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コミュニティビジネスがひらく、新たな「農」 の可能性~耕作放棄地を『有益な資源』と捉える

e0171573_22401424[1] [1] 前回記事はこちら コミュニティビジネスがひらく、新たな「農」 の可能性~プロローグ [2]

 

過疎化、高齢化が進むにつれ、特に山間部等で発生している『限界集落』の問題。

今回は、その課題と正面から向き合い、文字通り”都市と農村をつなぐ”役割に奮闘するNPO法人を紹介していきます。 「特定非営利活動法人えがおつなげて」 [3]の誕生とその背景

私が代表を務めるNPO法人「えがおつなげて」は、山梨県北杜市須玉町の旧増富村という山間集落で活動を行っている。今、ようやく社会的認知を得た「コミュニティビジネス」の先駆けといえる。

 

日本百名山に数えられる「瑞牆山」を望む旧増富村は、標高1000メートルを超える高原地帯。日本有数のラジウム温泉である増富ラジウム温泉があり、全国から湯治に来る方も多い。かつては街道の通過点として栄えた土地で、農林業などの産業も盛んな地域であった。しかし、山間集落というアクセスの悪さもあり、高齢化が進み、いつしか高齢化率も約62%(2007年)まで上がった。また、高齢化に伴い農業の衰退が進み、耕作放棄地も年々増えてきた。以前は特産の花豆やビールの原料になるホップなどの生産があり活気のあふれる地域だったが、現在では耕作放棄率が62%を超えた。加えて、安価な輸入材の台頭によって林業も次第に衰退していき、その結果、地域の若者たちは地元から都会へ出て行ってしまった。この旧増富村はいつしか、いわゆる「限界集落」となったのだ。

 

この増富地域にNPO法人「えがおつなげて」の農場ができたのは、2003年。目指したのは、ススキやカヤの根がはびこる畑を耕し、その畑を軸にして都市と農村をつなぎ、人の流れを意識的に作ることで地域が活性化するような仕組みを作ることである。山梨県の耕作放棄地は3252ヘクタール(2005年度農業センサス)だが、どの自治体でも悩みの種となっているこの耕作放棄地を、逆に農村の有益な資源としてとらえ、農村と都会を結びつける取り組みとしてスタートさせた。

 

しかしこれをスタートする際、法的にクリアしなければならないこととして、農地法の問題があった。その当時、NPO法人では農地を借りることができなかったのだ。そのため、地元の自治体(須玉町)と協議し、構造改革特区を内閣府に申請することを検討した。結果、NPOへの農地貸付に関して、須玉から内閣府の特区推進室に申請し、2003年に特区第一号として認定された。これによってNPOでも正式に農地賃借が可能となった。

 

また、実際に活動を実施する際は、活動の拠点が必要になる。この増富地域には、森林ボランティアなどが参加し、林業の活性化を図るための施設として、温泉や集会所機能を備えた「みずがきランド」が建設されていた。しかし、この施設の運営者である地元住民が高齢化したため、その運営はたいへん厳しい状況となっていた。そこで「えがおつなげて」に運営を委託し、活用していこうということになった。この施設は、その後の活動に大いに貢献することになる。

『農業再生に挑むコミュニティビジネス』(ミネルヴァ書房)より引用

 

 

増え続ける耕作放棄地を、むしろ【有益な資源】と捉えたところから、「えがおつなげて」の挑戦が始まります。

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