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ヤギとレモンのふるさと

ヤギとレモンのふるさと」: [1]

    ミニヤギ除草でレモン生産や竹林整備も!ヤギで故郷再生  [1]

マイナビ農業からの投稿です。(2018年09月14日)

★はじめに

今回の「新しい農のかたち」は、人と動物が共存し豊かに生きていくというお話です。

さて、動物というと日本ではペット(犬や猫等)の需要が増え、今では、子供の数より多くなってしまいました。

元々家畜は、人の生活に欠かせなかったはず。今回紹介するのは、広島県呉市の「ミニヤギ牧場」のヤギたちとその持ち主であるご夫婦。そして、彼らが地域社会で暖かくむかえられているというほのぼのとした牧場のお話です。

 

それでは、転載開始します。

広島県呉市の下蒲刈島(しもかまがりじま)という小さな島で「広島ミニヤギ牧場」を営み、レモンとミカンを生産している菅原常司(すがはら・つねし)さん(63歳)。58歳の時、勤めていた小学校を早期定年退職して新規就農しました。ミニヤギで農園を除草する他、除草のためのヤギレンタルや、ヤギとの触れ合いによる情操教育も行うなど「ふるさと再生ヤギプロジェクト」に取り組みます。菅原さんに詳しく伺いました。

 

■ミニヤギと共に第二の人生をスタート 

──以前菅原さんは小学校の先生だったそうですが、なぜミニヤギを飼っているのでしょうか。

私が小学校に勤めはじめた頃は、どの小学校でも当たり前のようにさまざまな動物を飼っていました。ヤギを飼っている所も多かったのです。今は飼うとしてもウサギやメダカなどで、ヤギはほとんどいなくなりました。子供たちがヤギと触れ合う機会がなくなってしまったのです。

実は、担任していたクラスに不登校の子がいました。「勉強は楽しいよ」なんて言っても子供は学校には来ません。そこで、自宅で1匹のミニヤギを飼って毎日学校に連れていき、その子にヤギの世話をお願いしたら登校できるようになりました。ヤギは人懐っこくて顔立ちも優しく、子供たちに人気があります。

──ヤギの力は偉大ですね。

最初はメス1頭だったのですが、子供たちが「ヤギの赤ちゃん」に興味を示したので、後から追加でオスを1頭買って繁殖させました。ミニヤギを飼い始めて13年になりますが、今は全部で11頭飼っています。小学校を退職した後は「広島ミニヤギ牧場」を開設し、「ふるさと再生ヤギプロジェクト」の取り組みをはじめました。

 

■「有畜複合農業」で、レモン&ミカンをヤギと育てる 

──「ふるさと再生ヤギプロジェクト」について教えて下さい

現在、ミニヤギと一緒にレモンとミカンを育てる「有畜複合農業」を実践しています。ヤギに雑草や木の下草を食べさせ、糞は肥料として利用する、循環型のオーガニック農業です。

もともと父がミカン農家をしていたのですが、亡くなった後は十分な管理ができなくなり、農地が荒れてしまいました。そこをミニヤギで除草して再生し、農園を復活させました。周囲が竹林ですので、竹もたくさん生えてしまって厄介でした。 

──竹林はどのように整備しているのですか。

レシプロソーという電動ノコギリで竹を切り、竹の稈(かん)は2mぐらいの長さで切りそろえてまとめています。葉はヤギが食べてくれます。竹林整備はとても時間のかかる作業で、高齢者が1人で続けるのは孤独なのですが、ヤギがいると癒やされますし楽しいです。

──お父さまから継いだミカンだけでなく、新たにレモンの栽培もはじめた理由は。

広島県は国産レモン発祥の地です。でも、地元の人ですらそのことをほとんど知りません。そこで、自分もレモン栽培に挑戦したいと考えました。地域にベテランのオーガニックレモン農家さんがいると知り、その方の農園に見学に行ったんです。そこでレモンの木を見て感動し、「オーガニックレモンの栽培法を教えてもらいたい」と相談しました。3年前のことです。

師匠に苗木の植え方などを教えてもらい、再生した農地に約100本のレモンの木を植えて新たに「レモン園」を作りました。師匠には今でも農園に足を運んでいただき、その時季ごとの作業や育て方のコツを聞いています。「コツは教えるが、やらんにゃだめで(やらなきゃだめだよ)!」と言われていますよ。

また、レモンはミカンと違って、10月からグリーンレモン、12月から7月まではイエローレモンと1年に2回収穫する機会があります。その分、収穫期間も長くなり、安定した収入を得られる可能性が高いと考えました。

──レモンとミカン栽培の他にも、「ふるさと再生ヤギプロジェクト」に関する取り組みがありましたら教えてください。

地域の除草のためにヤギをレンタルしたり、ヤギとの触れ合いによる子供たちの情操教育を行ったりしています。アニマルセラピーとして、病院や老人ホームなどにヤギを貸し出すこともあります。

──除草用レンタルもしているのですね。依頼主は、やはり農家さんですか。

農家さんも多いですし、今増えてきているのは電力会社からの依頼です。変電所の敷地内や、ソーラーパネルの下をヤギが除草するのです。人が入れないところでもミニヤギは入れますでしょ。草の生える6~11月は除草用レンタルが忙しくなります。

──ミニヤギにピッタリのお仕事ですね。

「ミニヤギ」は小型のヤギの総称です。私が飼っているのはアルパイン種、トカラヤギやシバヤギなどで、体重は15~40kgと個体差があります。狭い場所の除草には、小さい個体が適しているのではないでしょうか。レンタルの際も運びやすく、子供でも世話ができるなどのメリットもあります。

 

■ヤギとレモンの下蒲刈島”を次世代へ

──育てたレモンとミカンは出荷しているのでしょうか

出荷は地域の直売所に少量だけ、あとは個人への直接販売のみです。それよりも、ヤギとレモンの魅力を多くの人に知ってもらうことが大切だと考え、今年の10月から「体験型観光レモン園」としてお客さまを迎える計画です。ヤギと触れ合いながら、レモン狩りをしたり、剪定(せんてい)をしたり、ミカンを食べたりといった内容です。

先ほど、子供たちの情操教育の話をしましたが、ヤギと触れ合う体験を通して「命のぬくもりを感じる機会」を生み出していきたいと思っています。

──60歳を過ぎて新しいことをはじめるのは苦労も多いと思います。菅原さんの活力の源が知りたいです。 

ミニヤギ牧場に見学に来た子が、アンケート用紙の「あなたのふるさと自慢は何ですか?」という問いに「ヤギ牧場があること」と書いてくれたんです。とてもうれしかったと同時に、次の世代に美しいふるさとの風景や農業をつなげていきたいと強く思うようになりました。それが一番の活力かもしれません。

──ヤギとレモンのふるさと! 楽しくて素敵ですね。

ヤギは無理のない範囲で頭数を維持しながら、より普及させていく活動をしたいと考えています。

広島レモンの魅力も、もっとたくさんの人に伝えたいと思っています。そのために、栽培技術やレモンの良い所をホームページやFacebookで情報発信したり、農園を開放したりしています。

──菅原さんの考える「セカンドライフ」とは。 

残りの人生、セカンドライフは「自分の持ち時間をどう過ごすか」ではないでしょうか。「ふるさと再生ヤギプロジェクト」を始めてから、たくさんの人との出会いがありました。ヤギを通じて素敵な笑顔を見るたび、何より私自身の心が癒やされ、幸せを実感しています。

子供の頃に見るふるさとの風景は、心の奥深くに刻み込まれます。“ヤギとレモンのある下蒲刈島”を次の世代へ継ぐために、これからもヤギと共に歩んでいきたいと思います。

以上転載終了

★最後に

本来、家畜は人間と共に生活をしていました。犬は、狩猟や番犬として、猫はネズミを捕獲させる目的で飼われ始めました。

彼らは、人の傍らで生活に無くてはならない役割を与えられいました。そして、その期待に応えることで、人は彼らを褒め、お互いに喜びを分かち合うといった充足関係にあったと言えるでしょう。

それがいつの頃からか、彼らは愛玩動物としての役割しか持ち得ずそして現在に至っています。

今回紹介した「ミニヤギ牧場」は、元々人と動物が共存し豊かに生きていくという 現在、私たちが忘れてしまった日常の生活の中で、動物たちとの充足感に満ちた関係を思い起こしてくれるお話でした。ミニヤギたちは、この地域の生態系の中に溶け込みながら、地域社会や廻りの人々のために役割を担って働いてくれています。

単に草を食べるという事に特化しているだけの動物なのに・・・・・心が癒やされ(アニマルセラピー)子供達の思い出にも深く影響を及ぼし、この地域のふるさとの風景になっていく。まさに、本来の「動物と共にある農業のかたち」と言えるのではないでしょうか?

「ヤギとレモンのふるさと」

これからも注目していきたいですね。では次回もお楽しみに・・・

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