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土の探求16~環境保全型農業の三原則

Posted By noublog On 2019年12月26日 @ 9:02 PM In 「農」再生の実現基盤ってなに? | No Comments

土壌の健康を中心に据えた農業革命⇒環境保全型農業。

この農業体系を構成する三つの原理は、いずれも慣行農法の知識を覆す。

そして重要なのは、実現のためには三つの原理を全て採用すること。

 

以下、転載(土・牛・微生物 著:デイビット・モントゴメリー)

■環境保全型農業の三原則
環境保全型農業は三つの単純な原理の上に成り立つ農業体系だ。⓵土壌の攪乱を最小限にする。⓶被覆作物を栽培するか作物残渣を残して土壌が常に覆われているようにする。⓷多様な作物を輪作する。こうした原理はあらゆる場所で、有機農場でも慣行農場でも、遺伝子組み換え作物であろうとなかろうと適用することができる。

この三つの基本的行為をどのように実行するかに関して、異なる考えの支持者の間で激しい議論が交わされているが、いずれの側も一点では同意している。我々は、有益な土壌生物に対してもっと害の少ない農法を必要としていることだ。土壌の健康は、ありふれたミミズから特殊化した細菌、菌根菌、その他の微生物まで、土壌生物の上に成り立っているからだ。本質的には、これが環境保全型農業の全てだ。作物の成長を助け、土壌肥沃度を維持するために役立つことが分かっている多くの小さな生物を活性化させ、守るような農法だ。環境保全型農業の三原則がどのようにこれを実現するのか、簡単に説明しておこう。

犂にあえて疑問を唱えるのは異端のように思われるかもしれないが、それを使うことは確実にメジャーリーグ級の土壌攪乱なのだ。だから不耕起への移行が環境保全型農業の中心にある。不耕起栽培は収穫できない作物部位~作物残渣~を土壌の覆いとして残す。これは、作物が収穫されたあと、トウモロコシの茎にしろコムギの茎にしろ、植物の残骸を取り除いたり焼いたりしないということだ。そうしたものは畑で分解し、地面の有機物のカーペット~マルチ~を作る。土壌微生物のバイオマスは、不耕起農法へ転換するとすぐに増加する。土壌動物相も同様だ。マルチを施した区画には細菌、菌類、ミミズ、線虫の個体数が多くなる。一方、ひんぱんに耕すと土壌微生物のバイオマスが減少し、リンを植物に運ぶのを助ける菌根菌糸を阻害するなどの悪影響がある。

商品作物の合間の季節に植えられ、次の植えつけの時に刈られるか枯らされる被覆作物は、多年生の雑草を抑制し、腐養分を土壌に戻す役割を果たす。地面を覆うと地表のバイオマスと生物多様性が増し、特に害虫を抑える益虫が増える。輪作は害虫と植物の病原体の進出を防ぐのに役立つ。換金作物と被覆作物の順序を変化させる複雑な輪作は、害虫や病原菌に根を下ろす機会を与えず、それらのライフサイクルを断ち切る。これが今度は、旧来の農薬の使用量を減らすのに役立つ。

土壌生物の活性と多様性が高まることの利益には、水の浸透量と土壌有機物の増加が挙げられる。これにより排水の質と土壌の構造が向上する。微生物の多様性が高い土壌は、病原体が根を下ろして生き続けるのが難しい場所でもある。これはつまり植物がより健康になるということだ。作物を病気が襲うことが減り、もし襲っても壊滅的なことにはならない。輪作は微生物の多様性も高め、害虫や病原体が土壌生態系で優位になるリスクを下げる。環境保全型農業の三要素すべてを採用することで得られる最終的な効果は、収穫量の増加(何よりもまず最初の土壌の状態によって程度の差はあるが)と燃料、化学肥料、農薬の使用量の減少だ。環境保全型農業は旧来の耕起する栽培に比べて必要な労力も少ない。投入の費用が少なくなるので、農家にはかなりの倹約になる。

 

■慣行農業の知識を覆す
この農業の原理は、現代の慣行農業の知識をひっくり返すものだ。現在一般的な見方では、耕すことが雑草の抑制に不可欠であり、侵食は降雨による避けられない結果であり、被覆作物と輪作は任意で、化学による害虫駆除が必要だと考えられている。環境保全型農業では、耕起は避けられ、作物残渣は侵食を防ぐためのマルチとして畑に残され、被覆作物と輪作は任意ではなく必須であり、生物学的な害虫防除が実用的で効果的な選択となっている。

旧来の耕起はたしかに雑草を抑制するが、環境保全型農業のもとでは除草剤か被覆作物が同じ役割を果たし、しかも土壌浸食は大幅に減る。マルチは土壌の表面を雨滴の衝撃と地表流による浸食から保護し、不耕起栽培は表土の浸食を1/50にする。窒素固定微生物、マメ科植物、土壌有機物を蓄積する被覆作物は、旧来の化学肥料を、完全にとはいかなくとも、おおむね代替することができる。

環境保全型農業の三要素は、システムとして共同して作用するが、農家はそのすべてを取り入れるとは限らない。部分的な採用の結果はきわめてバラバラで、多くの文献研究は、不耕起栽培を採用したことでの収穫量と土壌有機物への効果はまちまちであると、報告している。そうした研究の中でシステムの構成要素を”三つ全部”採用した結果について述べたものは少ないが、この新しいシステムの背景にある思想は、深い根がある。

日本の農家、福岡正信は1970年代末には環境保全型農業に気づいていた。その著書『自然農法 わら一本の革命』は、有機農業運動はいくつかの昔からのやり方を取り入れることを促している。福岡は、収穫期に前の作物の切り株に直接種を蒔くことを、自然に似せた農業と表現した。農場で一年間を通じて行われる営みを、応用生態学の統一的システムとして扱うことを、福岡は農民に求めた。多くの収穫をより少ない労力で得る秘訣は、自然と協力し、それぞれの作物が次のものの舞台を整えるように、種まきと収穫の計画を立てることだ。こうすれば畑は望ましい植物で占められ、最初から雑草に生えるチャンスを与えない。

生まれたばかりの環境保全型農業運動も福岡の哲学も、ある原理を取り入れている。それは、もし実行に移せば、土壌の質を改善し、土壌の健康を~そして収穫量を~増大させうるものだ。初めて知った時、それが農業についての考え方を大きく変える~土に食べさせれば、今度は土が私たちを食べさせる~ことに私は衝撃を受けた。つまりは農業の生きている基礎、何兆もの微生物の助手に協力を求めることで、肥沃度に投資するということだ。環境保全型農業の三原則すべてを採用し、それを個々の地域や農場の環境に合わせて調整すれば、土を消費する農業から土を作る農業へ転換できると、支持者は主張する。ローマ帝国の、あるいは聖書の時代の農民がこのやり方を知っていたとしたらどうだろう。人類の歴史の歩みは違っていたのではないだろうか。もっとも長く続いた問題への答えは、じつはまったく単純なものだったのかもしれない。


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