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耕す市民を育てる ~ 自治体による農家と市民の橋渡し

 こんにちは、pochiです。
農の期待の持てる展望、成功事例を発信していきます。
 今回は、横浜市の事例です。横浜はどちらかと言えば都市部ですが、自治体主導により農業の再興、地域共同体の新たな形を見事に実現させていると思います。
 都市部での市民農園といえば、過去このブログでもキューバの事例が扱われていますが、日本でもこんな可能性を感じさせてくれる事例があります。是非読んでみて下さい。
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横浜市環境創造局 市民農業大学講座 [1]
(引用  『地域に力』大江正章 著 より)

 横浜市では、1991年度に不耕作地の分析と農家の調査を行い、農家の意向もふまえて、優良な農地を守るために都市住民の力を農業経営に巻き込むことをいち早く提言した。93年度からは「市民農業技術講座」を開始し、農家で手伝いができる人材を育てていく。
 当時、耕したい市民は増えていたが、農家に手伝いに行くというケースは、まずあり得なかった。この講座の発想も、市民と農家双方の目線をもった農業職の存在なしには生まれなかっただろう。97年度には「市民農業大学講座」と改称し、現在は二年制の実践コース(定員50人、65歳未満の市民)を設けている。あくまで農家の補助労働力の育成が目的で、「趣味の園芸」とは一線を画すコンセプトである。

 一年目は、環境活動支援センター内の畑と農家での実習(半日)を中心に、野菜・果樹・花の栽培の基礎を学ぶ。二年目はその三部門に分かれて計10日間、農家でみっちり実習を行う(今後は、体験農園と同じく有機農業の指導も必要になる)。受講料は二年間で22,700円だ。案内は市の広報とホームページに載せるだけだが、小池輝夫・センター長が「耕したいというニーズは非常にあります」と語るように、応募者は平均三倍と人気は高い。平日に行うのでシルバー層と女性が多いが、有給休暇を使ってくるサラリーマンもいるという。
 この講座の修了生が農家に援農へ出向く。とくに需要が多いのは果樹農家。受粉や袋かけなどの作業が一時期に集中するからだ。野菜農家でも、農繁期の山を越せない場合がある。草取りや後片付けなど、技術はそれほど要しないが重労働という仕事も多い。。慣れれば収穫や直販も行う。考えてみれば非常に効率的なシステムだが、農家と市民につながりがなければ決してうまくいかない。そこを自治体が仲立ちしたことに大きな意味がある。市民皆農への一里塚と言ってもいい。
 「二年間ここで学ぼうという人はそれなりの思いがあるから、農家に歓迎されています」(森)
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 2002年には、講座修了生の有志で「はま農楽」という自主活動組織もできた。メンバーは約200人。ここが、農家からの求人情報を伝える窓口になっている。平均年齢は60歳強で、約80人が実際に援農に行っている。決まった農家へ出かける固定的関係もかなり多いという。2006年現在、70軒の農家が頼み、のべ日数は約2000日にも及ぶ。時給は農家が決めるが、700~800円(ボランティアの場合もある)が相場。いまでは、はま農楽なしでは成り立たない農家も出てきた。
 「私は修了した翌年の98年から、ずっと援農に行ってます。一軒の果樹農家とは親戚づきあいのような感じで、いまは収穫もしてるし、出荷の時期まで相談されてますよ」と語るのは、メンバーたちから「指折りの働き手」と評される田村やす子だ。彼女はパートを辞めて、週2、3回、近くの2軒の農家へ援農に行っている。
 「大自然のなかで仕事できて、気持ちよくて、楽しくて。農家が積み上げてきた技を見られるのもうれしい。お金もらえて、「助かった」と喜ばれて、世の中に貢献している気になりますよ」 2003年に講座を受けた武井清は、千葉県に山林を購入して開墾し、無農薬で米や野菜をつくる本格派だ。田村と同じ農家へ多いときは1ヶ月に10回は行き、勉強して自分の田畑の参考にしている。一方、「庭の花を上手に咲かせたいと思って受講した」はま農楽代表の岩野邦昭は、ここで農業の楽しさを知ったという。
 「会社時代の仲間から、「ずいぶん元気になったな」と言われます。畑に出ているお陰です」
 このほか、総合的な学習の時間に小・中学校で野菜づくりのお手伝いをしたり、区役所の事業で未利用私有地を開墾して畑をつくり、そこで栽培指導をしたり、駅前で花壇を整備したりと、公共的な活動をする会員も多い。田村は自らも夫と二人で35種類の野菜を低農薬でつくり、自給率は90%だ。その経験をふまえて「都会の荒れた農地を素人でも有効に使えます」と言う。
 実際に横浜市では、プロの農家をめざす市民のために2005年度からチャレンジファーマー制度を設けた。そして、2年間の農家などでの研修を経て農地を斡旋し、新規就農できる道を開いたほか、その弾力的運用も検討している。

 ポイントは幾つかあります。
都市部の不耕作地、「耕したい」労働力、この2つの地域資源に光をあて、暮らしに根ざした仕事を発展させ、新たな雇用を増やしている点
自治体が独走せず、リーダーシップをとって、地域に根ざした農家と市民のネットワークを形成した点
こうした活動をする地域の魅力を発見し、市民自らが自主活動組織「はま農楽」を形成することで、さらにその輪を広げている点
安全な食べ物を作る農の担い手を広げていくことで、過度の商品経済の浸透の防波堤となり、地域に根ざした新たな生活形態のモデルとなっている点
「耕す市民を育てる」ことで生産力を上げ、“自給率”の捉え方そのものを転換させていく可能性を感じさせる点 
 などが挙げられると思います。
 利潤の追求のみを目的としない、相互扶助を重視した人と人の関係性の豊かさが、地域に活力を生み出し、それが磐石な生産基盤となっていく。
 今後、こうした活動が大人だけに留まらず、学校教育を通じ子供達も巻き込んでいくことで、安さや安全性を一方的に要求する消費者ではない、健全な生活者が多く育っていくことを期待します。 😛

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