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今回のシリーズ投稿は、『都市型直売所の可能性を探る』と題し、特に近年注目を浴びている都市型直売所事業にスポットを当て、成長を続ける理由、今後の可能性について追求を進めていきます。
第一回目となる今回は、拡大を続ける直売所事業について、その社会的背景に迫りながら、状況認識の共有を図っていきたいと思います。
■Ⅰ.どんどん増えている直売所
農産物直売所は、古くから存在する一つの業態ですが、近年、テレビや雑誌、新聞等のメディアで取り上げられることが格段に増えています。
実際、平成24年度の農林水産省調査によれば、全国の直売所の数は23,560店舗であり、年間総売上高は8,448億円。直売所の店舗数は、日本全国のセブンイレブン15,072店舗よりも多く、その年間売上高は、ライフコーポレーション5,031億円よりも大きい(平成24年商業統計より)。

直売所は、今や、コンビニ・スーパーなど既存の流通店舗と立派に肩を並べるほど、その存在感を増してきています。
■Ⅱ.そもそも…スーパーと直売所の違いって何?
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野菜を売るという点では同じ流通店舗でありながら、既存のスーパーと直売所では、その運営や販売形態において様々な違いが見てとれます。
例えば、運営主体・店舗の多様性。業態ごとに一定フォーマット化されているスーパーに対して、直売所は、その運営主体(農協、第三セクター、地方公共団体、生産者グループ等)によって店舗規模や年間営業日が大きく異なり、無人の店舗から、スーパー並みの設備や建物を持つ店舗まで、実に多種多様な店舗が存在しています。
その他、販売する商品の多くが地元産であり、運営方針には出店地の地域性が色濃く反映される、農家が価格決定権を持っている、流通経路が短い=生産者と消費者が最も近づいた流通形態であること等が挙げられます。
このような両者の違いは、なぜ生まれてくるのか。
スーパー、直売所、それぞれが掲げている経営理念を比較して見てみると、その理由が見えてきます。
スーパーの場合、例えば業界大手の「マックスバリュー」が経営理念として掲げている、『お客さま第一が不変の理念』『この街、お客さま、仲間たちの笑顔と元気を応援し続けます』にもあるとおり、多くは【消費者第一】を全面的に打ち出す理念を掲げています。
⇒マックスバリュー [4]
では、直売所が掲げている理念とはどのようなものでしょうか。
例えば、全国の直売所の中でも屈指の成功事例と言われる「みずほの村市場」が一貫して掲げているのは、「本物の農産物を提供する」「再生産可能な適切な価格設定」「品質と技術の向上」。つまり、【生産者=農業経営者の意識を引き上げて、強固に組織化すること】が理念の中心にあり、成功の秘訣でもあると言えるでしょう。
⇒みずほの村市場1 [5]、みずほの村市場2 [6]
また、全国の直売所で日本一になった「伊都菜彩」は、『私たちは、生命産業である農業の振興を図り、【豊かな地域社会の実現】に貢献します』という理念の下、JA糸島が運営主体となり、地元「糸島産」の新鮮な野菜を販売。販売員は、『生産者とお客さんの架け橋になれるよう』、常日頃コミュニケーションの充実を図っています。
⇒伊都菜彩1 [7]、伊都菜彩2 [8]
以上の事例から、スーパーは、【消費者第一】を掲げ、いかにお客さんに消費してもらうかを追求し、地域の冷蔵庫として利便性を向上させることに力を注ぐことで成長してきた業態です。
一方で直売所は、【生産者の力】を引き出し新鮮でおいしい農産物を作る、もしくは【地域活性化】を理念として掲げ、JAや地元の生産者共同体など様々な組織が農・食の復興を目指しながら成長を遂げてきた業態であることが分かります。
同じ流通店舗でありながら、スーパーとは異なる直売所の多様な運営、販売形態は、そもそも経営理念・事業目的の違いから生まれていると言えるでしょう。
■Ⅲ.地方から都市へとシフトし、多様化する直売所のかたち
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原発や輸入食材等の問題を経て、健康・食に対する社会的な期待がさらに高まる中、直売所事業は既に次のステージに突入。新たな業態が次々と生まれています。
中でも、特に近年の動きとして注目されるのが、大都市圏での直売所事業の進展であり、その事業形態は、スーパーのインショップやJAの直売施設をはじめ、マルシェ、商店街でのイベント販売など多岐に渡ります。
都市部では、消費者の直売所に対する期待感が高い一方で、そもそも生産者も農地も多くないため、地方に比べて充実した品揃えが難しい状況にあります。しかし、ここ数年では、ブランド化を模索する地方の産地との連携を試みたり、限られた農地をうまく活かす農法を追求、発掘することで、物流コストの壁と格闘しながらも、消費者ニーズを満たす魅力ある商品の充実に努める直売所が増えてきています。
★生産者の主体性・追求力を引き出し、多種多様な高品質農産物が並ぶ都内一位の直売所「秋川ファーマーズセンター」 [12]
また、全国の都市部でイベント型の直売所事業を進めている「マルシェ・ジャポン」 [13]では、『「未来の子供たちに安心して暮らすことの出来る地球環境を残す。」と言う理念に基づき、地球環境に優しい取り組みをしている生産者や作り手等が生産した商品を、直接消費者にアピールしながら販売したり、自分たちの「想い」を伝えたりして、これからの「ライフスタイル」をご提案していきます。これ以上「地球環境」を汚すことなく、未来の子供たちが安心して生活出来るように!』のように、地域を超え、より社会的目的意識を明確にした理念を掲げ、多くの都市・地域の人々の巻込みに成功しています。
■Ⅳ.都市型直売所の進展が示す、社会的な地殻変動
直売所事業が地方から都市へと進展するにつれ、その物流形態はスーパー・コンビニ等の既存流通に近くなってきていますが、それでも尚急激に増加しているということは、単なる「流通・物流革命」に留まらない、都市型直売所の進展を後押しする社会的な地殻変動が、起こっているのではないでしょうか。
3.11の震災を境に、いよいよ顕わになったお上(政治家・官僚・学者・マスコミ)の暴走(原発事故や不正選挙、マスコミ・学者や医者の騙し)によって、社会秩序は至るところで崩壊し始めている。
お上に対する人々の不信感は募るばかりであり、一方で、潜在意識下では誰もが「もはやお上に頼ることはできない。これからの社会を『自分たちの手で』創っていくにはどうすればいいのか」という、未知なる課題に対する可能性の探索と追求を始めている。
これが現在の社会状況ではないかと考えます。
そしてこれは、食と農を取り巻く世界も例外ではありません。
「(見た目の良さや味、価格に留まらない)本来の食・農の追求」といテーマを通じて、現在は極めて希薄な関係性に留まっている都市住民同士が、共通課題を追求する中でつながりを深めていく。そしてこれからの、新たな都市生活を創っていくための集団基盤=共同体NWを、都市部においても再生させていく。
不整合な社会の真っ只中であるからこそ、「本来の食・農の追求」、そして「都市・地域をつなぐ新しいネットワーク形成」の期待が急速に高まっています。そして、社会的目的意識へと結実し、これを実現する新しい業態としての「都市型直売所」に期待が集まっていると言えるでしょう。
このような社会背景と新業態であることから、本シリーズでは、「農・食の追求、創造」「集団の再生、創造」を担っていくであろう次代の直売所の事業モデルを探るべく、その最先端に位置する都市型直売に焦点を当てて追求していきたいと思います。
