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【コラム】集落営農による新規就農者受け入れの可能性

本ブログ記事『農から始まる地域の再生~新しい生産共同体をどうつくるか?⑤:農地は誰にゆだねたらいいのか?』 [1]では、農村地域では、未だに共同体意識が息づいていること。それゆえに、勝手な判断で農地を手放せない→農地の有効利用が進まないという構造が見えてきました。
それでは、今後こうした農村地域の農業を振興していくにはどうしたらいいのでしょう?共同体意識をうまく利用する方法はないのでしょうか?


こんな事例を紹介します。
るいネット「テーマは【人の輪と、集落の和】「営農組合 酒人ふぁ~む」」
より引用。

「人の輪と、集落の和」を基本テーマに若者が目的を持って歩む。そんな集落を夢見た酒人に住む農民自らが考え、組織した「営農組合酒人ふぁ~む」がとても面白そうなのでご紹介します♪
リンク [2]
○一集落一農場
酒人集落はほぼ全員が第二種兼業農家。1人1人で農業を支えるのは難しくても、農地を合体、力を合わせれば、大規模農業が可能になります。集落全体で1つの農地!共同で農業機械を購入、若者から高齢者までそれぞれが適材適所で働くことで、昔ながらの農村の営みを維持しています。
本来、農村集落は農産物を作るための共同体。用水路の整備や水利権の調整は個人では無理だからで、集落全員で担い話し合って進めてきました。
(中略)
★個々の農家を統合して、集落全体で共同して農業を行っている。昔ながらの共同体文化。
(中略)
○こんな人がつくってま~す!
・「オペレーターグループ」
ふぁ~む直轄の中核メンバー。
営農意欲まんまん、次の時代の酒人ふぁ~むを支える人たちです。55歳以下で主に大型機械を使った農作業を担当。熟練者から指導を受けて農業ノウハウを身につけ、現場の農作業、さらには次の世代にノウハウを伝える役目も担っています。
・「なごやか営農グループ」
主役は20歳~65歳の女性。
ハウス野菜の栽培・収穫・出荷を担当。将来は農産物を加工食品にして付加価値を高める役目も期待されています。自分の子供に安心・安全の野菜を食べさせたい…そんな思いで営農する酒人ふぁ~むのお母さん的存在。
・「すこやか営農グループ」
65歳~80歳の老人会のメンバーで集落営農の趣旨に賛同、酒人ふぁ~むの知恵袋として地域を見守る存在です。オペレーターを補助するほか、平日の作物の管理・収穫なども担当、このメンバーが持っている農業の知恵と知識は酒人ふぁ~むの“宝”です。
・「やすらぎ営農グループ」
80歳以上の敬老会のメンバー。
酒人ふぁ~むにはボランティアとしての参加で、おしゃべりと雑草取りが主な仕事です。家でじっとしているよりも、役割を担って体を動かす方が健康で長生きになります。やすらぎメンバーが酒人ふぁ~むの雰囲気づくりに貢献。みんなで楽しく農作業しています。
★適材適所の分化体制!なんだか、あたたかい雰囲気がする!

いわゆる、「集落営農」というやつです。
集落全体で農地を管理していく。江戸時代以前の農地管理方法、意識に近いですよね!
個人個人の利害よりも、集落全体の共認、充足に意識が向かっているようです。
そのポイントと考えられるのは、以下3点ではないでしょうか
1.全員参加で、全員に“適材適所”役割が与えられている。
2.農地を共同管理している。農機を共同所有している。
3.そしてこうした方針に全員の共認形成ができている(共認形成の場がある)

共認形成の場をつくれているのは、おそらく共同体意識が残っているからではないでしょうか。
「私有意識」が根付いてしまった現在では、なかなかこうした取り組みへの合意を得るのは難しいとおもいますが、共同体意識が未だに残る農村地域だからこそ、比較的簡単に合意が得られたのではないかと思います。
またこの方法、なかなか進まない農地の有効利用や、新規就農の問題にも、答えることができるとも考えられます。
この問題の背景に、
しっかりと田畑を管理してくれる人でなければ、売ることも貸すこともできない。
でも、“この人なら信頼できる”という地域の共認がある人ならば、むしろ耕作してもらいたい。
という農村側の意識があることは前述したとおり。
ということは、
何が根源問題かというと、
新規就農したい人がいないことでも、農地を手放したくないことでもなく、
実は、「新規就農者を育てる基盤がない」という問題なのです。
そして、集落営農法人は、その基盤になりうる、すなわち、法人で新規就農者を雇い、育てていくことができるのではないかと思うのです。
そもそも村落共同体は、人を育成する機能も持っていたはず。
この記事を書きながら、集落営農法人は、現代版村落共同体になり得るのかもしれないな~なんて思いました。

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