可能な農地があります。

■恒常的な食糧危機が本当に起るのであれば、穀物の価格が徐々に上昇していくはず

このような穀物生産増加の結果、穀物価格は、非常に低くく抑えられています。
下のグラフは、アメリカ農務省作成による、トウモロコシ(Corn)、小麦(Wheat)、大豆(Soybeans)の過去約100年間の国際価格の推移です。一時的な上昇はありますが、全体としては下落傾向。

ちなみにこの間の人口の増加は4倍を超え、これこそ人口爆発と呼んでよいのに、恒常的な食料危機は起きていません。

[2]

 

このように、穀物価格はめちゃめちゃ低い水準で安定状態が続いています。

もし本当に恒常的な食糧危機が起ころうとしているのであれば、既に穀物価格に反映され、少しずつ上昇しているはずです。ですが上記グラフからは全くその兆候は見られません。

 

2.世界中に食糧危機を煽っているのは「国連」

以上の通り、実際には恒常的な食糧危機は起きそうにないのでが、にも関わらず、世界中で食糧危機が騒がれているのはなぜなのか。

それは、国連が、世界に向かって危機を煽っているからです。

 

例えば、国連食糧農業機関(FAO) 「食糧と農業の未来 - トレンドと課題(The future of food and agriculture – Trends and challenges)」 [3]の報告には、以下のようにあります。

“FAOによる本報告書は、2050年に世界銀行は97億人に達するという国連の予測に基づき、2012年水準よりも50%多く食糧・飼料・バイオ燃料を増産する必要があると推計する。地域差は大きく、多くの地域では2050年までに必要な農業増産は現状の3割程度であるが、人口増・需要急増が見込まれるサブサハラアフリカと南アジアでは農業生産は倍増する必要がある. 他方、世界的に農業生産性の向上は気候変動や自然資源劣化のために漸減傾向にあり、農業生産性維持のために保全農業・クライメート・スマート・アグリカルチャーなどの革新的な方法が模索されねばならない。”

 

ここまで見てきた実際の食料生産状況と照らし合わせると、FAOの警告通りに、現在より50%も多く食料をつくったら、世界中で穀物が溢れることは明らかです。

 

さらに、国連世界食糧計画(WFP)の「世界の飢餓人口の増加は継続-最新の国連報告書」 [4]には、以下のようにあります。

 

“本日発表された 2018年版「世界の食料安全保障と栄養の現状」報告書は、世界の飢餓人口の増加は続いており、2017年には8億2100万人、9人に1人が飢えに苦しんでいるとしました。子どもの発育阻害から成人の肥満に至るまで、様々な形態の栄養不良の改善は限定的なものになっており、何百万もの人々の健康を危険に晒しています。”

中略

“気候の変動は、既に熱帯および温帯地域の小麦、米およびトウモロコシなどの主要作物の生産を脅かしており、気候に対するレジリエンスの構築なしでは、気温の上昇や、より厳しい気象現象が見込まれる中、更なる状況の悪化が予測されます。

本報告書の分析によれば、極端な気象現象により多く晒される国では、栄養不足人口の割合と数がともに高い傾向にあります。 降雨量や気温の変動に非常に敏感な農業システムに人口の大部分が依存している地域では、極端な気象の影響は一層深刻で、栄養不足がより拡大しています。

農作物栽培地域における異常気温は、2011年から2016年の長期平均値よりも継続的に高く、過去5年間、猛暑が頻繁に発生しています。また、雨季の開始時期の早まり・遅れ、季節内の不均一な降雨分布など、雨季の特徴も変化しています。

 

 

前回の記事で見たように、異常気象で食糧難になるアフリカなどの地域は、穀物をそもそも作っていません。異常気象によって影響を受けるのは、モノカルチャーの自然の摂理に反した単一商業作物であり、その収入が途絶えることによって起こっています。

食糧生産量とは全く別の問題構造なのですが、飢餓と食料危機をごちゃまぜにして論じているあたりもかなり不可解ですね。

 

 

 

 

さて、なんともいかがわしい報告書を出して、食糧危機が煽っているのが「国連」であることがわかってきました。

では、この国連とは何者なのでしょうか?そして、なんのためにこのような報告を出し、食糧危機を煽っているのでしょうか?

 

次回の記事で追求してみたいと思います。

 

 

参考:「世界人口が増え、食料危機が起きる」のウソ-世界中の農業専門家が作り上げたフェイクニュースの実像に迫る-(https://cigs.canon/article/20180723_5140.html)

*グラフもこちらの記事よりお借りしました。貴重な情報ありがとうございます。

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