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【コラム☆】~F1種の危険性:ミツバチはなぜ消えたのか?~

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こちら [1]からお借りしました 
 
以前「【コラム☆】~世界初のF1種をつくったのは日本人だった☆~ [2]」では、F1種とは何か、そしてどうやってF1種を作っているのかについて説明しました。
(もう読んで頂けましたか? 😀 )
実はF1種の作り方には以前紹介した除雄(じょゆう:雄しべを取り除くこと)以外にもいくつか方法があります。
それらのうち現在最も広く利用されているのが雄性不稔植物(葯(やく)や雄しべが退化し花粉が機能不全になった植物)を利用した方法です。
雄性不稔植物を利用することで、除雄=手作業時とは比べ物にならないくらい効率的にF1種を作り出すことが可能になるため、現在既に多くの野菜や果物が雄性不稔植物によりF1化され(=雄性不稔F1種)、市場に出回っています。
 
「効率的に野菜が作れるなら、万々歳だね 」とお思いになるかもしれません。
 
しかし雄性不稔の仕組みについて調べてみると、そうも言っていられない危険性を孕んでいることがわかってきました。
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1.雄性不稔植物を使ったF1種の作り方
まず改めて簡単に用語のおさらいです。
 
F1種:異なる性質を持つタネを、人為的に掛け合せてつくった、雑種の一代目のこと。異種を掛け合せてつくるイイとこ取りの種です。
除雄:作物が自家受粉(自分の花粉で受精すること)しないように雄しべを手で取り除くことを言います。
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こちら [3]からお借りしました
 
F1種は「雑種」であるため、自家受粉されては目的の雑種がつくれないため、除雄が必要になります。
 
雄性不稔:植物の葯(やく)や雄しべが退化し、花粉が機能的に不完全になることを言います。人間で言えば、男性側に原因のある不妊症と同じです。
冒頭でも述べたように、元々除雄は人の手で行っていたこともあり膨大な人件費がかかっていましたが、この雄性不稔植物を利用することで大幅な人件費削減が可能になりました。
薄利多売の農家にとってこれほどありがたいことは無いと、雄性不稔形質を受け継いだ種の需要が高まり、今では多くの野菜や植物に利用されています。
例えば・・・稲、玉ねぎ、人参、トウモロコシ、ネギ、大根、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、白菜、シシトウ、ピーマン、ナス、オクラ、春菊、レタス、インゲン、テンサイ(砂糖の原料)など、ざっと挙げただけでも雄性不稔を利用した野菜はこれだけあります。
現在も研究はどんどん進められているため、近い将来ほぼ全てのものが雄性不稔植物を利用したF1種になっていくと考えられます
 
2.そもそも雄性不稔植物はどのように生まれるのか?
とても便利な雄性不稔植物ですが、どのように生まれてくるのでしょうか?
ズバリそれは突然変異によるミトコンドリア異常によって生まれてくるのです。
ミトコンドリアとは簡単に言えば、細胞のさまざまな活動に必要なエネルギーのほとんどを、直接あるいは間接的に供給する器官です。
この、生物にとって必要不可欠なミトコンドリアに異常をきたすことによって雄性不稔植物が生まれてくるのです。
 
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こちら [4]からお借りしました
 
つまり、今私達が口にしているものの多くは、このようなミトコンドリアに異常のある野菜ということになります。
このような異常のあるものを食べて続けても体への影響は無いのでしょうか?
 
 
3.ミツバチはなぜ消えたのか
雄性不稔植物を口にすることが人体にどんな影響を与えるのか、実はまだまだ未解明です。
ただ未解明ではありますが、実はミツバチに関して気になる現象が起こっています。

<現象1>
2009年の日本農業新聞で「欧州ミツバチ報告 卵産まぬ女王が続々」という記事が。ヒマワリ、菜種、トウモロコシの単作農業地帯で産卵数が極度に少なくなる不妊症の女王バチが数多く見られた。※ミツバチは野菜を交配させる際の、花粉の運び役として世界各地で活用されている。

<現象2>
1960年代・2007年と世界各地の養蜂場から一夜にして蜂が大量に失踪するという現象が起きた。アメリカでは国全体の4分の1もの養蜂が一夜にして失踪した。
一方で、野生の蜂ではこうした現象は一切起こっておらず養蜂のみが大量に失踪した。

これらの原因についてはハチのエイズ説や携帯電話の電磁波説等を始めとして多くの仮説が立てられていますが、そのどれもがミツバチが巣を見捨てていなくなる原因には帰結せず、「複合的な原因」ということで犯人探しはストップしています。
しかし『タネが危ない』 [5]の著者である野口勲さんは、その著書の中でこれら現象の原因が雄性不稔野菜なのではないか、という仮説を立てられており、信憑性を感じさせるものになっています。

<仮説>
●ミツバチたちはミトコンドリア異常の蜜や花粉を集め、ローヤルゼリーにして次世代の女王バチの幼虫に与える。
●養蜂業者は一定の農家と契約しているはずだから、雄性不稔F1種子の受粉のために使われているミツバチは、世代が代わっても同じ季節には同じ採取農家の畑に行く。
従って、この養蜂業者が所有するミツバチは代々雄性不稔の蜜と花粉を集めて次世代の女王バチと雄バチを育て続けていく。
●ミトコンドリア異常の餌(蜜)で育った女王バチは、世代を重ねるごとに異常ミトコンドリアの蓄積が多くなり、あるとき無精子症の雄バチを生む。
●巣の雄バチ全てが無精子症になっていることに気付いたメスの働きバチたちはパニックを起こし、巣の未来に絶望するとともに本能に基づく奉仕というアイデンティティを失い、集団で巣を見捨てて飛び去る。

これらは野口さんも著書で仰っている通り、仮説の域は出ませんが、逆に全く事実でないとも言い切れません。
むしろ、雄性不稔植物(やその蜜)という異常な作物を継続的に口にするということで生物に何の影響も無いと考える方が不自然でしょう。
もしミツバチへの影響が事実であるとすれば、このミツバチ同様に雄性不稔野菜を摂取している我々人間にも、影響が出る可能性は多分にあります。
昨今叫ばれている成人男性の精子数減少の原因について、農薬由来の環境ホルモンが主因であるという見方が一般的ですが、雄性不稔に原因がある可能性も十分に考えられるのではないでしょうか。
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こちら [7]からお借りしました
  
4.自然の摂理を踏み外してしまった農の市場原理化
全ての生物は自然圧力を始めとする外圧に適応するために、様々な進化を遂げてきました。
その中でもとりわけ雌雄分化は生物が外圧に適応するための非常に重要な進化です。
雄性不稔植物とは、その重要な進化機能である性を持たない不完全適応態を人工的に作り出していることになります。(その意味で除雄を用いたF1種とは明確に異なります)
そして、そうした雄性不稔F1種の使用が自然界及び現実場面に何らかのひずみを生むことは想像に難くありません。
なぜならば、全ての生物は外圧適応という軸でつながっており、それらが複合的にバランスすることによって適応を実現しているからです。
環境ホルモンにせよ、雄性不稔F1種にせよ、「市場社会で儲けるためには(食べていくには)どうする?」という軸から生まれています。
そういう意味では、農家の皆さんが雄性不稔F1種に頼るのもある意味仕方の無いことだと言えます。
しかし農を市場原理(自由競争)に委ねた結果、このような安全とは言いきれない食品群が生み出されてきたということも事実です。
勿論、市場原理からの脱却の実現は決して容易ではありませんが、今重要なのは、「今後の農業の可能性はどこにあり、それを引き出していくためにはどうすればよいか?」という視点と、そのために事実を追求し自然の摂理を学んでいくことなのではないでしょうか。
参考:『タネが危ない』野口勲 著

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