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21世紀育ちが創る「むかし未来」 日本と世界を変える里山農業プロジェクトの芽吹き

今日は、現高校生のお話です。彼の名は、愛知県岡崎市在住の野田崇達君。彼は中学生の頃、すごいスピードで自分の生活している原風景が失われた様子を見て、アイデンティティの一部を奪われたに等しいショックを受けました。
彼はその後、自らの手で自然を守らなくてはと思い、地域のボランティア活動などにも積極的に参加するようになり、高校生になった現在、「里山農業プロジェクト」を企画。コストが削減でき、かつ全国を対象にビジネスが展開できるインターネットをツールに、事業をスタートさせました。

では早速紹介します。マイナビ農業からの転載です。【リンク [1]】転載開始

科学技術・資本主義経済・工業的生産システムが劇的に発達した20世紀。そこで謳われた「人類の進歩」は、地球のあらゆる生命の運命を変えました。
豊かで便利な生活と引き換えに何を失ったのか、社会に問いかける人が増える中、愛知県の田園地帯の一画で「里山農業プロジェクト」が胎動しています。
日本全国にその土地独自の「里山」をよみがえらせ、農作物や伝統工芸品などを生産・供給することで人間の暮らしと自然環境との共存を図る。その大事業のリーダーは、生まれも育ちも21世紀の若者です。

◆日本の原風景をよみがえらせるビッグプロジェクト
〇世界中の人たちがシェアする日本の原風景「里山」
美しい山並み。緑の木立から吹き抜ける風。川のせせらぎと鳥のさえずりの和音。大切な食糧とともに多様な命を育む田畑。
日本人が胸に抱く原風景・里山は、自分たちが本来生きるべき故郷の姿と重なっています。
人と共生する自然として、また、持続可能な社会の実現に必要なコンテンツとして、今、Satoyamaは日本人のみならず、世界中の人たちがシェアする言葉・概念に成長。環境問題をテーマにした国連の会議などでもしばしば用いられています。
〇里山と伝統的生活文化
ごくシンプルに定義づければ、里山とは、人間が暮らし、生活のために手を入れ、管理する自然の野原や林を含む地域のことです。昔からそこでは村落が作られ、土や水、木などの資源を活用した各種産業が営まれ、食をはじめとする生活文化が培われました。それが名産品、伝統工芸、伝統芸能、祭りなどの形で残されている場合もあります。
〇里山のブランド化
里山農業プロジェクトは、そうした古来の里山のありかたを、その地域に合った形でブランド化します。つまり地域ごとに違った農作物、工芸品などを生産し、それぞれが個性豊かで特色のある里山として復活させようというビッグプロジェクトなのです。

◆2002年生まれの里山プロデューサー
〇田園の生き物研究にハマった少年
このプロジェクトを考案し、実際に活動を推進しているのは、愛知県岡崎市在住の野田崇達(のだそうたつ)さんです。野田さんは2002年生まれ。本記事取材時は弱冠16歳の高校1年生。
同市内の田園地帯で育った彼は幼い頃から自然に親しみ、特にそこに生息する昆虫などの生物に深い興味を示しました。
自由研究での成果は、毎年、市の研究作品展に出展され、岡崎市小中学校理科作品展で「木村資生科学賞」(岡崎市出身の生物学者で、集団遺伝学によりアジアで唯一ダーウィン賞を受けた木村資生博士にちなんで創設)、「未来の科学者賞」などを受賞。将来はファーブルのような昆虫学者になるのを夢見ていたと言います。
〇伝統野菜を開発した寺院に生まれ育つ
また、彼の家は寺院で、室町時代に住職が地域の伝統野菜「法性寺(ほっしょうじ)ネギ」を開発したという言い伝えがあります。そうした所縁もあって自然に付近の農家と親しくなり、農業に関する体験・知識も豊富に得られたそうです。もちろん自身でも伝統野菜に関する研究を行っています。
〇失われた原風景
そんな彼に衝撃を与えたのが中学受験直後の出来事でした。1年弱、外での遊びを控えた末に合格を果たし、晴れていつも虫を採っていた田んぼに出かけたところ、そこにはもう何もありませんでした。その農家が高齢のために農地の維持を諦め、手放してしまったからです。 利便性を追って用水路も地中に埋められていました。
永遠に失われた原風景。アイデンティティの一部を奪われたに等しいショックを受けた野田さんはその後、自らの手で自然を守らなくてはと思い、地域のボランティア活動などにも積極的に参加するようになりました。

◆巨大コンテンツとしての里山
〇中学生時代から専門の学者を取材して勉強
その経験から知ったのが、私有地問題、財源の不足、人手の不足など、農業を取り巻く多くの問題です。
一方でそれらの解決策を模索する過程で「里山」という概念に遭遇。その詳しい内容について猛勉強し、農学や環境問題を専門とする東大や京大などの教授・学者などに中学生時代からコンタクトを取り、取材をして回りました。
〇インターネットを使って起業
そしてそこから里山を一つの魅力的な巨大コンテンツと見なしたらどうか、と発想しました。経済効果も十分見込める事業にすることによって、環境の修復・保全にもつながると考え、この里山農業プロジェクトを企画。コストが削減でき、かつ全国を対象にビジネスが展開できるインターネットをツールに、事業をスタートさせました。
〇着実にブランド化
野田さんがウェブサイトを開設すると、共感を示した同世代の仲間が続々と協力を申し出てプロジェクトに参入。家族・友人もサポートし、学校も彼の活動に賛同しています。
そんな中、まずネット上でプロジェクトの存在と内容を訴求することが当面の最重要課題とし、仲間のアシストやアドバイスを受けてサイトの充実を図るとともに、2018年には初めてクラウドファンディングにも挑戦。目標額には届かなかったものの、複数の農家からの問い合わせや、環境問題の活動家からの協働の申し出が来るなど、広報活動として十分成果があったとし、着実にブランド化を進めています。

◆古き良き世界への回帰にテクノロジーをフル活用
資本主義経済・工業的生産システムが十分に機能していた20世紀。しかし、そのシステムに陰りが見え、人々は将来に不安を抱くようになってきています。
そんな中、20世紀をリアルタイムで経験していない若者たちは、上の世代がいまだに囚われている過去の常識から自由になった新しい世代と言えるでしょう。
近代化以前にあった、人間と自然環境とのバランスが取れた里山の世界へ回帰するために、インターネットの技術を活かして進行する里山農業プロジェクト。そこから立ち現れる「むかし未来」に大きな関心を抱かずにはいられません。

◆まとめ
このように17歳の彼は、この4年間で、学校の勉強を超えた追求を行い、自分の通う高校からも賛同をもらうほどの成果を上げ、協働してくれる仲間を増やし、社会としっかり繋がっていこうとしています。
まだ、始まったばかりですが、地に足がつきながらも、過去にとらわれない発想で「里山農業プロジェクト」を立ち上げ、実践しようとしています。
若者のエネルギーは、廻りを動かし、仲間を動かし、そして社会を変えていく力をもっています。今後も彼の活動に注目していきたいですね。では、次回もお楽しみに。

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