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農業経営と社会貢献~ナチュラルアートの事例から

こんにちは。
先日、農業ベンチャーとして成功している、㈱ナチュラルアート代表・鈴木誠氏の講演会に行って来ました。
全国の農業成功事例の紹介や、厳しい状況を乗り越えて可能性を切り拓いていく考え方など、農業者を元気づけてくれるような講演でした。
今回は、そんなナチュラルアートさんの紹介と、鈴木氏のインタビュー記事から、成功の秘訣を探ってみたいと思います。
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㈱ナチュラルアート [1]は、2003年に設立、全国に10カ所の直営農場を持ち、提携農家は1000軒、売上170億円にまで成長しています。
また、生産、流通、販売のみならず、農業コンサルや再生事業、ファイナンスまで行っているのが特徴です。近く、農業ポータルサイトの立ち上げも計画されています。
経営理念
100年続く会社を目指す
100年社会に貢献する
100年社会から求められる会社になる
新しい産業としての農業の構築
過去の延長ではなく、新しい農業
農業を通して、世界の食料事情の健全な発展に貢献し、かつ社会に広く貢献する
経営戦略
1.新産業としての農業プラットフォームの構築
2.持続可能な農業経営の確立
3.ポートフォリオ (品目・地域を分散し、規模も面積も圧倒的日本一の農業生産者グループを確立)
4.農業バリューチェーンの構築 (生産から加工・販売まで)
5.破綻農業会社の再生及びファイナンス
6.レバレッジを効かせたロールアップモデルの確立
 


農業再生への想いと斬新な手法 [2]

当社が一番力を入れていること。それは「畑を増やすこと」にほかなりません。創業当初から5年半が経った今、直営農場10カ所でイチゴやメロンをつくり、牛や豚を育て、全国を休みなく歩き回って協力を取りつけた提携農家は1000軒を超えています。また、2年ほど前からM&Aで醤油製造会社、食肉製造卸会社など支援を始め、グループ会社も6社に増えました。そうやって志を同じくする仲間と共に、農産物や畜産物の生産、加工、販売を行っているというわけです。ちなみに直営店は、千代田区一番町にある「なちゅらる・あーと一番町店」、千葉県柏市の「農場れすとらん六素(ロッソ)」の2か所と、当社Webサイトでのネット販売。もちろん大手小売りや外食産業、食品メーカーなどにも直接販売しています。
(中略)
再生依頼を受けた農業生産者にまだまだ事業意欲があり、民事再生か自己破産でマイナス部分を一掃できるなら、当社が事業譲渡を受けるための子会社を設立し、再建に乗り出すケースもあります。当社がそんな支援をすることで、農地や働き手、技術が失われる事態を避けること。これも「畑を増やすこと」だと考えていますから。

「畑を増やす」という考えにはとても共感できます。生産基盤の維持・再生、自給率向上など、農業再生の根本にある課題だと思います。
そして、その為に事業譲渡・再建にまで関わるのは、これまでの「農業」の枠にとらわれない手法です。
社会に開かれた企業~協働 [3]

農生産者も、農協やスーパーなどの流通業も、官公庁や自治体も、ほか様々な産業が一緒になって、新しい農業の姿を模索していきたいんです。いってみれば農業が元気になれるやり方であればなんでも。それには10人集まるより、100人集まったほうが面白いし、もちろん1万人集まればもっといい。だから、これから起業を目指す皆さんも、ぜひ農業ビジネスでの挑戦を考えてみてほしいと思うのです。正直言いますと、僕は農業生産者と一緒に畑を増やす作業に専念したい。これから立ち上げようと計画している農業ポータルサイトも、農業再生ファンドもそうですが、誰もやってくれないから当社がやらざるを得ないんです。先ほども言いましたが、産業を活性化させるためには分母が大事。産業としての農業にチャンスはたくさん隠れていますから、もっとこっちを向いてほしい。

ともすると閉鎖的になりがちな「農家」、自社の利益追求のみに向かう「企業」の考え方を逆転して、共通の課題を多くの人との協働で取り組む、開かれた姿勢があります。
経営とは継続すること~共同体的風土に根付いている [3]

どんなビジネスでもテクニックや計画が必要ですが、その前に絶対に必要なもの。それはどこまでもやりぬく情熱です。当然ですが、どんな仕事にも困難がついて回ります。僕だって予想は外れるし、うまくいかないことが何度も訪れた。情熱をもって壁を乗り続けているうちに、ふとわかったことがあるんです。この仕事は金儲けでもビジネスゲームでもない。農業再生、日本再生のためにやっているんだって。苦労の連続であっても、自主的にこの事業をやめることは許されないのです。上場も視野に入りましたが、それはより長く成長し続けるための通過点。100年続く会社を目指す。100年社会に貢献する。逃げ道をつくらないために打ち立てた当社の企業理念です。起業とは挑戦の連続です。困難と出遭った時、勇気をくれるものが志や理念。ぜひ、志の高い挑戦を目指してほしいと思います。

継続すること、企業として存続することとは、社会に貢献し続けるということ。先日の講演でも、「短期間での赤字黒字ではなく、経営にとって一番大切なことは、継続すること」と話されていました。
そして、このように「継続、存続」を経営の基本に置くという考え方は、極めて日本的なもののようです。
長寿企業の秘密は社会的役割意識<るいネット> [4]

とりわけ、村落共同体内では、原材料供給から加工生産、そして小売までが社会的分業として完結し、それぞれの役割を果たすことで、村社会は成立していた。ここには、現代の市場社会のような、利益を多く取った方が勝ちという意識はなく、村全体が潤いそれぞれの役割が持続されることに最大に価値がおかれていた。
そして彼らは信用を重んじるという言葉を使う。一旦信用をなくすと中々信用は取り戻せないともいう。この信用とはなんだろうか?当然、製品の良し悪しもあっただろうが、最大の信用は、みんなが役割と対価を得られるように、企業経営の舵を取っていくこと。そして、その社会が持続するように、少々の外圧がかかっても創業を止めないこと、では無いかと思う。
(中略)
つまり、彼らはなぜ、こんなに長く活動を続けてこられたのか?の答えは、『社会的役割を果たすため、存続すること自体に価値を置いていたから』ということではないだろうか?

急成長の業績と、独自の経営手法のみが注目されがちなナチュラルアートですが、その底流には、日本の共同体的風土に基づく考え方が脈々と息づいているように思います。
かつて企業が存続すること自体が村落共同体への貢献であったように、現代では、社会貢献を志向する企業が存続する事自体に意味がある、存続することによって社会貢献し続ける、ということだと思います。
ナチュラルアートさんの事例から、農業経営とは、個々の経営課題に留まらず、社会貢献そのものなのだということを感じました。その姿勢が、事業推進の活力を生み出しているのではないでしょうか。

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