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2013年11月21日

日本の農業は過保護…これ、大ウソ!


先日、ネット上のニュースを見ていると、『家計にのしかかる負担、日本の農業は過保護だ!』という記事を見つけました。
記事の内容をまとめると、日本の農業は、高関税等過剰な保護によって守られており、その負担は一般の家計に負担を強いられている。と書かれていました。
日本の農業は、外国から見て閉鎖的で保護されているとよく言われていますが、国内からもこのような声が上がっている事に驚きました。
そこで、日本の農業は本当に過保護なのか?
また、日本の農業は、外国から見て閉鎖的で保護されているとよく言われていますが、果たして本当か?
どうか調べてみる事にしました。
すると、冒頭に挙げた『日本の農業は過保護である』という問題指摘は、どうやら「木を見て森を見ず」的な見方である事がわかってきました。

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農業総産出額からみる日本農業の衰退 よりお借りしました。
(※農業総産出額・・・農業生産活動による最終生産物の総産出額であり、農産物の品目別生産量から、二重計上を避けるために、種子、飼料等の中間生産物を控除した数量に、当該品目別農家庭先価格を乗じて得た額を合計したもの)
東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授が、週プレNEWSで書かれていた記事に端的にまとめられていましたので、引用させていただきます。
『過保護は大ウソだった 日本の農業が衰退した本当の理由』

現在、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉における最大の焦点となっている、日本の農業だか、これまで“閉鎖的”でなおかつ“過保護”であると、しばしば諸外国の非難を浴びてきた。
だが、東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授は、この見解に対して首を横に振る。
「まずハッキリさせておきたいのは、日本の農産物市場はまったく閉鎖的でないということです。それどころか一般的に“聖域”と呼ばれるコメ、小麦、乳製品、砂糖、牛・豚肉の5品目を除けば、日本の農産物の関税は野菜類が3%、生花が0%といったように、先進国の中でも極めて低い。どんどん関税を下げていった結果、日本の農業が衰退していったと考えるほうが正しいのです。
さらに、鈴木教授が続ける。
TPPの議論でよく耳にするのが、TPPという『外圧』によって日本の農業を変えていくしかないという指摘です。農業を“過保護”にしてきたことで合理化が進まず、国際的な競争力がなくなった、という理由ですが、これも現実は正反対です。
実は、日本に開放を求めている諸外国のほうが、農家への保障は手厚い。
「例えばアメリカやカナダ、EU諸国などでは、農産物や乳製品の価格が下落すると、政府がそれを買い上げて価格を維持する制度があります。日本にはこうした制度はありません。加えて、これらの国々が力を入れているのが補助金を使った農家への所得補償です。ヨーロッパでは農業所得全体の95%が補助金で支えられており、アメリカはコメ、トウモロコシ、小麦の農家だけで多い年は約1兆円も補償しています。これに対して日本の補償は農業所得の2割を切る程度です」(鈴木教授)
こうなると、日本の農業にとってTPPが致命的な影響を与える可能性のほうが高いのではないか。鈴木教授も言う。
関税は下げ、政府の買い支えもなく、補償も少ない……。それでもまだ日本の農業は“過保護”だといえるでしょうか? むしろ長年、外圧に晒され続けて衰退しきった日本の農業が、TPPで息の根を止められようとしているのが現実なのです」(引用終了)

更に鈴木氏は、別のコラム「食と農の応援団」 でも、上記の内容をより詳しく述べられていました。

 しかも、国内では、日本の将来方向に大きな影響力をもつ経済財政諮問会議等において、貿易自由化を含め、規制緩和さえすればすべてがうまくいくという人々が、さらに声を大きくしてきている。
 規制緩和さえすれば、すべてがうまくいくというのは幻想である。農産物貿易も、自由化して競争にさらされれば、強い農業が育ち、食料自給率も向上するというのは、あまりに楽観的である。日本の農家一戸当たり耕地面積が1.8haなのに対して豪州のそれは3,385haで、実に約2,000倍である。この現実を無視した議論は理解に苦しむ。
 このような努力で埋められない格差を考慮せずに、貿易自由化を進めていけば、日本の食料生産は競争力が備わる前に壊滅的な打撃を受け、自給率は限りなくゼロに近づいていくであろう。
 しかし、かりにそれでも大丈夫だというのが、規制緩和を支持する方々の次なる主張である。自由貿易協定で仲良くなれば、日本で食料を生産しなくても、オーストラリアが日本人の食料を守ってくれるというのである。これは甘すぎる。食料の輸出規制条項を削除したとしても、食料は自国を優先するのが当然であるから、不測の事態における日本への優先的な供給を約束したとしても、実質的な効力を持たないであろう。EU(欧州連合)も、あれだけの域内統合を進めながらも、まず各国での一定の自給率の維持を重視している点を見逃してはならない。ブッシュ大統領も、食料自給は国家安全保障の問題だとの強い認識を示し、日本を皮肉っているかのように、「食料自給できない国を想像できるか、それは国際的圧力と危険にさらされている国だ」と演説している。 
 いま、我が国では、医療と農業が、規制緩和を推進する人々の「標的」となっており、医療についても、農村部の医療の「担い手」不足の深刻化等、医療の崩壊現象が日本社会に重大な問題を提起し始めている。医療と農業には、人々の健康と生命に直結する公益性の高さに共通性があり、そうした財の供給が滞るリスクをないがしろにしてよいのであろうか。農業が衰退し、医者もいなくなれば、地域社会は崩壊するが、要するに、無理をして、そのような所に住まずに、みんな都市部に集まれば、それこそ効率はいい、ということなのだろうか。 
 食料貿易の自由化も、一部の輸出産業の短期的利益や安い食料で消費者が得る利益(狭義の経済効率)だけで判断するのではなく、土地賦存条件の格差は埋められないという認識を踏まえ、極端な食料自給率の低下による国家安全保障の問題、地域社会の崩壊、窒素過剰による国土環境や人々の健康への悪影響等、長期的に失うものの大きさを総合的に勘案して、持続可能な将来の日本国の姿を構想しつつ、バランスのとれた適切な水準を見いだすべきである。一部の人々の短期的な利益のために、拙速な流れを許せば、日本の将来に取り返しのつかない禍根を残すことになりかねない。いまこそ、国民的な議論を尽くすべきときである。(引用終了)

鈴木氏が述べているように、農業を守るという視点では、アメリカやEU各国に比べ、日本はほとんど保護されていません。
これは国策の違いと言えますが、日本は対外的に農業を武器にしていないという事が如実に表れています。
かろうじて、日本を守るという視点で、生きていくための必需品に近い品目だけ、高関税で守っているというレベル。素人目にも、最低これは守られないと、国の存続基盤が無くなってしまいそう…。
冒頭に上げた過保護、過保護と騒ぎ立てる学者やマスコミの方々の情報に左右される事なく、皆さんにも「日本の農業」の置かれている現実をしっかりと理解してもらう事が大事だと思っています。
そして、日本の農業問題に踏み込んでいくと、これからは、各企業や私達自身が、御上に頼らず「自給」という事を真剣に考える必要が出て来るのではないかと思います。
【お奨め記事】
農業参入が企業の社会的使命となる
実現論:序7(下) 農(漁)村共同体の建設
企業における社会的役割として農業参入は必要
企業が農家を支援することもできる。

投稿者 shiogai : 2013年11月21日 List   

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